山本七平botまとめ/『日本語では戦争が出来ない』~軍隊語で語る「虚構の」平和~

山本七平著『ある異常体験者の偏見』/軍隊語で語る平和論/36頁以降より抜粋引用
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山本七平bot @yamamoto7hei

①軍隊語とは、単なる言いまわしや表現の問題ではなく、主語や時制が明確でない日本語では、軍隊の運営も戦争もできないが故に特別に造られた言葉であって、この言葉を正しく分析すれば、それだけで戦争というものの実体がつかめるのではないかと思われる言葉である。<『ある異常体験者の偏見』

2012-05-30 06:26:32
山本七平bot @yamamoto7hei

②従って語系が違うと考えた方がよいかも知れない。「大阪弁では喧嘩はできない」などといわれるが、もっともっと徹底した意味で「日本語では戦争はできない」のである私自身はこのことを非常に誇りに思っている

2012-05-30 06:56:41
山本七平bot @yamamoto7hei

③たとえば普通の日本語の「お待ちしております」では戦争はできない。そこで軍隊語では「小官当地ニテ貴官ノ来訪ヲ待ツ」という言い方になるわけであって、この語順が何語に一番近いかは説明するまでもあるまい。

2012-05-30 07:26:31
山本七平bot @yamamoto7hei

④しかしそれだけではない。軍隊語といってもいわば「軍隊文語」「軍隊口語」~略~の別があって非常に複雑で~略~これらの言語の背後にある「哲学」とでもいうべきものは、言うまでもなく人間を戦争にひきずり込む事、いわば「戦争指向の精神構造」に基づく言語哲学とでもいうべきものである。

2012-05-30 07:57:01
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤それは厳然として存在するものであって、そして存在するのが当然である。軍隊時代、自分の方から興味をもったものと言えば、この「軍隊語」と「軍隊内地下出版物」だけだが、軍隊語の方は、私が本部付で~略~起案・起草をやらされた為~略~マスターしなければならないという事情も確かにあった。

2012-05-30 08:26:56
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥しかしそれ以上に興味をもったことも確かで、今でも日本語と軍隊語の差はほぼ正確に指摘できると思う。私はいつもこの二つの言葉を比較して、「なるほど、戦争とはこういう言葉を使わないと出来ないものか!そして、こういう言葉を使うことは、戦争を指向する証拠のわけか!」と思っていた。

2012-05-30 08:56:56
山本七平bot @yamamoto7hei

言葉そのものから体系的に組みかえて行かない限り戦争はできないのだから軍隊語は「戦争語」だといっていい。前に新井氏の文章に軍人的断言法があると書いたが氏はむしろその要素は少ない方で、酷い人になると昔の軍隊語と全く同じ語系の言葉で、平気で、いわば「戦争語で平和を叫んでいる」のである

2012-05-30 09:27:24
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧これはその昔「……東洋平和のためならば、なんて命が借しかろう」という軍歌をわれわれに歌わせた軍人たちが、「軍隊語=戦争語で平和を叫んでいた」のと全く同じで、私にとっては、これくらい気味の悪いものはない

2012-05-30 09:57:02
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨というのは、内容は平和でも言葉自体が戦争を指向しているからである。両者とも、どう見ても嘘をついているとしか思えない。それはその内容をその言葉自体が否定していることから明らかなはずで、平和は「平和語」でしか語れないはずだからである。~後略

2012-05-30 10:27:23