なぜガンダムは海外で人気がないのか
多くのガンダムファンにとってファーストガンダムは特別なもので、他のガンダムから最初にガンダムに触れた人にも、まずは最初の『機動戦士ガンダム』を観てほしいと思ってしまう。自分もそうである。キャラやモビルスーツの知名度でも他のガンダムを圧倒している。
2012-05-30 13:50:21故に、機動戦士ガンダム関連の作品や商品を海外に売り出していくとういことは、ファーストガンダムをいかに海外に広めていくかということになるわけだが、ここが問題で、他の富野作品と同じく、超えなければいけない壁がある。
2012-05-30 13:53:24それは、「まさかロボットアニメがここまですごい」という認識が共有されていないということである。それは「エヴァ」でも同様なのだろう。また、そもそも、日本の過去の多くのアニメや漫画、その他の作品でも同様である。
2012-05-30 13:55:51日本はそのガラパゴスの中で異質に進化したのではなく、孤島の中でアンモナイトから人類にまで進化したような極端な進化を遂げてしまった。もちろん、少なからぬ海外の人がそれを感じ取っているが、その進化の規模が激しすぎて、まだ一般的な認識となっていない。
2012-05-30 13:59:14機動戦士ガンダムの特殊性は、その作品がイタリアネオリアリズムの延長線上にあるというところにある。もちろん、その背景には、富野喜幸さんが、高畑勲さんという、この時代、世界でもっとも優れたネオリアリズム作家である人の影響を受けたせいもあったろうけれど。
2012-05-30 14:05:12高畑勲は、イタリアネオリアリズムの影響を受けた映像作家の中でも突出して優れた演出家である。その流れは世界に拡がったが、日本の高畑勲ほどその表現を緻密に高めた人は、世界でも稀であろう。小津安二郎や溝口健二以上に世界から注目されるべき演出家として高畑勲がいる。
2012-05-30 14:15:01その高畑勲作品の多くのコンテを切り、そのリアリズムをロボットアニメに取り入れ完成させた作品が『機動戦士ガンダム』である。つまり、イタリアのロッセリーニやデ・シーカ、そして海外の多くのリアリズム映画の延長上にある。まさか、そんなことがということが日本では行われている。
2012-05-30 14:19:16もちろん、そんなことを意識しながら日本のアニメ視聴者が観ているわけではない(観ている人も少なからずいたであろう)。ただ、日本の場合、「アニメや漫画がそこまでのリアリズムを追究して作品を描くこと」は当たり前だったわけで、広く受け入れられる下地があったのである。
2012-05-30 14:25:0570年代に、すでに、親が子を食い子供が親を殺す平安期の地獄を描いたもの、奇形ばかりが生まれる遠未来の荒廃した地球を描いたもの、軍国主義化が再び進んだ近未来の日本を描いたもの、希望を持った少年達が団結をするも巨大な力の前に次々と力尽き死んでゆくもの・・・
2012-05-30 14:29:51人類滅亡後の未来に飛ばされた学校で大人達は狂うか無力で子供のみが生きるために戦ってゆくもの・・・など、漫画には、絶望、暴力、死、恐怖があふれていた。アニメもまた、リアルと対峙していた。その延長上の作品の一つとして『機動戦士ガンダム』がある。
2012-05-30 14:31:34また、60〜70年代初頭の『カムイ伝』などの作品の存在も大きい。70年代の漫画やアニメの常識として、国家や権力は敵に回るのが当然の存在で、その中で人はあっけなく死んでゆく。つまり、そういう価値観を共有していたところに日本の漫画やアニメがあったわけで『機動戦士ガンダム』も同様である
2012-05-30 14:40:41もちろん、時計を逆戻りさせることはできないわけで、同じ情報の共有を求めることは不可能である。しかし、日本でこれまでに産み出されてきた漫画やアニメ、特撮などの豊潤な資産は、まだそのほとんどが世界に紹介されていない。その豊かさは14〜16世紀頃のルネサンスに勝るとも劣らない。
2012-05-30 14:46:47世界を日本に染め上げるというのは夢想であるが、ここ50年ぐらいに日本の漫画、アニメ、特撮、ゲームなどで起こった文化大爆発は、これから数百年の世界を変えるぐらいの大きな事件であったと思う。あとは、いかに自信を持って、それを世界に発信していくかということだ。
2012-05-30 14:49:53その延長上で『機動戦士ガンダム』は売れてゆく。つまり、「売れるように日本のアニメを変えていく」のではなく、「世界を売れるように変えていく」ということが必要だと思うのです。
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