核燃料サイクルと最終処分について

色々言われている割には正しい情報が知られていないように思ったので、情報提供します。大切なのは一人一人が自分で考えること。そのためには正確な情報が必要です。興味を持たれた方は、このまとめも含めて世にある情報を無批判に受け入れるのではなく、自分で検証して下さい。
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Flying Zebra @f_zebra

ある国が原子力発電を始めると、廃棄物処理はいずれ必ず向き合わなければならない問題です。既に40年以上原子炉を運転してきた日本にとっては、当然ながら今後原子力をどうするにせよ避けては通れない問題です。

2012-05-14 12:44:42
Flying Zebra @f_zebra

原子力利用の是非を含めた今後のエネルギー戦略を考える際には非常に重要な課題のはずですが、計画が完了していないことに対しての批判は目にするものの、実際の計画の詳細、技術的な課題、各国の動向などについてはほとんど知られていません。

2012-05-14 12:45:31
Flying Zebra @f_zebra

原子力に対してどういった立場に立つにせよ、クリティカルな課題の一つである廃棄物処理についての正しい理解なくして意味のある議論はできないはずです。私も専門家ではありませんが、公開情報で分かる範囲を少し整理してみます。

2012-05-14 12:46:09
Flying Zebra @f_zebra

まずはサイクル政策について。日本は再処理でウランとプルトニウムを分離して燃料として再利用、残ったものをガラス固化体に加工して処分するという方針です。クローズドサイクルと呼ばれ、フランス、ロシア、中国などが同じ政策を採っています。

2012-05-14 12:47:07
Flying Zebra @f_zebra

アメリカは核物質不拡散を重視して再処理を行わずそのまま廃棄するワンスルー政策を採っています。イギリスはやや特殊で、再処理したプルトニウムをMOXで利用する計画ですが、国内では利用していません。現在は日本を含む他国用にMOXを製造しています。

2012-05-14 12:47:45
Flying Zebra @f_zebra

再処理で取り出したものを利用したMOX燃料については、日本やフランス、ドイツは軽水炉で利用中(「プルサーマル」は和製英語)です。ロシアでは高速炉で利用中で、中国も高速炉で利用する予定です。

2012-05-14 12:48:47
Flying Zebra @f_zebra

高速炉については日本はご存じもんじゅ(原型炉)がトラブルで停止中、今後実証炉、商用炉を開発する夢を捨てていません。ロシアは実験炉、原型炉を運転中、実証炉を建設中です。中国は実験炉を運転中で実証炉を計画中です。

2012-05-14 12:49:18
Flying Zebra @f_zebra

アメリカ、イギリス、ドイツは実験炉あるいは原型炉まで運転しましたが以降の開発は中止しました。フランスは開発を始めた実証炉を途中で中止しましたが、第四世代炉ASTRIDを計画していて、商用炉の計画もあります。

2012-05-14 12:50:16
Flying Zebra @f_zebra

再処理工場はイギリス、フランス、ロシアで稼働中、日本は試験運転中です。アメリカは再処理を行わない方針ですが、研究開発は続けています。また、解体核兵器のプルトニウムをMOX燃料に加工する工場を建設中です。

2012-05-14 12:51:00
Flying Zebra @f_zebra

以上、サイクル政策についてでした。サイクル政策の違いは要は再処理するかどうかということですが、どちらにしても廃棄物は発生するので、廃棄物処理とサイクル政策は独立した問題です。では、続いて廃棄物政策について見てみましょう。

2012-05-14 12:52:10
Flying Zebra @f_zebra

廃棄物の最終処分としては、現在どの国も地層処分を基本としています。フランスは核種分離・変換(消滅処理)と長期貯蔵も公式の計画に残しています。かつて日本を含め各国で行われていた海洋投棄は1982年以降実施されておらず、1993年に全面禁止されています。

2012-05-14 12:52:37
Flying Zebra @f_zebra

深海への投棄は科学的には十分合理的で、1967年以降は各国ばらばらではなくOECD/NEAの下で協力して行われ、75年からはこの年発効したロンドン条約の下で実施されることになりました。82年に一時中止され、その後政治的、社会的情勢から全面禁止されました。

2012-05-14 12:53:11
Flying Zebra @f_zebra

地層処分については各国で事業主体までは決まっていますが、処分場が決定しているのはフランス、ドイツ、フィンランド、スウェーデンだけです。アメリカは一度ユッカマウンテンに決定しましたが、2010年に事業主体のDOEが許認可取下げを申請、まだ揉めています。

2012-05-14 12:53:52
Flying Zebra @f_zebra

現在までに、技術的な課題はほぼ抽出され、不確実性を考慮してもなお合理的に十分安全と考えられるレベルを達成しているというのが自分なりに勉強した結果の私個人の理解です。どの国でも計画は当初より遅れていますが、技術的課題ではなく、主に政治的プロセスが原因です。

2012-05-14 12:54:29
Flying Zebra @f_zebra

技術的な詳細に興味のある方は、JAEAのサイトで膨大な資料が公開されているので自由にダウンロードして読み込んでみて下さい。「地層処分の背景」あたりかが比較的コンパクトでお勧めです。http://t.co/X3EQKurC

2012-05-14 12:54:49
Flying Zebra @f_zebra

我々は、将来のことについて人間の寿命を超えるタイムスケールで考えることには慣れていません。リスクを実感として捉えられないと、他のリスクとの比較といった定量的な評価をすることなく「怖い」という思いが先行し、冷静な判断ができなくなるものです。

2012-05-14 12:55:28
Flying Zebra @f_zebra

低線量被曝への理解不足による食品や災害瓦礫に対する非科学的な反応とも共通しますが、政治プロセスが国民の理解と合意を前提とする民主主義国家である以上、科学的な事実もそれが広く理解されない限り実際の政策には反映されません。

2012-05-14 12:55:53
Flying Zebra @f_zebra

科学者や専門家が理解を得る努力を十分にしていないという批判はその通りだと思いますが、誤った選択をして困るのは我々自身なので、結局は一人一人が広く知識を蓄え、自分で考え判断する力を養うしかないのではないでしょうか。

2012-05-14 12:56:58
Flying Zebra @f_zebra

もんじゅについて補足しておくと、長期間運転できていないのは技術的な問題というよりは政治的な問題です。また、動燃(当時)のガバナンスにも大きな問題がありました。

2012-05-25 06:55:15
Flying Zebra @f_zebra

ナトリウム火災という、INESレベル1に過ぎない事故を大きな問題にしてしまったのは、情報の開示を拒んで隠蔽しようとした当時の動燃の体質によるものです。また、関係者を非難するばかりで事故の本質をきちんと検証しなかったメディアにも責任があるでしょう。

2012-05-25 07:01:05
Flying Zebra @f_zebra

個人的には高速増殖炉にはそれほど期待していませんが、高速炉の技術を手放すのは愚策だと考えます。将来の高レベル廃棄物の消滅処理にも高速中性子照射の技術は欠かせません。

2012-05-25 07:03:57