ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/06/10

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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リュカ @ryuka511

私の仕事は主の見た夢を記録に残す事。支離滅裂さを残しつつ、ある程度筋の通る話に編集して主の記憶に残す。 明瞭過ぎず印象に残る夢に仕立てるのは骨が折れるが楽しい作業だ。何代か主は変わったが人間は面白い。夢の中でも、私という存在がいるという夢を見ているのだから。 #twnovel

2012-06-10 00:02:31
斎藤雨梟@文学フリマ東京11/11【う-40】 @ukyo_an

指が朝痛むの。書き物もしないのにペンだこみたい。それでわかったの。私が夢遊病の時していることも、時々薬がなくなる理由も。あなたの作品、全部私が書いてたのね!と小説家の夫に言ってみると、ペンだこもどきの正体何だったって話?と目をキラキラ。オチくらい自分で考えてよ。 #twnovel

2012-06-10 00:09:36
@KizukCQ

#twnovel 私が住んでるアパートは築ン十年は経っている年代物。そんなボロ家に住んでる女は俺には似合わねえと振られた。悔しくて部屋で号泣していると、いつしか隣から優しげなハミングが。隣人が私を元気づける為に口ずさんでいると気がついたのは暫く後だった。薄い壁に初めて感謝した。

2012-06-10 00:20:28
layback @laybacks

深夜になると家の外で音がする。何かをコロコロと転がすような音。いつもなら西の方角から東の方角へと駆け抜けていく音が今日に限って家の前で止まった。コツリ。窓が鳴る。右手が勝手に伸びていた。カーテンを引くと赤い目をした女が窓に張り付いている。返して、あたしの赤ちゃん #twnovel

2012-06-10 02:56:06
Gabb-- @itisnot

息子が姿を消してもう半年になる。私達夫婦は彼の喪失を哀しみ、そしてまた会えることを祈って、撮り溜めたホームビデオを毎日観ている。映像の中の息子は、一日ごとに指の数を増やしていく。なぜだろう。全ての映像が指にまみれてしまったが、これは息子なのだと、私達は信じている #twnovel

2012-06-10 13:50:48
咲良 潤 #言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

あともう少しだけ一緒にいさせて。時が来たら必ずあの子を手放さなければいけなくなる。その時はそっと、でも必ずこの手は放すから。だからほんのあともう少しだけ。あの子に永遠の闇が訪れるその瞬間まで抱きしめさせて。置いて行く方も置いて行かれる方も辛いものだから。#twnovel

2012-06-10 13:57:59
@tofuhamburg

朝起きると僕は人間だった。くせで布団に包まってたら母親らしき人が学校へ行けという。しぶしぶ登校しても授業が全然わからない。逃げ出した僕は体育館の跳び箱の中へ隠れた。ここは居心地がいい、一生このままでもいいかもと思いうとうとし、次に目が覚めると元のヤドカリだった。 #twnovel

2012-06-10 15:21:59
tokoya @tokoya

#twnovel 隣の家の猫は、雨が降る時は朝から決して外に出ない。だから庭に猫がいる時は晴れ、いない時は雨だ。愛想のない猫だが、役に立つ。でも今日は庭に姿が見えなかったので、傘を持って出たのに一日快晴だった。その次の日も、次の日も。そして私は隣の家を訪ねた。お線香をあげる為に。

2012-06-10 16:49:29
@mimimdr

世界をひとつに!そのスローガンで統一された世界では多様性が悪とされ、文化が、芸術が、言語が消滅した。唯一の価値観によって平和を保つ絶対の世界で、死期を悟った作曲家は失われた母語の歌を紡ぐ。エスペラントしか知らぬ若い警官らが青ざめて彼の口を封じに来た。世界を一つに。#twnovel

2012-06-10 17:43:07
かりー @madam_carry

雨の日の来客。いっちゃってください、そう強い声に圧されて腰までの長髪を襟足で切り揃えた。長い細い糸が手の中でずしりと重い。彼女の決意のほとんどは私の手中。もっと、と言うから、私は鏡越しに微笑んだ。次はすいていきますね。外の雨が一層強まった気がした。 #twnovel

2012-06-10 18:26:52
たくわん @takuwan_takusan

旅先で偶然知り合った僕たちは、その晩、酒を酌み交わした。お互いの歳がわかると、彼はそれまでとは打って変わって、気さくに話しかけてきた。「そっちもタメぐちでいいからさ」という彼の言葉に、僕は口ごもった。僕の顔は赤くなっていないだろうか。店には夕陽が差し込んでいた。 #twnovel

2012-06-10 18:52:41
ちゃーち @churchdevil

王都ではこのごろ魔法使いの事故死が増加している。炎使いのサト侯爵は寝ている間に誤って魔法を発動してしまい自宅ごと焼死、雷使いのゴダ教授は風呂で誤発動を起こし感電死。王都魔法警察および魔法庁ではこれに伴い、魔法の取り扱いに注意を払うよう全国の魔法使いに呼びかけた。 #twnovel

2012-06-10 19:13:10
ちゃーち @churchdevil

「人間界にはチョコフォンデュなる娯楽食物があると聞きマシタ。ワタシたちも試してみまショウ」と言うイオルさんの呼びかけで、このたび当店ではシルバーフォンデュを始めました。熱動力炉で銀を溶かし、ポンプ構造により噴水を作ります。鉄クズにこれを絡ませて食べるのです! #twnovel

2012-06-10 19:19:26
すわぞ @suwazo

#twnovel 蝶試合を観戦した。選手たちはグラウンドの思い思いの場所に立ったり座ったりしてじっと佇む。蝶が放たれる。蝶が選手の体のどこかに触れれば1ポイント。チームの総合点で争う。選手たちは決して自分から蝶を追ってはいけない。ただ蝶を待つ。待ち続ける。ひらひら。蝶がひらひら。

2012-06-10 20:08:47
二月大笑 @unpeu_G

金持ち達は躍起になって金の消費を争った。外れない首輪で飾っても自身の価値は変わらない。食べたり肌に刷り込んでも吸収されるわけではない。ここに商機を見いだした医療がそれを解決した。金を液体状にして血液の代わりに流すのだ。戻せないにも関わらず今この施術は大人気だ。 #twnovel

2012-06-10 20:38:11
@KizukCQ

#twnovel 「今夜君のハートを盗ませて戴きます」大胆にも予告してきた彼。だけど連絡なんて何も無し。皮肉を込めてもう寝ますとメールした。「今日一日僕のことばかり考えていてくれてありがとう。よい夢をね」やられた。思い続けた私は、眠れば必ず彼の夢を見る。夜はそう、これからなのだ。

2012-06-10 20:50:57
おはなし手帖 @ohanasitecho

【チカ】 チカは橋を渡る。 星の眠る谷へ架かる吊橋だ。 キイ、キイ。 星の寝言を靴で踏む。 ギイ。 チカは橋の真ん中でしゃがみ、チカチカ光る目で底を覗く。 青く黒い谷底で暗い星がうなされている。 チカはまばたきで光を落とし、暗い星の夢をきらめかせようと試みる。 #twnovel

2012-06-10 20:53:02
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 「昔、何にでも変身できる男がいた」「博士。突然昔話を始めないでください。私にも準備というものがあります」「男はあるときから滅多に変身しなくなる。それからというものの彼は猫の姿で過ごした」「へぇ。それはどうしてですか」「どうしてだったかな」「思い出してくださいよ」

2012-06-10 21:06:27
七歩 @naholograph

私の夢をいつも貴方は否定した。絵本作家も図書館司書も考古学者も何もかも。もっと手堅く生きなさい。もっと現実考えて。だからこの先夢はみない。けれども最後にひとつだけ、伝えてみたい夢がある。貴方のようになりたいの。もしそのように伝えたならば、母は何と言うのだろうか。#twnovel

2012-06-10 21:15:22
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 私の彼は時計職人。ただの時計ではなくて、時間を律する宇宙時計。操作すれば時の流れは思うままだ。「私的に使うのはご法度だよ」生まじめすぎる彼だけど、私は知っているの。毎月のメンテ日に、時計を止めた彼が私に思う存分キスしてること。唇に残るオイルの匂い、私は大好きよ。

2012-06-10 21:27:07
ふじの @fujino0

「好奇心は猫を殺すよ」「猫が死ぬのは心配の所為だ」扉の前で睨み合う。どちらも金槌を持っていないことが救いだ、叩くべき石橋にはならずに済む。「何にせよ」鋭い眼を伏せて、お前は溜め息を吐いた。「女も虎もいないことだけは確かだね」ならば問題はないと、俺はノブを握った。 #twnovel

2012-06-10 21:46:20
日向日影🍊📖@文化系物書きVtuber(HUB) @hyuugahikage

#twnovel 僕の部屋の押し入れの奥に、開けたことがない大きな箱を見つけた。苦労して開けると中には僕が入っていた。僕は目を覚ますと箱から出て、驚き固まった僕を箱に押し込み厳重に蓋をした。廊下からのいい匂いに気づく。今日はカレーだ。階段をかけおり居間へ。僕の新生活が始まった。

2012-06-10 22:14:44
はたなか茶 @cha_hatanaka

愛してる?死の床で、母は父だけを見つめていた。アイシテルヨと父は囁く。その優しさに、嘘に。ありがとうと言い母は息をひきとった。私も、ありがとうと言う。8年前、父が我が家に来た時から、誰を見ていたかを知っていた。崩れそうな顔をして。愛してる?と彼は目で問うてくる。 #twnovel

2012-06-10 22:18:03
tokoya @tokoya

#twnovel 地上から遠く離れた場所で、彼は独りだった。小さな丸窓からは、漆黒しか見えない。地上とは音声が繋がっているが、何かトラブルがあっても、頼れるのは自分だけだ。彼は気密服を着用すると、ハッチを開いて船外へと身を乗り出した。人類初の偉業、マリアナ海溝へ足跡を標すために。

2012-06-10 22:24:51
ショウ @SHO_Y

この魔法のハンカチを使えば、誰でも簡単に人目を引くことができる。それでも彼女にとっては、ただのハンカチとしか思えなかった。「嘘つき!」少女はハンカチを放ると電車を降りた。男も慌てて後を追った。後から乗り込んだ乗客は皆、車内に落ちているハンカチに目を奪われた。 #twnovel

2012-06-10 23:07:37