多種多様な繁殖戦略を持つマダラヒタキ

結婚詐欺オス、シングルマザーメス、寝取られオス、不倫メス色々な交尾様式を持つマダラヒタギについての不時ッコ‏@bukrd405さんの連ツイ
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@bukrd405

マダラヒタキと呼ばれるヨーロッパ産の鳥の生態。ほとんどのヒタキ科のオスは一羽の配偶者しか持たないとされているが、複数のメスを求めるものも多く、かなりの数のオスがそれに成功する。マダラヒタキの場合、一夫多妻制は次のような仕組みになっている。

2012-06-02 19:41:09
@bukrd405

春になると、オスは快適な巣穴を見つけ、その周辺に縄張りを構えて、メスに求愛し、交尾を行う。メス(第一のメス)が産卵すると、オスは受精に成功していたことを知り、今や抱卵に忙しいメスが他のオスに興味を持つことはなかろう、どのみちメスは一時的に不妊の状態にあるのだと確信する。

2012-06-02 19:43:23
@bukrd405

そこでオスは近くに新しい巣穴を見つけ、別のメス(第二のメス)に求愛し、交尾を行うのである。第二のメスが産卵すると、オスはふたたび受精に成功したと確信する。このころには第一のメスが産んだ卵が孵化しはじめる。オスは第一のメスの巣にもどり、労力のほとんどをつぎこんで雛に餌を与えるが、

2012-06-02 19:49:36
@bukrd405

(承前)第二のメスが生んだ雛にはめったに、あるいはまったく餌を運ぼうとしない。数字がこの残酷さを物語っている。オスが第一のメスの巣に餌を運ぶ回数は一時間に平均14回だが、第二のメスの巣に運ぶ回数はわずか7回なのだ。巣穴が見つかりさえすれば、ほとんどのオスは第二のメスを求め、

2012-06-02 19:52:01
@bukrd405

(承前)そのうち39%のオスが首尾よくメスを獲得する。明らかにこのシステムからは勝者と敗者が生まれる。オスとメスの個体数はほぼ同じであり、メスは配偶者を一羽しか持たないのだから、重婚のオスがいればその分、一度も交尾できない不運なオスがいるに違いない。

2012-06-02 19:54:06
@bukrd405

最大の勝者は、(二羽の配偶者を分を合わせて)毎年平均8.1羽の雛の父親となる一夫多妻のオスである。一方、一夫一妻のオスは、平均5.5羽の雛しか持てない。

2012-06-02 19:57:25
@bukrd405

一夫多妻のオスは、非交尾のオスに比べて年長で身体も大きい傾向があり、最良の縄張りを構え、最良の生息域に最良の巣穴をもつことができる。その結果そうしたオスの雛は、他の雛より体重が10%近く重く、他の小さな雛より生き残る確率も高い。

2012-06-02 19:58:37
@bukrd405

最大の敗者は、不幸にして一度も交尾できなかったオスである。一羽もメスを獲得できず、子孫をまったく残せない(少なくとも理論の上では―詳細は後述)からだ。第二メスも同じく敗者である。第一メスよりよほど必死に餌を探して雛を育てなければならないのだ。

2012-06-02 20:00:38
@bukrd405

第二メスは1時間に20回も巣に餌を運ぶが、第一メスはたったの13回だ。こうして第二メスは体力を使い果たし、早死にしてしまうのかもしれない。第二メスがどれだけ必死になったところで、ひとりで集められる餌は、第一メスがオスの協力を得て労せず集める餌の量にはおよばない。

2012-06-02 20:03:19
@bukrd405

そのため飢え死にしてしまう雛もおり、第一メスの雛にくらべると生き延びるものが少ない(平均して3.4羽。第一メスの雛は5.4羽)。そればかりか、無事に成長を遂げたとしても、第一メスの雛にくらべると身体が小さく、冬期や渡りといった苛酷な環境を生き延びることが難しい。

2012-06-02 20:05:43
@bukrd405

(承前)劣悪な縄張りを持つ冴えないオスの唯一の配偶者になるよりましだからということだった(人間の社会でも、同じ理由から裕福な既婚男性の愛人になる女性がいる)。しかし実際には、メスはその後の運命を承知の上で第二のメスになるのではなく、オスにだまされているだけだということがわかった。

2012-06-02 20:11:17
@bukrd405

一夫二妻のオスがメスを騙すときのコツは、第一の巣穴から200~300mほど離れた場所に第二の巣穴を作ることである。二つの巣穴の間には、幾つもの他のオスの縄張りを跨ぐことになる。驚くことに、第一の巣穴の近くに何十ものよさそうな巣穴があっても、オスはそこで第二メスに求愛しようとしない

2012-06-02 20:16:00
@bukrd405

二つの巣穴の距離が近い方が行き来の時間を節約できるし、雛に給餌する回数も増やすことができる。それに行き来の最中に配偶者を別のオスに寝取られる危険も減るだろう。このように不利な条件にもかかわらず第二の巣穴を遠くに構えるのは、第二のメスを欺き、

2012-06-02 20:19:35
@bukrd405

(承前)すでに配偶者があることを隠しておくためだとしか考えられない。子孫を残すという切迫した問題の前では、ヒタキのメスはとくにだまされやすくなっている。卵を産んだあとでは、オスに別の配偶者がいることを知ったところで、もう手の打ちようがない。

2012-06-02 20:21:15
@bukrd405

卵を見捨てて新しい配偶者を探し、それが前のオスよりましであることを願うより(どのみち新しいオスにしてもその多くは重婚オスだろう)、すでに産んだ卵を育てたほうがましである。

2012-06-02 20:23:07
@bukrd405

マダラヒタキのオスにはもう一つ戦略がある。男性の生物学者たちはこの戦略に、倫理に反さないように聞こえる「混合繁殖戦略(Mixed Reproductive Strategy 略してMRS)という名前をつけた。

2012-06-02 20:26:50
@bukrd405

メスに近づくときには大声でさえずることもあるし、静かに忍び寄ることもあるが、後者のほうが成功率は高い。MRSはわれわれの想像を超えるほど頻繁に行われている。オスのムナオビエリマキヒタキはほかのオスが(餌を探しにいくなどして)一時的に配偶者のもとを離れた場合、

2012-06-02 20:30:47
@bukrd405

(承前)雛の24%が「非嫡出子」であると推定されている。またほかのオスの巣に侵入してメスと交尾を行うオスは、近接する縄張りの主であることが多い。

2012-06-02 20:35:03
@bukrd405

配偶者を寝取られたオスにとってはEPCやMRSは進化がつくりだした災難だ。短い一生のなかの繁殖シーズンをまるごと一つ無駄にして、ほかのオスの遺伝子を受け継ぐ雛に餌をあたえつづけたのだ。逆にEPCを行ったオスは大きな成功を収めたかに見えるが、少し考えてみると、

2012-06-02 20:37:59
@bukrd405

(承前)オスのバランスシートの計算は見かけほど単純でない。あるオスが巣を留守にしてメスを口説いている間に、別のオスがやってきて自分のメスと交尾を行ってしまうこともあるからだ。

2012-06-02 20:42:26
@bukrd405

配偶者がメスから10m以内の距離にいる時には、EPCは滅多に成功しないが、それ以上離れると、成功率は急激に上昇する。といういことは、別の巣で過ごすことが多く、二か所を行き来するにも時間がかかる重婚者のオスにとって、MRSはとくに危険な戦略なのである。

2012-06-02 20:43:49
@bukrd405

重婚オスは自らもEPCを試み、平均25分おきに別のオスの巣に侵入するが、その間自分の巣にも11分おきに別のオスが忍び込みEPCを果たそうとしているのだ。つまり、よそのメスを求めて巣を離れているまさにその最中に、自分の配偶者もまた別のオスに必ず狙われているのである。

2012-06-02 20:46:08
@bukrd405

このような統計からすると、マダラヒタキのオスにとってMRSはどうかと思うような戦略だが、彼らもリスクを最小限にする知恵はそなえている。配偶者が妊娠するまでは、巣から2、3m以上は離れず、ひたすらメスを守り、メスが妊娠してはじめて、巣を離れて別のメスを探しにいくのである。

2012-06-02 20:49:32
@bukrd405

以上、ヒタキ科の鳥の生態について長々と書いてきたが、鳥類の世界にも結婚詐欺オス、シングルマザーメス、寝取られオス、不倫メスがいるというのは意外だった。情報ソースは『セックスはなぜ楽しいか』http://t.co/v8wUlof7

2012-06-02 20:51:29
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