芦部信喜『憲法』(元自衛官の入閣は文民統制条項に抵触するか)
↑ここからの続きです。
森本敏さんの入閣は、本人の資質がどうこうという話じゃなくて、文民統制の破壊という点に問題があるのに、あまり指摘するひとが多くないようだ。これをゆるがせにすると、現役の幕僚長が退職して当日に入閣というのも可能になる。
2012-06-04 13:11:51さっきのツイートへの反応を見ていると、文民と非文民の区別に、現職であるか否か、退官して年数を経ているか否か、と2通りの解釈があり、元自衛官の入閣を問題なしとする立場でも解釈が分かれているようだ。@obiekt_JP さんが教えてくれたのは、アメリカでは除隊後10年で後者を採用。
2012-06-04 15:02:24平成十三年五月二十二日受領
答弁第六六号
内閣衆質一五一第六六号
平成十三年五月二十二日
内閣総理大臣 小泉純一郎
衆議院議長 綿貫民輔 殿
衆議院議員平岡秀夫君提出憲法第六六条第二項の文民規定に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員平岡秀夫君提出憲法第六六条第二項の文民規定に関する質問に対する答弁書
憲法第六十六条第二項にいう「文民」は、その言葉の意味からすれば、「武人」に対する語であって、「国の武力組織に職業上の地位を有しない者」を指すものと解される。政府としては、憲法で認められる範囲内にあるものとはいえ、自衛隊も国の武力組織である以上、自衛官は、その職にある限り、「文民」に当たらないが、元自衛官は、過去に自衛官であったとしても、現に国の武力組織たる自衛隊を離れ、自衛官の職務を行っていない以上、「文民」に当たると解してきており、お尋ねの国務大臣の任命が憲法第六十六条第二項に違反するとの御指摘は当たらない。
なお、政府は、従来から、国政が武断政治に陥ることを防ぐという同項の規定の趣旨に照らして、「旧陸海軍の職業軍人の経歴を有する者であって、軍国主義的思想に深く染まっていると考えられるもの」もまた、同項にいう「文民」には該当しないと解してきているが、自衛隊は、旧陸海軍の組織と異なり、平和主義と民主主義を基調とする現憲法下における、国の独立と平和を守り、その安全を保つための組織であって、これに勤務したからといって軍国主義的思想に染まることはあり得ないことはいうまでもない。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b151066.htm
この政府見解は(たぶん)いまだ更新されてないと思うので、であればそれを支える現在でも有効な憲法学上の論拠があるはず。ちょっと検索してみただけでは分からなかった…。https://t.co/6QphzdCU
2012-06-04 23:27:59芦部信喜さんの本ですね。関心が向いたら読んでみたいです。RT @Gakuwahikari 芦部憲法の文民の項に少し書かれてますね。
2012-06-05 00:24:56ありがとうございます。Amazonで第三版ポチりました。RT @Gakuwahikari いえいえ。たぶん「内閣」の章の中にあったと思います。
2012-06-05 00:53:20[軍事][政治]ハンチントンもいいけどパールマターやベルクハーンもね。ま、こまけぇことは抜きにして、とりあえず辞職した幕僚長が翌日に防衛大臣になるのはまずかろうね。 / “元自衛官の入閣は文民統制条項に抵触するか - Togetter” http://t.co/udoxC4fM
2012-06-06 00:30:10芦部信喜『憲法』第三版がとどきました。
いまさっき芦部信喜『憲法』第三版がとどきました。「文民」の項目を見てますが、この本の執筆時点では「現在職業軍人でない者」は少数説とされてますね。その後の議論の更新でもないかぎり、小泉答弁は怪しいのでは、ということになります。@Gakuwahikari @tetteikaikyou
2012-06-09 15:21:15芦部信喜『憲法』第三版から「文民」の項目を引くと「内閣構成員の資格として、憲法は、内閣総理大臣その他の国務大臣は文民でなければならないという要件と、国務大臣の過半数は国会議員でなければならないという要件の二つを定める(六六条二項・六八条)。」続くよ。
2012-06-09 15:23:10承前。「ここにいう「文民」の意味については、(1)現在職業軍人でない者、(2)これまで職業軍人であったことがない者、(3)現在職業軍人でない者と、これまで職業軍人であったことがない者、という三つの説がある。」続くよ。
2012-06-09 15:24:41言葉の本来の意味は(1)が正しいが、そう解すると戦前の職業軍人も文民ということになるので、憲法九条が軍隊の保持を禁止している趣旨を徹底させる意味から、その後、(2)説が多数説となった(もっとも、職業軍人の経歴はあっても、軍国主義に深く染まった人がなければよい、という見解もあった)
2012-06-09 15:26:51承前だよ。「しかし、自衛隊の成長とともに、自衛官も文民でないとする(3)説が有力になっている。この説は自衛隊の合憲・違憲論とも関係するので、問題がないわけではないが、シビリアン・コントロール(civilian control)の趣旨を徹底しようとする意義は認められよう。」終わり。
2012-06-09 15:28:27ここに引用したのは、あくまでも憲法学者の芦田信喜さんの手になる概説書に著者の見解を交えて執筆当時における多数説を紹介したものであって、これが唯一の正解というわけではないのだけど、これを素直に読むかぎり小泉答弁の「現職じゃなきゃOK」=(1)説はかなり説明不足ということになりそう。
2012-06-09 15:33:17(後述するように、小泉答弁は(3)説のほうが近いかも。)
むりやり理屈を通して芦部本と整合性を取ろうとすれば、多数説(らしい)(3)説の「現在職業軍人でない者と、これまで職業軍人であったことがない者」の最初の職業軍人を自衛官、後続の職業軍人を戦前の職業軍人を別個に指す、というアクロバティックな解釈(笑)を必要としてしまう。
2012-06-09 15:36:45@yunishio 芦部憲法は憲法学では定番中の定番なので、私もそこから大きく外れることなないんじゃないかなと思います。ただ、私も素人なのでw あれから専門家の間でどんな議論が進んだのか、おぐりん先生かモトケン先生のお暇な時にでもお聞きしてみるといいかもです(´・(ェ)・`)
2012-06-09 15:33:55ありがとうございます。92年に出版されたものですから、その後の議論の発展などもありそうですね。RT @Gakuwahikari 芦部憲法は憲法学では定番中の定番なので、私もそこから大きく外れることなないんじゃないかなと思います。…あれから専門家の間でどんな議論が進んだのか
2012-06-09 15:38:43