シリーズ「係」

世の中にある、と思われる様々なお仕事や係についての#twnovel。
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世界には知られざる様々な活動があるようで。

七歩 @naholograph

僕の人生にカンペ係が配属された。僕が困ると、カンペを出して助けてくれる。顔はわかるけど名前がうろ覚えの時とか、漢字が正確にわからなくなった時も便利だ。最近では好きになった女の子の性格や趣味を教えてくれた。だけど「この恋うまくいかない」ってカンペは見たくなかったな。#twnovel

2012-05-21 21:13:02
七歩 @naholograph

赤い糸係は困っていた。最近仕事の発注が少ない。赤い糸を結ぶ仕事は出来高制だ。しかも間違えると責任を問われ、賠償金を請求される。破局も多いしもうやめてしまおうか。赤い糸係は涙を浮かべ、そして首を振った。それは出来ない。運命を結ぶ奇跡を、誰よりも誇りに思っているから。#twnovel

2012-05-28 20:13:40
七歩 @naholograph

私の人生に照明さんが配属された。彼の仕事は私を明るく照らすこと。「照明さんが必要って実は結構年?」「あの顔で女優気取り?」ヒソヒソ。しょんぼりする私に照明さんは言う。「羨ましがってるだけだ顔あげろ」うん。照明さんは私を照らす。生きる道に光を当て、人生を美しく彩る。#twnovel

2012-06-01 15:14:55
七歩 @naholograph

今日のあの子のお天気は?お天気予報士に聞いてみる。「今日のお天気はご機嫌時々斜め、場合によってはふられますので折りたたみ傘のご用意を」望んだ通りの天気じゃないけど、それくらいならいけるかな?#twnovel 告白した。ふられた。「ふられるって言ったのに」お天気予報士は僕を撫でる。

2012-06-02 09:03:04
七歩 @naholograph

かくれんぼ係は隠れていた。見つからないようにするのが彼のお仕事。そして期限は見つかるまで。慣れた様子で身を隠す。もしも一生見つからなかったら。もしも一生独りだったら。眼下の雑踏を眺め、煙草を一本くわえた。追いつかれないように。彼は恐怖や孤独からもひっそり身を隠す。#twnovel

2012-06-06 08:06:18
七歩 @naholograph

結婚か。踏み切れない僕の前に「愛はかります」の貼り紙。店内には女が一人、愛を数値化するという。彼女の愛を量って下さい。女は依頼に頷いた。#twnovel 不機嫌そうな彼女を執拗に計測。「70」結果が出るや否や「愛を量るとか最低」と、数の意味を知る前にお別れ。何か謀られた気がする。

2012-06-06 20:55:49
七歩 @naholograph

僕の人生にフォロワーさんがついた。僕の平凡な毎日を、気ままに覗いて消えていく。今日は天気も悪いから、フォロワーさんも来ないよね。傘の影からそっと覗くと軒下にいた。雨宿りするフォロワーさん。僕はどうぞと傘に招く。始めて互いに名前を呼んで、今日という日に星をつけた。#twnovel

2012-06-09 10:45:23
七歩 @naholograph

僕に小さい執事がついた。「雑事はお任せを」「それは私が」「ご主人様は価値ある事を」呼吸以外することがない。価値あることって何?「恋や学問でございますか」「執事彼女いる?」「私のことは」「恋の勉強」「お、おりません」「お茶にしようか」今日の紅茶はいつもより美味しい。#twnovel

2012-06-19 07:56:08
七歩 @naholograph

中の人は今夜旅立つ。子供の空想の友達としてぬいぐるみに入り込む中の人。この数年間を振り返る。初めての友達が俺だった。人参嫌いなのに俺が好きって言ったら食べたよな。夜は未だに抱っこして…「元気でな」ぬいぐるみを抱く友達に呟く。#twnovel おはよ、返事がない。ありがとばいばい。

2012-06-22 07:27:13
七歩 @naholograph

僕に顧問弁護士がついた。「貴方を守ります」僕の胸ポケットに入り込み心臓に耳を押し当てる。僕の事情はこれで大体解るらしい。「うんうんそうなの大変ね」花弁のような唇が紡ぐアドバイス。「だけど私は貴方の味方よ」どんな難題も、その一言で九割方解決してしまう優秀すぎる彼女。#twnovel

2012-06-25 17:07:15
七歩 @naholograph

落とし物係は寡黙な男。今日も黙々仕事する。目の前に発見落とし物候補。箱の中身は、にゃあにゃあにゃあ。自分が拾えば落とし物で、拾わなければ捨て猫だ。捨てられるってどういう気持ち?#twnovel 「一緒においで」彼の後ろに子猫が続く。「こら舐めるな」いつもよりお喋りな今日の彼。

2012-06-26 21:35:56
七歩 @naholograph

BGM係は三人組。僕の人生にあわせて音を奏でる。今日は仕事の正念場。このプレゼンで運命が決まる。勇壮なメロディーにノリノリの僕。さあ、あともう一押し。#twnovel 急に音楽が悲哀に満ちた。止まるBGM。係はこづきあい、先程までの勇壮な音楽を再び奏でる。プレゼンの運命やいかに。

2012-06-28 07:52:07
七歩 @naholograph

大丈夫。声がする。告白できず躊躇う私を後押しする。だって前に恋した時は酸っぱくて苦くって。やれやれ。ぬっと鼻の穴から出てくる老婆。前はあんた漬かりきらない恋心無理矢理食べたから。今はもう頃合いだよ。彼女は漬け物婆ちゃん。感情を熟成させる達人。妙なる恋を召し上がれ。#twnovel

2012-07-02 08:05:35
七歩 @naholograph

漬け物婆ちゃんは感情を漬けこむ。この子は最近悲しみばかり。ツボ一杯にたまった悲しみ、しょっぱい涙で和えて重石を載せて待つ。来たるべき日がやってきたなら、漬け物婆ちゃん重石を外す。胸がすっと軽くなったならそれが食べ頃。時が癒した悲しみが、美味しい糧に変わる時。#twnovel

2012-07-02 18:46:03
七歩 @naholograph

「わかんねーなら人生辞めちまえ」「お望み通り辞めてやる」僕と人生の演出家は決裂した。#twnovel その夜、泥酔して帰ってきた演出家。「ついうるさく言っちゃてさ。でもアイツ本当は凄いんだ。いい人生になるはずなのに…」転がって繰り返す。誰に言ってんだよ。僕は薄い毛布を彼に掛けた。

2012-07-09 16:10:45
七歩 @naholograph

長雨に色を失う世界に彼らは色を塗る。一年経って剥がれた色を雨に隠れて塗り直す。木々も街も恋心も。やがて梅雨明け光がさすと世界のピントがすっと合う。蘇る世界。「俺ら綺麗にしかできねえ」ペンキ屋が僕の背中を押した。そうだねまずは届けなきゃ。僕は君のドアを叩く。#twnovel   

2012-07-21 22:42:50
七歩 @naholograph

心が晴れないので点検して貰うことにした。「相当汚れてんな」親方は言う。「取り替えた方がはやそうだ」「じゃあそれで」「喝!」親方は険しい顔。「最近の奴らはすぐ新しくしたがる。自分の心だろ。少しは大事にしな」僕の心を丹念に磨き続ける親方。気持ちが少し晴れた気がした。#twnovel

2012-08-07 16:19:37
七歩 @naholograph

我家の扉にドアボーイがついた。荷物も運んでくれるしとても便利。どの扉にも風のように飛んでくる彼は働き者で親切だ。僕が仕事で失敗した夜も彼はやっぱり飛んできた。「失礼します」心の扉を開けると僕から荷物を運び出す。「処分して構いませんか?」有難う。僕はチップをはずむ。#twnovel

2012-08-12 07:40:51
七歩 @naholograph

夏も終わりに近づくと、洗濯屋が御用聞きにくる。彼女が洗うのは心。夏の恋に傷ついた心を洗って貰おう。#twnovel ルーペで状態を確かめる。「これは洗えないわ」もしかして落ちない?「ううん、いい想い出だもの。素敵な模様になるのに勿体ないわ」真っ白だけが、綺麗な心じゃないのね。

2012-08-27 16:10:45
七歩 @naholograph

火をつけるのは簡単よ。みんな望んでつけるから。だけど消すのは難しい。消したい人などいないでしょ。火消し屋の君は、僕の恋の炎をふっと一息で吹き消した。はいオシマイ。次の恋は自分で消せるといいわね。#twnovel 消さずにすむ恋をするよと答えた。できれば君とって続きは胸にしまって。

2012-09-06 17:49:20
七歩 @naholograph

発掘隊が手にした塊は、僕にはただの石ころに見えた。けれど。「これは凄いぞ高く売れる」誇らしげな顔。そんな価値ある物が僕の中で見つかるなんて。心発掘隊初の快挙に僕ら祝杯をあげた。#twnovel 「納得いかん」思ったほど値がつかず、憤慨する発掘隊。有難う。君達の本気が、僕は嬉しい。

2012-09-09 20:01:12
七歩 @naholograph

カツンカツン。靴音を響かせ見廻る。初めは空き牢ばかりだったのにいつの間にか囚人で溢れている。「俺は無実だ」「いっそ殺せ」幼い神が生きるために閉じ込めた無実の思い出達を、看守は見つめた。#twnovel 今日は何だか嫌なことばかり思い出す。胸に手を当てるとカツンカツンと靴音が響く。

2012-09-13 06:34:07
七歩 @naholograph

心の入り口にクロークができた。使わない気持ちを預かってくれる。今考えても意味のない明日の心配事を預けたら少し楽になった。それじゃこれもと預けようとしたら「貴重品はなりませんよ」と断られる。更に「恋心は過程に意味がありますので」とも。今夜は心置き無く君だけを想おう。#twnovel

2012-09-24 17:24:40
七歩 @naholograph

衣替え時期には仕立屋がやってきて、必要になりそうな服の見積りをしてくれる。「ウェディングカタログ持ってきた。彼女と選びな」「僕らまだ結婚は」「俺の仕事今まで無駄があったか?」ない。僕は運命に従うことにした。#twnovel 「渡しました」「いい子ね。結婚後も貴方にお願いするわ」

2012-09-28 18:44:05
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