これはとても懐かしい話なんですよねー、ずいぶん昔の話なんですが、うちのスタッフとか、ツアー関係の人、みんな好きな話なんですよ。怖いけど、なぜか、優しい話なんです。
2010-06-23 21:52:20もう、ずいぶん、昔の話なんですけど・・・・・。日本テレビで番組を終えましてねぇ、スタジオ出ようとすると、 #kaidan8
2010-06-23 21:57:03「稲川さん、 稲川さん」 と声をかけられたんで、ひょいっ、と見ると衣裳部のスタッフさんで、仲いい人なんですけど、その彼が来て、「稲川さん・・・・・・ちょっと、話聞いてもらえます?」て、言うんですよ。 #kaidan8
2010-06-23 21:57:46ちょうどこの番組が、怖い話をあつかってたんで、「たぶん、そういう関係かなぁ」と思って、「いいよ。聞かせてくれる?」と言った。 #kaidan8
2010-06-23 21:58:26スタジオの隅のほう。セットがあったんで、そこに腰かけて、で、彼が隣に座った。もうスタジオにはだーれもいないんですよ・・・・・・。 #kaidan8
2010-06-23 21:58:59この叔父さんって人は、彼より多少年が上なんですがねぇ。その頃っていうと、日本がちょうど活気づいてましたよねぇ。当時の流行りといえば、大きなリュック背負って、みんなあっちこっち旅に出る。なんだかそんなスタイルが、若者に流行ったんですよ。 #kaidan8
2010-06-23 22:00:16その頃、前後してからかねぇ、「カニ族」なんて言葉があったんですよ。大きなリュック背負って、両手に荷物かかえて、まっすぐ前に歩けないもんだから、人の間をぬうように、横ばいで歩くわけだ。 で、「カニ族」なんて言葉がありましたよね。 #kaidan8
2010-06-23 22:01:29当時ね、 「北海道に行きませんか? 夏の北海道でアルバイトしませんか? 北海道に来ませんか?」 ってキャンペーンがあったんです。で、なんとなくみんな「北海道、北海道」って、そんな時代がありましたね~。 #kaidan8
2010-06-23 22:02:03二か月間、牧場で働いたんですよ。そんなときに、牧場のお嬢さんと、親しくなったんです。都会から来た学生に、牧場のお嬢さんは、好意をもったんですねぇ。で、叔父さんの方も、何となくこの娘のことを、にくからず想うようになった。 #kaidan8
2010-06-23 22:03:42ひろ~い草原があって。 地平線が見えて。 空が広がって。 まるでこの街とは違う。素晴らしい世界がある!気持ちのほうもぐっ~と高揚してくるっていうのかなぁ。気分がやっぱり、違ってきたんでしょうねぇ。 #kaidan8
2010-06-23 22:04:24もう二か月もそろそろ終わろうという頃に、叔父さんがね、その娘さんに、「必ずまた来るから!」って、言ったんですねぇ。 #kaidan8
2010-06-23 22:05:16で、東京に帰ってきて、大学を卒業して、社会人になった。こうなるとけっこう忙しいんですよね。時間に追われてる。毎日毎日が、ほんとうに慌ただしく過ぎていく。 そうこうするうちに、一年が二年、二年が三年と経ってしまった。 #kaidan8
2010-06-23 22:06:18「ああ~、気がついてみれば、旅にもずいぶんと行ってないなぁ~。どっかに行きたいなぁ~。」て思ってた。で、友人に連絡してみたら、 #kaidan8
2010-06-23 22:07:05その友達の方も、「う~ん、昔はね~、あっちこっち行ったのになぁ~。どっか行きたいよなぁ~」ってことになったんで、 #kaidan8
2010-06-23 22:07:58「俺さ~、学生の時に、北海道の牧場で働いた事があったんだよ。その時に、その牧場の娘さんと親しくなってねぇ。また来るって約束したんだ。かわいい子でね、どうしてるかな~。結婚してなきゃ、まだいると思うんだけど。会ってみたいような気もするしね」と言ったんで #kaidan8
2010-06-23 22:10:08「ああ、そんなことなら、いいんじゃないか。北海道にしようよ!」って、話がまとまったわけだ。 休みをとって、二人。大きいリュックを背負って行ったわけですよ。 #kaidan8
2010-06-23 22:11:02