絶対リスクと相対リスクの意味の混同
設定もきちんと説明せず、さらに示された式が間違っていたら、流石に反論するのには時間がかかる。危うく騙されるところだった。
2012-06-01 02:54:18まず、ざっくりした話だということを認識していないようです。また、他人の話を理解しようとはせず、自分の思い込みに沿った形で話を展開したいだけようです。 @skull_ride
2012-06-02 11:19:38それにしても、稀に見る曲解力。 「上乗せ方法が対照集団におけるイベント発生率×(1+EAR)である」というような主張をしたこともなければ、そんな風に計算したこともないのにね。そこから、ERRやEARのような言葉の意味・用法を理解していないように印象づけるのが目的みたいだけど。
2012-06-03 10:54:15あれ、このリンク読むとMAKIRINさんの方法の筋が悪い、ということがわかるはずなんですけどねえ。
pingpongismusicさんのコメントを読めば、単なる「いいがかり」であることがわかると思う。 http://t.co/YBrwkooj
2012-06-03 11:16:41 彼はリスクの考え方をわかっていないということはここまでほぼ説明できたとは思うのですが、「生涯リスク」を安易に使ってはいけない、あるいは過剰相対リスクを安易に使ってはいけない、というのはどうしてなのでしょう。
リンクhttp://twitpic.com/9u5tc7の図で考えてみましょう。
観察開始十分な時間、例えば50年後に各群がFig.2 のような分布になったと考えます。
このとき、定義から対照群(被曝をしていない群)の累積がん発生率はB/(A+B+C+D)です。
このとき、被曝群ではCの部分で過剰ながん死亡者がいたため、がんの累積死亡率は(B+C)/(A+B+C+D)となり、両者の差C/(A+B+C+D)が過剰絶対リスクになります。
一方、過剰相対リスクは{(B+C)/B}-1=C/Bになります。
過剰絶対リスク=5%とすると、それぞれの集団が1000人いたとすると、C=50人です。ここで、B=100人とすると、がんの累積死亡率は10%で、被曝群の累積死亡率=15%になります。これが「絶対リスクが5%上乗せ」(50年間の)の意味です。
ところで、このとき過剰相対リスク=0.5です。
一方、Cは変わらず50人でB=200人だったとすると、過剰絶対リスクは変わらず5%、過剰相対リスクは0.25になります。「集団でどれくらいの被害が発生するか」を見積もるのに過剰絶対リスクが適していて過剰相対リスクができしていないのはこのためで、同じがん死亡者の増加に対して本来被曝しなかったときの死亡者が(集団の構成の違いなどにより)異なってしまうと横並びで規模感を把握できなくなってしまうわけです。
では、なぜ生涯がん死亡率に対して過剰相対リスクをかけたり、過剰絶対リスクや名目リスク係数を足してしまってはいけないのでしょうか?
同じ年齢の集団に対して被曝群と非被曝群がいたと考えます。同じ図のD=0の場合を考えるとわかりやすいかと思います。
(ここからは下の訂正版が正しい表現になりますが、訂正前の記述も残しておきます)
非被曝群のうちA,Bの部分が観察開始後t1年の時点で死亡(Dの部分はこの時点で生存)したときに、
被曝群では被曝による影響で全員死亡(つまり、寿命損失が発生)してしまったと考えます。非被曝群は観察開始後t2年
(t1<t2)に全員死亡するとします。
このとき、このままA:Bが一定のまま非被曝群がゆるやかに全員死亡に向かったとすると非被曝群の生涯がん死亡リスクはB/Aですが、被曝により生涯のガン死亡者がB+Cの部分になります。このとき、定義より、過剰相対リスクはC/Bになります。もし、これが1.2であり、B/A=0.25であれば、連立方程式を解くと観察開始後t1年での非被曝群の累積がん死亡率=23.8%、累積の非がんによる死亡率=71.4%となり、被曝群の累積(t1の時点で生涯ですが)がん死亡率=28.6%になります。一方、定義より過剰絶対リスクはC/(A+B+C)になります。この値=5%と考えると、やはり同じ値になります。
(ここまで)
これらは、がん死亡者:非がん死亡者が年齢に依存せず常に一定という仮定をおいているので確かにラフな考え方です。しかし、逆にMAKIRIN氏が主張するようなことが成立するのも極めて限定的な条件が符合したときに限られます。即ち、彼の言明には全く普遍性がなく、私のこの例示を「極端な例で」などと批判するのは全くの筋違いということになります。先にも説明しましたが、AならばBということを主張するならば、どんな前提においても(仮にそれが現実にありえないものであっても)Aであれば必ずBになることが証明されなければいけません。彼はそれを証明できないばかりか、AならばBという命題が成立しない反例を出したことを「非難」しているわけです。こういうことをしてはいけません。
上記コメントに関し、@maerasanさんから記述の誤りの指摘を受けました(指摘いただきどうもありがとうございます)。
お詫びと共に、修正版を以下に記載いたします。
観察開始後t1年の時点で被曝群では被曝による影響で全員死亡(つまり、寿命損失が発生)してしまったと考えます。非被曝群はその後の観察開始後t2年、(t1<t2)に全員死亡するとします。つまり、t1の時点では非被曝群のCの部分はまだ生存していますが、このままA:Bが一定のまま非被曝群がゆるやかに全員死亡に向かったとすると非被曝群の生涯がん死亡比率はB/(A+B)です。過剰相対リスクC/Bが仮に0.2であり、B/(A+B)=0.2であれば、連立方程式を解くと観察開始後t1年での非被曝群の累積がん死亡率=23.8%、累積の非がんによる死亡率=71.4%となり、被曝群の累積(t1の時点で生涯ですが)がん死亡率=28.6%になります。一方、過剰絶対リスクC/(A+B+C)を5%、B/(A+B)=0.2とすると、やはり同じ値になります。
つまり、生涯がん死亡率が25%で、過剰絶対リスク=5%、すなわち過剰相対リスク=0.2であった場合に必ずしも被曝群の生涯がん死亡率は30%にはならない(28.6%になっています)ということになります。
なお、本件に関して@pingpongismusicさんからもご意見をいただき、そのご意見をもとに考えた結果、私自身重大なポイントを論じていなかった事に気がつきました。一応この領域の関連分野を専門領域としている私には、自明なことであったので気がつきませんでした。まさに「灯台下暗し」でしたが、一歩退いてみて見ると、この部分がきちんと認識されていない事がMAKIRIN氏の様な誤った情報発信がなされてしまう原因の一つであったのではないかとも考えられます。
このことは@pingpongismusicさんからご意見をいただかなければ気がつかなかった(かも知れない)なので、この場を借りてお礼申し上げます。
それは、「相対リスク、絶対リスク先にありき」ではなく「過剰死亡者」が全てに先立つ、ということです。つまり、EARであろうが、ERRであろうが、集団において(被曝などの要因によって)過剰に死亡した人をどのように疫学的に評価するか、の指標である、ということです。つまり、EARとかERRといった指標は、「被曝を受けたらどれだけリスクが増すと考えられるか」ではなく、「被曝を受けた結果どれだけの人に健康被害が発生してしまったか、その規模はどれくらいであったか」を、集団の人口などと切り離して同列に比較できる形に標準化したものなのです。ですから、ERRとEARに基づいて計算の結果得られる過剰死亡者数が異なる、などということは本質的にナンセンスなことなのです。
この説明ではわかりにくいかも知れないので、言い換えてみましょう。正しいのはA.「一定期間被曝群、非被曝群それぞれ10万人の集団を観察したら被曝群では12000人、非被曝群では10000人ががんで死亡した。即ち200人の過剰死亡者が被曝群で発生した。つまり、被曝による過剰相対リスク=0.2、過剰絶対リスク=2%であった」であり、B.「一定期間被曝群、非被曝群それぞれ10万人の集団を観察した結果、過剰相対リスク=0.2、過剰絶対リスク=2%であった。つまり、被曝により過剰に死亡した人は200人である、あるいは被曝により200人が過剰死亡すると予想される」ではない、ということです。いうまでもなく、AとBでは原因と結果が正反対になっています。
もう一度MAKIRIN氏のブログから引用します。
(引用はじめ)
彼らのデタラメな計算方法では実効線量1Svの被曝をしたとき、5%の上乗せと考えるのでしょうか。その場合「1Svの被曝で、がんで死ぬ確率が26%から31%に増加する」ということになりますが、正しくは、実効線量1Svの被曝をしたとき、リスクが1.5倍になるので、
「1Svの被曝で、がんで死ぬ確率が26%から39%に増加する」ということになり、彼らはリスクを過小評価していることになります。(ただし、放射線の総量は同じでも急性被曝の場合より影響が少ない(1/2 あるいは1/1.5)とする考えがありますが)
こんな風に、彼らはリスクの見積もりが正しくできていないわけです。中川恵一が「正しいと思っていることを話すしかない」とデタラメな解説を相変わらず続けていますが、これはあくまで彼が正しいと思っていることであって、正しいことではないことに注意する必要があります。
(引用終わり)
つまり、MAKIRIN氏はそもそもEARやERRをリスクの見積もりに使う、というより根本的な間違えをしていたという事になります。これは単なる定義の問題ではなく、LSS調査などを行なう方法論としての疫学という学問の根本思想に関わる重大なポイントです。なお、彼はこっそり(修正履歴を残さずに)当該ブログを修正した(こういった行為は正しくは修正ではなく改竄です)様ですが、そもそもこういった根本をわかっていないところで改竄を重ねれば、当然その信頼度は一層低下するだけです。
確かに、放影研のリンク資料も、中川氏のブログも根本的な考え方としてBになっている、あるいはその様に受け取られかねない表現になっていることは問題ですが(その他の情報も多くがそうなっています)、それを適当に読んで言葉の意味をを充分に吟味せずに勝手な解釈をすることは厳に慎むべきことです。
なお、私も彼に指摘する時点でこの点に気がつくべきであったわけです。もしこの点を彼に指摘したとして、その結果がどうなったかは今となっては知る由もありません。恐らく彼の他のTweetやまとめをみる限り、考えを改めることができる可能性は限りなくゼロに近かったであろうとは思いますが、それを差し引いたとしても、そこを指摘できなかった私の不明が免罪されるものではありません。
@tonkyo_hanage 読みました。D=0の場合の説明が分かりにくいのと少々ミスが。具体的にお伝えする代わりに、勝手に修正案を作ってしまいました。不要であれば捨て置きください。→観察開始後t1年の時点で被曝群では被曝による影響で全員死亡(つまり、寿命損失が発生)してしまった
2012-06-09 09:55:33@tonkyo_hanage (承前)と考えます。非被曝群は観察開始後t2年.(t1<t2)に全員死亡するとします。このとき、このままA:Bが一定のまま非被曝群がゆるやかに全員死亡に向かったとすると非被曝群の生涯がん死亡比率はB/(A+B)です。
2012-06-09 09:58:45@tonkyo_hanage (承前)過剰相対リスクC/Bが仮に0.2であり、B/(A+B)=0.2であれば、連立方程式を解くと観察開始後t1年での非被曝群の累積がん死亡率=23.8%、累積の非がんによる死亡率=71.4%となり、被曝群の累積(t1の時点で生涯ですが)
2012-06-09 09:59:44@tonkyo_hanage (承前)がん死亡率=28.6%になります。一方、過剰絶対リスクC/(A+B+C)を5%、B/(A+B)=0.2とすると、やはり同じ値になります。 (以上を勝手に理解した上での質問ですが)、この内容が直ぐ上の文章
2012-06-09 10:02:11@tonkyo_hanage (承前)『なぜ生涯がん死亡率に対して過剰相対リスクをかけたり、過剰絶対リスクや名目リスク係数を足してしまってはいけないのでしょうか?』の説明になっているロジックが良く分かりませんでした。 (長々とスイマセンでした。)
2012-06-09 10:04:02