ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/06/08

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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@lanatus

お兄ちゃんが最近料理を始めた。急にどうしたのって聞いたら、好きな子と付き合う条件が“私の好物を美味しく作れる”らしい。何をって聞いたら「イカスミ納豆パフェ」だって、それ遠回しにフラれてるんじゃと思ったけど黙っておこう。私はいい妹だから…ね!!。#twnovel

2012-06-08 00:09:25
layback @laybacks

ロボットは失恋する。記憶を消してくださいと博士に頼む。しばらくは辛いが時が癒してくれる。ヒトはそういうものなんだよ。もちろんきみもそうなるように作られている。博士はたしなめる。こんなに大きな悲しみを抱えたまま過ごすくらいならぼくはヒトになんてなりたくありません。 #twnovel

2012-06-08 02:47:44
ララン @bushido00

「黒ヤギさんがお手紙書いた。黒ヤギさんはとても空腹でした。黒ヤギさんたら送らず食べた。黒ヤギさんは疲れていたのでしょう。黒ヤギさんは『もう一度ください』とお手紙書いた。黒ヤギさんたら送らず食べた」「……白ヤギは?」「彼の頭の中にしかいない存在だったのです」 #twnovel

2012-06-08 07:05:34
銭喰 @zeniqui

#twnovel 夏を前に整備が進む海岸で、ヤドカリが不思議な貝を見つけた。とても大きくて、三角の赤い貝。海に無い鮮やかな赤に魅せられたヤドカリは、その貝を住処とした。始め周囲は不恰好を嘲笑ったが、そのうちヤドカリは大きく成長して、今では同じ貝を選んだ仲間達と工事現場で働いている

2012-06-08 07:21:23
おこげ @okoge_ver2

とてつもなく大きな蝸牛がやって来た。蝸牛の通った後には草木一本残らない。動物だってモリモリ食べた。国は砂ばかりになり、食べる物が無い蝸牛は、魚を食べようと海に入って溶けてしまった。しばらくして、海から続々と消えた動物達が上がってきた。皆背中に小さな殻を持って。 #twnovel

2012-06-08 08:02:01
七歩 @naholograph

「幸せの青い鳥です」女は鳥籠を掲げた。溜息、そして祈る人々。何もいないのにどういう事だ。裸の王様みたいなもんか?正直な心を試されている。「鳥なんかいないぞ」ざわざわ。見えない人がいるなんて。女は鳥籠を開けた。皆の視線が一斉に同じ方向を追う。羽音が聞こえた気がした。#twnovel

2012-06-08 08:14:00
晩秋🐄あきのおわり @banshuh

放物線を描いて落ちてゆく世界の時間は飛んだり跳ねたりしながら少女のまわりをぐるぐる回り、バターになる意識の中で溶け出した認識が凝固して、やがては巨大な壁を作り出したのである。登るか壊すかする必要性を迫られて、少女の手は二つではとても足りない。 #twnovel

2012-06-08 08:34:13
Hiroyuki inoue @hiro_kinako

#twnovel 同僚に連れられて入った定食屋。脱サラして創業した先代の頃には潰れかけたこともあったが、二代目が継いでからは順調だという。メニューに「復刻版冷やし中華」なるものがあった。先代が初めて出した冷やし中華を忠実に再現した、とある。「やめとけ、味も忠実に再現されてるから」

2012-06-08 11:50:58
秋山幽 @A_ki_ya_ma_Yu

#twnovel 「恋」が正式に心の病気と認定された。それは空気感染する病気だとして、世界中で片想い患者の隔離が始まった。恋する者たちの対抗策は、政府によって捕らえられる前に想いを叶えるか、振られて吹っ切るか、恋を忘れることだけ。そして大多数が一番目を選び、世界には恋が蔓延した。

2012-06-08 21:34:36
@apecrown

#twnovel 部屋の隅には鎖に繋がれた大型犬用の首輪が空中に浮遊していた。首輪の下には靴下と縦笛と破れた服。それだけ。人の姿はどこにもない。「妄想だよ」友人が笑う。首輪の鈴が鳴る。不意に扉が開き複数の足音だけが乱入する。「妄想警察だ!」私は友人に手帳を見せる。首輪は外れない。

2012-06-08 21:50:58
Cal Que El Lulu-rain @senzaluna

『魂』が科学的に証明されて早数十年。特殊なフィルターがなければ目視もかなわぬそれが莫大なエネルギーを持っていると知ると、人類はそのエネルギーの抽出法、現存システムへの編成術(編成不可能な場合は現存システムを変更しなければならないのでその対応も)の研究に没頭した。 #twnovel

2012-06-08 22:00:05
消しゴム @keshi_bot

ある日、魔女のおばあさんが消しゴムをくれた。魔法の消しゴムは、辛いことや苦しいこと、どんな嫌な思い出でも消せて、それをなかったことにできた。 #twnovel 消しゴムが半分に磨り減った頃、おばあさんがふたたび私の前に現れた。「くく、それは消しゴムではない。おまえさんの魂じゃよ」

2012-06-08 22:11:03
Takao Rival @takao_rival

#twnovel 時に人生は苛烈な試練に直面する。出勤前、お腹の調子が心配で飲んだ整腸剤が実は下剤だったというのは典型的な例である。満員の通勤電車の中で下腹部を襲う猛烈な衝動は、あまりにも深刻で「…先生、私は深刻な原罪の話をお願いしたのですが」「や、だから、深刻な下剤の話を」

2012-06-08 22:14:09
すわぞ @suwazo

#twnovel 晴天である。田んぼに挟まれた道を長い葬列がゆく。遺影を掲げた女を先頭にした人々の列の後方には、笛吹き、ラッパ吹き、太鼓叩き、踊り子が続き、さらに仮装者、狐、狸、鼬、蟲と続く。異形の者どもがどんどん列に加わる。最後に故人本人が不思議な顔で付いてくる。晴天である。

2012-06-08 22:29:03
リオ @urufffayn

とろんとらは、琥珀色の虎。縞があるヤツがいるなんて、驚きだね。僕の話を聞いて、ちっとも驚いた顔をせずにそう言う。とろんとらのおなかはあったかい。よっかかっていると、まぶたが重くなる。目を開けると、空にはレモンみたいな月が出ていた。僕は枕を抱えあげて家に入った。 #twnovel

2012-06-08 22:33:59
天道三月@ノクターンでゆるっと活動中 @tendouyayoi

伝え損ねた想いが今も胸の奥でくすぶって消えない。寝ても覚めても、ずっとあの時のことを考えてしまう。私は臆病者だから伝えることができなくて、それでこんなに苦しむなんて思いもしなかった。やはりあのデートの時、貴方へ正直に伝えるべきだったのだ。鼻毛が出ていたよ、と。#twnovel

2012-06-08 22:52:47
藍 真史 @shin1960

#twnovel 残業が続いた。帰宅は毎晩深夜になった。同僚からはいっそ会社に泊まればなどと冗談も言われた。お疲れ様。ワンルームの玄関を開けると俺の声がした。誰?いやだなー、今日が誕生日だろ。さあ、今日で交代だよ。そこで目が覚めた。もう朝?。玄関の閉まる音。軽やかに響く俺の足音。

2012-06-08 22:54:16
疾風卓司 @t_hayate

田んぼに水がはられた。人々は、冷たい風が吹いて気持ち良さそうにしている。その為、なかなか行ってくれない。早く行ってくれないものか、と僕たちは思う。全然、鳴くことができないじゃないか。もう夏が近いケロ。 #twnovel

2012-06-08 22:55:56
(ゆないキズト) @Kyzt__

「はっはっは、この世界は俺のモノだ」「おめでとうございます、魔王様」「今後は、何でも私の思い通りだ」「そうですね。しかし」「…ん?何だ?」「もともとこの世界は、アナタの思い通りだったんですよ」「な、なんだって!?」「そして私は、アナタの頭の中の存在」「そんな…」 #twnovel

2012-06-08 23:17:10
よしのちほ @chiho_yoshino

メールの着信を無視して探し物。いつの間になくしたのか、考えてもわからない。懐かしいものはたくさん出てくるのに。ライブのチケット、テーマパークの案内図、展覧会のパンフレット。なのに、どこに行っちゃったのかな。どうしても見つからないよ。あなたを好きだった気持ちが。 #twnovel

2012-06-08 23:17:19
七歩 @naholograph

鰯雲飛ぶ空を眺める。白い白い鰯雲。爪を研いで、狙い定める。あの3匹目の鰯雲。あれが一番美味しそう。さあ行くよ。屋根の上から、僕は飛ぶ。#twnovel 落ちた。転がる。緑の芝生。仰向けになり、僕は青い、青い空を見た。鰯雲じゃ僕には小さすぎるんだぜ。今度は鯨雲、狙おうかにゃ。

2012-06-08 23:34:54
夕凪奏恵 @k_you_nagi

#twnovel 今夜はキャンドルを作っています。夏至の夜に使う、小さな、特別な物です。火を点してもそれほど明るくはならないでしょう。短い時間しか役に立たないでしょう。それでいいのです。小さな物語が生まれ、誰かの心に魔法をかけ、彼方へ流れていく。その僅かな瞬間に輝けば良いのです。

2012-06-08 23:53:51