外国人に対する生活保護の法的根拠について
発端
まとめの趣旨とはあまり関係ありませんが、やりとりのきっかけになったのは宮台真司氏と金明秀氏の議論です。

まとめで直接参照しているツイートのみ以下に引用します。

#miyadai それはあんたの主観。勝手に通念決めるなよ。強制連行図式の虚偽を知れば永住権を与えているだけでも相当なもの。永住権には生活保護や社会福祉の受給権が含まれているからな。RT @han_org: …現在の社会通念から言って「日本人に準じる権利」と呼ぶことはありえない。
2010-03-29 16:13:02
(2)恩恵としての生活保護はともかく、社会福祉の受給権とは閉口する。個々の制度が何年に外国籍に開かれたのかを知っての発言なのかね。 QT @miyadai: #miyadai 永住権を与えているだけでも相当なもの。永住権には生活保護や社会福祉の受給権が含まれているからな。
2010-03-29 16:41:27本題
ここからが本題です。

「永住権には生活保護や社会福祉の受給権が含まれている」なんて悪意を含んだ理解が頭にこびりついちゃうと、容易にまともな議論には戻れない。
2010-03-29 19:13:24
@GenYamaguchi 特別永住者だろうがなんだろうが「権利」として社会福祉を受けてるわけじゃない、という理解でいいでしょうか。悪意を含んだというあたりもう一つわかりませんでした。
2010-03-29 19:21:06
@rna 在日コリアンの歴史的経緯を視野に入れない議論はダメ、というのは前につぶやきましたが、いちおう「永住」という点に限って説明します。
2010-03-29 19:24:27経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)
第二条
1 この規約の各締約国は、立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより、個々に又は国際的な援助及び協力、特に、経済上及び技術上の援助及び協力を通じて、行動をとることを約束する。
2 この規約の締約国は、この規約に規定する権利が人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位によるいかなる差別もなしに行使されることを保障することを約束する。
3 開発途上にある国は、人権及び自国の経済の双方に十分な考慮を払い、この規約において認められる経済的権利をどの程度まで外国人に保障するかを決定することができる。

@rna 社会福祉については、そもそもプログラム規定であって権利でないといういい方もありますが、日本人にとって抽象的にでも権利であれば、外国人にとっても権利です。
2010-03-29 19:26:04
@rna 但し、各社会福祉には制度趣旨があり、外国人の実体も様々です。したがって在留資格によっては、社会福祉が受けられない場合はあり得ます。例えば、生活保護については日本での自立援助という制度趣旨ですから、短期間滞在して帰国する予定の外国人は受けられない。
2010-03-29 19:28:54
@rna 但し、こういう説明も実態次第。国保は相互扶助を理由に在留資格のない外国人を一律排除していたけど、ちゃんとボクは最高裁で勝ったでしょ。その後法改正されちゃったけど。
2010-03-29 19:29:54問題の最高裁判決はたぶんこれ。
平成14(受)687 損害賠償請求事件
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52363&hanreiKbn=02
1 外国人が国民健康保険法5条所定の「住所を有する者」に該当するかどうかを判断する際の考慮要素
2 我が国に不法に残留している外国人が国民健康保険法5条所定の「住所を有する者」に該当するとされた事例
当時の報道
http://j.people.com.cn/2004/01/15/jp20040115_35890.html
その後国民健康保険法の施行規則が改正され、在留資格のない外国人などが国保に加入できないことを明文化。
参考:
http://jsmiru.cocolog-nifty.com/michikusa/2004/06/post.html
http://www.geocities.co.jp/SweetHome-Ivory/9660/burendakai/kanpou3866.html

@rna 要するに1) 社会福祉から外国人を一律除外することは許されないが、2) 個々の制度によっては別異扱いはされていて、3) それも実態によってもめる要素はいっぱいあって、4) いずれにせよ「永住」かどうかで線を引くというのはあり得ない、ということです。
2010-03-29 19:32:15
@GenYamaguchi 外国人の生活保護について、一方的な行政措置で保護請求権や不服申し立ての権利がないという判決があったと読んだもので、そういうものかと思っていましたが、一般にはそんな単純な話でもないんですね… http://bit.ly/bbihJy
2010-03-29 19:35:54
@rna 単純じゃないですよ。少なくとも「外国人に対する生保は恩恵で裁量だ」ってな調子で運用したら、出るとこ出れないでしょ。国も今は「準用」といういい方でしょ。
2010-03-29 19:40:35
@rna なお90年厚生省見解では別表2の外国人なら生保は準用です。別表1は仕事を理由に滞在していて、たいていは在留資格に報酬基準があるので生保いらん、ということです。このように、原則平等としたうえで、細かく各制度ごとに例外があるかどうかを制度趣旨と実態をみて決めていくわけです。
2010-03-29 19:42:43追記(2012/6/6): 森川清『権利としての生活保護法』より
「みんなのおすすめ商品」の中にあった、
森川清『権利としての生活保護法―その理念と実務』増補改訂版
http://t.co/a7IA1KmL
に、外国人の生活保護の話が少し書いてありましたので紹介します。

買いました > 森川 清『権利としての生活保護法―その理念と実務』 http://t.co/a7IA1KmL 外国人の生活保護の話も少し書いてありました(p53-56)。
2012-06-06 16:06:04
難民条約への加入を受けて国民年金法などからは国籍条項が撤廃されたのですが、生活保護についてはそれ以前から外国人に準用されていたという理由で生活保護法の国籍条項はそのままにされたということです。理由になってない気もしますが… http://t.co/a7IA1KmL
2012-06-06 16:09:46
外国人への生活保護の適用について厚労省は、難民、永住者とその家族の定住者、特別永住者、に限定しているのですが、福祉事務所が人道上の措置として医療扶助などを出すことがあるそうです。でも国の負担分を請求しても断られるので通常はやらないとか。http://t.co/a7IA1KmL
2012-06-06 16:17:10
そういう問題があるのだけど、福祉事務所の判断で行政措置として保護を行うこと自体は合法とのことで。厚労省も限定範囲以外でも一部のケースについては照会するように言ってるそうです。http://t.co/a7IA1KmL
2012-06-06 16:22:08
不法滞在の外国人の場合はNGという判例があるのだけど(中野区外国人生活保護訴訟, 2001)それ以外については(2011年時点では)「保護の権利主体であるかが明らかになっていない」とのこと。http://t.co/a7IA1KmL
2012-06-06 16:26:34
権利主体という言葉が出てきたけど「行政解釈上、外国人には法に基づく生活保護利用権がないことから審査請求権がないとされて」います。「審査請求」というのは要は福祉事務所の決定(申請却下とか)に不服がある場合に知事に審査してもらうこと。 http://t.co/a7IA1KmL
2012-06-06 16:35:59