PKAnzug先生による核医学の検査(PETなど)に対する見解

おなじみPKAnzug先生が放射性医薬品を使ったがん検診についてのメリットとデメリット(リスクとベネフィット)を詳しく解説。
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Naoko @NYAO77

横から失礼します。フォローさせて頂いてる方のRTで拝読いたしました。個人的に核医学的見地が気になっており、例えばPETやSPECTはやっぱりリスクとメリットの兼ね合いという事に揺れています。@PKAnzug @kentosho

2012-06-02 08:24:41
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 はじめまして。SPECTはどれも健康な人に行うことはないので、診断情報を提供することで圧倒的に大きい病気のリスクを低減する、というメリットの前では、被曝などのリスクは無いも同然の小ささです。PETやPET/CTも、病気の人に対して行う場合は同じ。

2012-06-02 14:53:29
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 問題は、PETやPET/CTを(表面上は)健康な人の癌検診に使う場合で、これは疑義もあります。疑義といっても、数年前に読売新聞が出した「PETの癌検出率は低い」という記事のことではないです(あれは半ば難癖。あとで書きます)

2012-06-02 14:53:52
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 何が問題かというと、メリットとデメリットを付き合わせた上で最終的に健康寿命を延ばせるかどうかが不透明ということです。癌検診の究極的な目的って、実は癌を見つけること自体ではなく、受診者が健康で生きられる期間を延ばすことなんです。癌を見つけるのはただの手段。

2012-06-02 14:54:01
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 ただ、この健康寿命を延ばせるかどうかが不透明なのは、ある意味仕方がないところでもあるんです。というのは、調べる対象が「受診した人の寿命」ですから、ちゃんとした結果を出すのはものすごく大変なんですよ、これ。

2012-06-02 14:54:10
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 さすがに本当に寿命で受診者全員死ぬまで待ってるわけにはいきませんから、シミュレーション的に有用性の推定をしたりはするんですが、これには膨大な情報量が必要ですし、やはりある程度病気で死ぬ人が出始めないとデータにならない。

2012-06-02 14:54:24
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 ついでに書くと、そうやって出たデータでも、全員にやるものでなく任意検診の場合は、癌家系であるなどでより病死の危険性が高い人が検診を受ける傾向があるとか、検診を受けるような人は普段から健康に気を遣いがちであるとか、そういう偏りも出るので一筋縄では行きません。

2012-06-02 14:54:34
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 さらに、見つけた病気をどう扱うかも重要です。検診受けてる人では、受けてない人では絶対に見つからないような小病変が見つかったりもするので、それをすぐ切り取るのか少し様子を見てマズそうなら切るのか何もしないのか、という治療側の方針にも寿命は大きく左右されます。

2012-06-02 14:54:53
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 さらにさらに書くと、検診を受ける集団の中で実際に病気を持ってる人は非常に少ないという問題もあります。たとえば職場検診の胸部X線撮影で肺癌が見つかると、相当進行してない限りその人の寿命は大分延長されますが、少人数過ぎて「集団の寿命改善」にはほとんど寄与しません。

2012-06-02 14:55:13
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 要するに、癌検診の「メリット」を正確に割り出すのは非常に難しいんですよ。だから、まともなPET検診施設では「PET検診の有用性は確立されていません」って申込前に教えられるわけです。たぶん、この有用性は当分確立されないでしょう。頑張ってデータ集めしてますけどね。

2012-06-02 14:55:25
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 一方のデメリットは何か。まずお金ですよね。PETもPET/CTもまー高い。保険きかないからダイレクトにお金持って行かれます。核医学の検査は薬剤が特殊で高価なんですよ。たとえばPET用のFDGを作らず買った場合、たしか1人分で45000円くらいしたはず。

2012-06-02 14:55:33
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 次に注射薬剤や注射の副作用。FDGは「放射線を出すブドウ糖のそっくりさん」に過ぎないので、基本的に副作用は無いと言われているんですが、薬液内の不純物か何かでアレルギー反応起こしたり、あと注射の迷走神経反射でぶっ倒れたりとかは稀にあります。

2012-06-02 14:55:41
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 で、ご指摘の被曝。ただのPETだと2〜3mSv、PET/CTだとCT分が追加されて10〜15mSvくらいですね。ご存知と思いますが、これくらいはどちらも「将来的発癌が増加する可能性は示されているが、確認はできないほど小さいレベル」です。

2012-06-02 14:55:49
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 ただ、当然「浴びないで済むなら浴びない方がいい」のが放射線の鉄則。検診の場合は、細かく細かく探すのではなく、「あるかないか」を調べて必要に応じた精査に回すのが目的で、それなら普通のPETでわりと十分なんですよ。なので、うちでの検診は普通のPETを使っています。

2012-06-02 14:56:10
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 あと、一般の方が気になるのは、「自分や家族は受けるべきなのか否か」でしょうから、そこも書きますね。まず、もし病気があって(疑われてて)医師に勧められたなら、それは受けてください。最初に書いた通り、病気のリスクの前では被曝等のリスクなど無いも同然です。

2012-06-02 14:56:23
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 検診でPETやPET/CTを受けるべきかどうかは、なかなか難しいんですが、基本的にリスクが高い状態にある方は受けた方がいいのではと思います。具体的には、50歳以上である、家族に癌の人が多い、飲酒喫煙をする、体調がよくない、なぜか体重が減ってきてる、など。

2012-06-02 14:56:32
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 検診でPETやPET/CTを受けるべきかどうか、はなかなか難しいんですが、基本的にリスクが高い状態にある方は受けた方がいいのではと思います。具体的には、50歳以上である、家族に癌の人が多い、飲酒喫煙をする、体調がよくない、なぜか体重が減ってきてる、など。

2012-06-02 14:56:40
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 ちなみに、自分が被験者側の立場だったとして、有用性の確立してないPETを検診に使うか、と問われたら、一瞬の迷いもなく「はい」って答えますね。もちろん、50歳を越えたりしてからですが。実際に診断に携わってる人間の意見として、もし参考になれば。

2012-06-02 14:56:57
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 「検査してる側の人間なら検査を良く言って集客するに違いない」という変な勘ぐりを受けたこともあるので一応書いておくと、PETやPET/CTの受診者が増えた場合、私のお仕事は増えますが給料は増えません。歩合制ではありませんので。ということで、さっきのは本心です。

2012-06-02 14:57:15
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 ああ、あと、もし既に明確な症状がある(血痰が出る、便に血が混じる、乳房にしこりがある、など)場合は、検診ではなく適切な診療科を受診してください。無理に自己判断で頑張ろうとするのはダメです。自分が医者でもそんなのやりません。

2012-06-02 14:57:24
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 と、そんなところでしょうか。最後に、最初の方に書いた読売新聞記事が何故言い掛かりだったかを書きます。あれは、国立がん研究センターのがん検診で見つかった癌のうち、PETが発見に寄与していたのはほんの一部でしかなかったっていう記事でした。それ自体は事実。

2012-06-02 14:57:49
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 ただ、あのがんセンターでやってる検診って、ある意味全身の精密検査をやってるようなもので、癌検診としては極めて特殊なものだったんです。普通の病院や検診施設ではそんなのやりません。

2012-06-02 14:58:01
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 検査自体にも(高度なものなら特に)リスクがあることや、費用面の問題もあるので、それが最良のがん検診なのかはさておき、国立がん研究センターではそういうコンセプトの検診をやっているわけです。PETは小さい病変が苦手なので、小さいものも徹底して拾われると厳しいです。

2012-06-02 14:58:11
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 その国立がん研究センターの検診はこんな感じ。ちょっと読むと、随所から「第一に癌研究ありき」であることがわかるのではないかと。これはこういう施設ですから、それが悪いってことではなく、検診の質が違うということなんですよ。 http://t.co/FeuH9Rmq

2012-06-02 14:58:31
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

. @NYAO77 さらに言うと、あの読売新聞の検討はいわば「PET vs その他全ての検査」での比較だったんですよね。「大腸CTコロノグラフィ(CTC)による苦痛のない大腸検査」で肺癌は見えませんし、「女性医師・女性技師による安心のマンモグラフィ検査」で大腸癌は分かりません。

2012-06-02 14:58:49