ザ・マン・フー・カムズ・トゥ・スラム・ザ・リジグネイション #5

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第二部「キョート殺伐都市」より:「ザ・マン・フー・カムズ・トゥ・スラム・ザ・リジグネイション」 #5

2012-05-29 14:26:56
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「あれよ!たとえ一分一秒でも、先に入門した者を、後に続く者は敬うべし!」チェインボルトはマシナリーメンポの中に茶菓子を詰め込み、音を立てて食べながらディプロマットに語った。「それこそが秩序の出発点よ。お前は双子で兄なのだから、そこはよくわかろう?先が、先!そして偉い。それよ」 1

2012-05-29 14:30:39
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「ハイ」ディプロマットは頷いた。チェインボルトが得々と語るルールは、あながち彼独自の押し付けでも無い……それが厄介だ。彼が語るのは「ネンコ」と呼ばれる、暗黙の不文律階級システムだ。戦国時代の無秩序時代への反省から、日本に脈々と受け継がれたドグマ的な序列価値観……。 2

2012-05-29 14:36:49
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チェインボルトの頭上で「先輩」のホログラフィが威圧的にまたたく。「近頃はこの全ての基本たる秩序を疎かにする馬鹿者が多いから、有難く教えてやらねばならんよ。特にお前、こんな庵でのうのうと、エッ?グランドマスターお歴々を相手に何をしておるやら。どんな寵愛やら!調子に乗るなよ?」 3

2012-05-29 14:43:12
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「めっそうもございません」ディプロマットは挑発を受け流す。ネンコ序列は不文律であるがゆえに、ことさらそれを口に出して偉ぶるなど、言語道断である。だが、この場には彼ら二人。後でこの男の増上慢を告げ口する?バカな。それこそ見苦しく奥ゆかしくない行いと断ぜられるのがせいぜいだ。 4

2012-05-29 14:47:44
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「ところで結局、暗殺者の送り主は明らかになりましたので?」ディプロマットは尋ねた。この無礼な男を相手に平静を保つ事にも慣れてきた。だが、当然それで状況が好転したわけでもない。彼は弟を案じる。「アア?あれは、な」チェインボルトはもったいつけた。「知りたかろう」 5

2012-05-29 14:52:23
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「是非に」「ダークドメインであろう」チェインボルトは言った。「俺はそう聞いておる。パーガトリー=サンの権勢を憎み、イグゾーション=サンの忘れ形見たるお前らを殺す、実に恐ろしい話よ!だが、あれも既に故人。ゆえに俺の護衛任務も楽なものだ!こうしてチャを飲めばよい。しっかりもてなせ」6

2012-05-29 14:56:35
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「それはもう……」ディプロマットは微笑んだ。その時、彼のニューロンがズキリと痛んだ。「う」彼はタタミに片手をついた。チェインボルトが舌打ちした。「また不作法だ。こいつ」「申し訳ありません」(((兄さん。いるか)))テレパスの欠片が脳裏に木霊した。ディプロマットは目を見開く。 7

2012-05-29 15:01:24
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テレパスは続かない。やはりリンクせねばならぬ。ディプロマットはチェインボルトを見る。しかしこれでは……。「どうせ俺を面倒な奴と思っておるのだろうが。隠してもわかるわ。だがこれは俺の思いやり、慈悲よ。身を切るような現場の感覚を教授してやっておるのだ。嫌われ役を買って出てまでな!」8

2012-05-29 15:04:51
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「ありがとうございます」「そうだ。それでいい。俺に感謝し、礼を言え」強調するかのように、ホログラフィの「先輩」が威圧的に浮かび上がる。「もうすぐナミダが氷を持って参ります。冷たいチャで体を涼しくしましたら、ちと数分、外させて頂いて……」「いや、ならぬ」チェインボルトが拒否した。9

2012-05-29 15:10:52
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「お前は俺をもてなせ。礼儀を尽くせ。二時間でも三時間でも、こうしておれ」彼はディプロマットを睨んだ。「ザゼンはさせぬ。わかるか?ずっと、もてなせ。不審な動きをパーガトリー=サンへの二心と見なされたいか?」「……」ディプロマットの背中を冷たいものが走った。やはりこれは……! 10

2012-05-29 15:16:29
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「ま、そう長くお前を抑え付ける必要もあるまい。撤収完了の合図が入れば解放してやってもよい。俺の気が済んだらの話だが」「撤収とは?」思わずディプロマットが返した。「ああ、すまん!知るわけが無かったな!弟の情報収集では掴めん話であろうからな」「何の事やら……」 11

2012-05-29 15:22:00
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ディプロマットの心は乱れた。ホログラフィが点滅した。「二心を抱かず、粛々とパーガトリー=サンに感謝し、今後もギルドの重要任務に役立てるよう精進せよ。アンバサダーの奴と会いたかろう?再会の涙を流せ」「……」ディプロマットは弟とメンタリストの先程のやり取りを思い起こす。あの話。 12

2012-05-29 15:31:03
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「それとも、何か知っておるのか……?」マスターニンジャの眼光がディプロマットを射た。「いえ、寝耳に水の……」ディプロマットは言った。その時、奥ゆかしいノックののち、戸が引き開けられた。「……」ナミダである。まず彼女はドゲザした。「おう、遅いぞ!氷はオーガニックだな?」 13

2012-05-29 15:34:58
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「そうです」ディプロマットは言った。「フジサンから切り出した氷を用いております」「グランドマスターと俺で違う氷を出しているわけではないな?目上だぞ、俺もまた」チカチカと「先輩」のホログラフィが光る。「はい。ご堪能ください」「当たり前だ、だいたい氷が遅いわ。オイランめが」 14

2012-05-29 15:48:41
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「……」ナミダはディプロマットに氷壺を差し出す。彼女は無表情だ。深い海のような瞳でディプロマットを見る。ディプロマットは手際良く、淹れ直したチャに氷を入れてかき混ぜ、差し出す。「全くこれだけの事がなぜキビキビできん」チェインボルトは一気に飲み、氷をバリバリと噛み砕いた。 15

2012-05-29 15:54:59
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「……さて、次はどうするかな。おう、そこのオイラン。裸になれ」「……」「流石に茶室でそのような」ディプロマットはなごやかに制そうとした。「あン?不作法をあてつける気か?」チェインボルトが睨んだ。ナミダはディプロマットに目配せし、首を振った。反抗するな、というのだ。 16

2012-05-29 16:01:16
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「なんだ、なんだ、そのオイランの方が余程わかっておるではないか」チェインボルトは言った。「早くせんか」「……」ナミダはゆるゆると帯をほどく。「なかなかビザールで面白い眺めよ!気取った茶室に裸オイラン、ヨイデワ・ナイカ!……もっとキリキリ脱がんか」「チェインボルト=サン」17

2012-05-29 16:12:42
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「あン?」チェインボルトは睨んだ。「目上だぞ、俺は」「それ位にしておかれよ」「報告は俺次第だぞ」チェインボルトは言った。「お前ら双子がコソコソと怪しい動きをしておる事実がまずある。今後のお前らが悠々暮らせるか、針の筵か。俺の報告次第。俺が神だぞ?気分を害するか?ア?」18

2012-05-29 16:19:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ディプロマットは片膝を立てた「そこまでだ」。チェインボルトは寛いだ姿勢のままだが、嘲る目に殺気が漲った。「なんだ、その態度?」「……」ナミダが手を延ばしディプロマットの腕を掴む。そして再び首を振った。ディプロマットは振り払おうとした……だが、彼女は悪戯っぽくウインクしたのだ。19

2012-05-29 16:33:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あン?またその茶番か。オイランがやりたいと言っておるのだからやらせてやれ。どちらにせよ今の態度でマイナス重点だな!俺の中では。おいディプロマット=サン、貴様ら、今からそこで前後するのを見せ」チェインボルトは仰向けにひっくり返った。動かない。 20

2012-05-29 16:36:07
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ナミダは素早く着衣を直し、帯を締め直した。「お前、氷に薬でも盛った……」ナミダは人差し指を唇の前に立て、静かにするよう促した。「殺したのか?」ナミダは首を振った。懐から取り出した薬包を見せた。「眠り薬?どこでこんな物を」彼女は手振りで常人の十倍量を盛った事を伝えた。 21

2012-05-29 16:53:43
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「ゲホッ!」チェインボルトは咳き込み、苦しげなイビキをかき始めた。頭の近くでは「先輩」のホログラフィがいまだ点滅している。ナミダは息を吐き、侮蔑の目でチェインボルトを見下ろした。それからディプロマットを見、促すように頷いた。ディプロマットは茶室を飛び出した。 22

2012-05-29 16:57:12
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