初期ラヴクラフト・サークルにおけるツァトゥグア設定のあれこれまとめ

『The Tsathoggua Cycle』(Chaosium)でのロバート・M・プライス博士による解説を元にした、ツァトゥグアの設定についてH・P・ラヴクラフトとC・A・スミスがそれぞれ異なる記述をしていった流れについてのまとめです。
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HPLは、ビアスやチェンバースらの独自設定を原典と何の関係もなく「勝手に引用」し、CASの設定を「勝手に変更」し、あまつさえ第三者に他人の作った設定の流用を唆した人です。大好きだ。 #CTHULHUJP
立花圭一 @k1Tachibana
さて、しばらく前に書いた「HPLがCASの設定を半分無視して色々付け加えまくった話」を投下しようかな。例によって、情報源はケイオシアムの『The Tsathoggua Cycle』に載っているロバート・プライス博士の解説。 #Cthulhujp
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@k1Tachibana 僕のネット端末が携帯しかないこのタイミングで、この流れるようなコンボ!
立花圭一 @k1Tachibana
@Molice そちらに「CASの設定を「勝手に変更」し、あまつさえ第三者に他人の作った設定の流用を唆した」なんて書かれちゃ、投下するしかないじゃないですか(笑)
立花圭一 @k1Tachibana
1) 所謂ラヴクラフト・サークルの面々は、互いに原稿を送りあっては感想や批評を交換していた。クラーク・アシュトン・スミスが『サタムプラ・ゼイロスの物語』の原稿をラヴクラフトに送って読んでもらった時のこと。 #Cthulhujp
立花圭一 @k1Tachibana
2) HPLはこんな手紙をスミスに送った。「あなたのツァトゥグアを大変に気に入りました。今取りかかっている添削の仕事で、彼のものが地表に現れる前の崇拝について幾つか言及しようと思います」(1929年12月19日付書簡) #Cthulhujp
立花圭一 @k1Tachibana
3) スミスはこう返事した。「ツァトゥグア神話をあなたが書き足してくれて喜んでいます。あなたが御自身の名前で作品を発表できないのが残念でなりません」(1930年1月9日付書簡) #Cthulhujp
立花圭一 @k1Tachibana
4) スミスの『サタムプラ・ゼイロスの物語』が『ウィアード・テイルズ』誌に発表されたのは更に一年以上が経った1931年11月号の事なのだが、ツァトゥグアの名前はもうWT誌上に掲載されていた。HPLとスミスが話題に挙げていた添削作品以外によって。 #Cthulhujp
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@k1Tachibana 『タイタス・クロウの帰還』の解説で書きましたけど、リン・ーターのゾス設定も商業初出がラムレイ作品という。(^,,,^)
立花圭一 @k1Tachibana
5)HPLとスミスが話題にしていた添削作品は『墳丘の怪』の事なのだが、これがWT誌上に掲載されたのは1940年11月号ともっとずっと後の事。WT誌上にツァトゥグアの名が初めて言及されたのはHPLの『闇に囁くもの』(1931年8月号)だった。 #Cthulhujp
立花圭一 @k1Tachibana
6) かくしてツァトゥグアにまつわる物語が展開されることになったわけだけど、スミスが追及したのとは別の方にむけてHPLはツァトゥグアの情報を拡張していった。ある意味HPLがスミスのツァトゥグアを「乗っ取った」と過言ではない。 #Cthulhujp
立花圭一 @k1Tachibana
7) スミスはツァトゥグアを「かなりずんぐりしており、腹がせりだし、頭部は神というよりも悍ましい蟾蜍に似て、全身が短い柔毛めいたものに覆われているので、どことなく蝙蝠やナマケモノを思わせた」(大瀧啓裕訳)と『サタムプラ・ゼイロスの物語』で描写している。 #Cthulhujp
立花圭一 @k1Tachibana
8) 一方でHPLはツァトゥグアを「コウモリのような」と描写せず、大体「ヒキガエルのような」か「不定形」のどちらかあるいは両方としている。 #Cthulhujp
立花圭一 @k1Tachibana
9) スミスが「不定形」と描写したのはツァトゥグアそのものよりも、その血を引くクニュガティン・ザウムが首を切られるたびに退行していった姿だったり、『サタムプラ・ゼイロスの物語』でツァトゥグア神殿を守護していたものだったのに。 #Cthulhujp
立花圭一 @k1Tachibana
10) さらに言えば、『土星への扉』で忠実な下僕であるエイボンにモルギの襲撃を警告したりしたように、スミスのツァトゥグアは人間のような姿の神格ではなかったけど、決して「非人間的な」存在ではなかった。 #Cthulhujp
森瀬 繚@『未知なるカダスを夢に求めて』発売中! @Molice
@k1Tachibana 栗本薫描くク・スルフ様は、CASっぽいなーと感じたことが。(あの方、CAS好きですしね)
立花圭一 @k1Tachibana
11) 一方でHPLのツァトゥグアはそんな人間的な交流なぞもっての外、完全に非人間的な存在だった。『墳丘の怪』でクン=ヤンの民は、ンカイの暗黒の中で無定形の下僕たちがツァトゥグア崇拝をしていたのに悍ましさを感じて、ツァトゥグア信仰を捨てたぐらいなのだ。 #Cthulhujp
立花圭一 @k1Tachibana
12) ツァトゥグアが地球に到来した経路もスミスとHPLでは異なっている。スミスは『土星への扉』で「キュクラノス(土星)経由でヒュペルボレオスに」と言っているけど、HPLは『闇に囁くもの』で「暗く無明のンカイからツァトゥグアがやってきた」と書いている。 #Cthulhujp
立花圭一 @k1Tachibana
13) まあHPLは『墳丘の怪』において、ンカイにいたのはツァトゥグアの無定形の下僕たちだけにして、ツァトゥグアそのものがいるとは書いてなかったけど。 #Cthulhujp
立花圭一 @k1Tachibana
14) ツァトゥグアを初めて地球上で崇拝したのは誰だったか。ここでもHPLとスミスの見解は異なっている。スミスは半人半獣の野蛮なウールミ(ヴーアミ族)がそうだと設定した。 #Cthulhujp
立花圭一 @k1Tachibana
15) 一方でHPLは、『銀の鍵の門を超えて』で「原初のヒューペルボリアに棲み、かつてアルクトゥルスをまわっていた二重星キタミールから飛来した、黒く可塑性の体をもつツァトゥグアを崇拝する、太古の実体」がそうだと設定した。 #Cthulhujp
立花圭一 @k1Tachibana
16) で、ここで重要なのは、HPLは最初にスミスにツァトゥグアの使用許可を求めただけで、後に追加した設定についてはほとんど相談もしていないし、設定のすり合わせなんかまるっきりしていないということ。それぞれがそれぞれ好き勝手にやっていた、という話。 #Cthulhujp
立花圭一 @k1Tachibana
17) 森瀬繚(@Molice)さんが「クトゥルー神話はシェアード・ワールドではなく、シェアード・ワード」とよく言われている端的な例が、これ。設定の共有ではなく、名称の共有しかされてない。 #Cthulhujp
立花圭一 @k1Tachibana
18) そんなわけで、HPLも他人の創造物を好き勝手手を加えて書いてたし、特に整合性取って体系化する努力もしてなかったよ、という話。おかげで後の作家やファンが隙間を埋めて遊ぶ余地が一杯あるんだけどね! #Cthulhujp
立花圭一 @k1Tachibana
19) おっと、忘れてた。HPLはツァトゥグアが世に出る以前、ロバート・E・ハワードやオーガスト・ダーレス宛に書いた手紙でスミスがツァトゥグアという神を創造した事に触れて、「君も使うといいよ」なんて書いてるお茶目さんでもありました。 #Cthulhujp
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コメント

NiKe @fnord_jp 2012年6月6日
なんかダーレスが可哀相になってきますねえw
立花圭一 @k1Tachibana 2012年6月7日
順序を整理しました。
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