ツイッター小説 『夜中の・ラブレター』

別れて4年。彼との距離は、測れないほど離れてしまった。 自分でも何がしたいかわからない。 ただ、彼に私の居場所を知らせる必要がある。 と、自分勝手に思うのである。 続きを読む
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(S.Fujita) @highdiox

彼は他人の意見で染まっていた。大衆的な意見を集約して身内に拡散していく。言い方が悪いけどコンピューターウイルスみたいな人だった。私は表面的には友好的に。少しずつ距離をとって離れ拒絶した。あれから4年。本来の時間軸とは逆ベクトルで私の心は彼を急速に求めるようになった。その理由は彼の

2010-06-27 01:24:33
(S.Fujita) @highdiox

blogにあった。私のお気に入りのブックマークに残してあった彼のアドレス。別れた後も年に数回、月に数回、そして今では毎日覗くようになった。彼は今日あったことを一生懸命文字に残していた。blogの内容は段々と成長していた。自分の意見、視点を少しずつ入れるようにしていた。でも私は少し

2010-06-27 01:28:59
(S.Fujita) @highdiox

違和感があった。左下で動いているはずの心臓が右にずれたように不確かな。少し考えるとこれは嫌悪感という奴だった。賞味期限が切れたパンを購買で買わされたような。実にくだらなく、個人的な。そうか、私は彼が狂っている事と決めつけて自分をきちんと見ていなかったんだ。彼の欠点をおかずにずっと

2010-06-27 01:49:39
(S.Fujita) @highdiox

笑いものに、下に見ていたんだ。私は鏡を探した。大きな鏡は部屋にない。手鏡を引き出しから見付け出してのぞいた。いつもの私だ。いや、4年以上、まったく変わらない私だ。私は彼に会いたくなった。「今更何を」と思われるかもしれない。だから、私はメールアドレスを変更した。(続く)

2010-06-27 01:54:49
(S.Fujita) @highdiox

http://ow.ly/23Mzk 「メアド変更しました、登録よろしくお願いします。」メールを送信する前にこの後起こりうる展開を考えてみた。1、「了解」と短く返信 2、無視 3、メーラーデーモン(宛先不明)4、「久しぶり…」から始まる長文展開。そして私は送信ボタンを押した。

2010-06-28 01:00:04
(S.Fujita) @highdiox

手が微かに震えていた。私は携帯を閉じた。スグに結果なんかこない。しばらく枕の下に隠すことにした。その間にお風呂に入ろう。もう2時だ。明日も早い…。お風呂から戻ってきて、枕の下から携帯を取り出す。思いがけないオチが待っていた。枕で電波を遮断された携帯電話は「圏外」と表示されていた。

2010-06-28 02:00:05
(S.Fujita) @highdiox

「バカね…」本当に馬鹿だ。大体こんな時間に彼は起きていないだろう。もう大学生じゃない。彼も(たぶん)立派な社会人だ。今頃夢のなかで息をしている……。私は一応センターに問い合わせをする。メールは1件。全身の毛穴がヒュンと縮まった。メールを受信すると、私はその内容に声を失った。(続)

2010-06-28 02:40:02
(S.Fujita) @highdiox

http://ow.ly/247Nt メーラーデーモン。そう、私のメッセージは彼に届いていなかった。私は愕然とした。しかし、拒絶したのは私の方が先だ…。私の方が…さき?そうだ、思い出した。とんでもないミスだ。私は1年前にメアドを変更していた。私は彼に教えていない。つまり、その後に

2010-06-29 02:45:04
(S.Fujita) @highdiox

その後に彼がメアドを変更していれば伝えられるはずがない。裸にタオルのまま、私はベッドに仰向けに倒れ込んだ。私の左脳はポジティブに語り出した。彼が私にメアド変更のお知らせメールを送ったが、届かなかったので諦めた。そう都合良く、解釈した。彼がどんどん遠くに行ってしまう気がした。

2010-06-29 02:50:03
(S.Fujita) @highdiox

私は反射的に見失わないように追いかけだしている。自分から逃げたくせに。逃げる相手(正確に言えば私がつくりだした影みたいなもの)を全力で追いかける。いじきたなく。舌を出しながら。「……まるで犬ね」 枕元のデジタル時計は午前3時過ぎを指していた。実に皮肉が似合う時間帯だった。(続)

2010-06-29 03:05:06
(S.Fujita) @highdiox

http://ow.ly/24LDD  うかつにもそのまま寝てしまった。梅雨入り中の蒸し暑い夜とは言え無防備すぎる。窓から痴漢が入ってきたらどうしたものか。なんて心配はいらない。ここは五階。もし、寝ている間の不純行為があったとすれば犯人は一人、スパイダーマンだ。

2010-06-30 04:45:02
(S.Fujita) @highdiox

私はトビー・マクガイアの顔を思い浮かべて「悪くない」とも思った。それにしてもこの「会いたい」という気持ちはなんなのだ。“ニシノカナ”の口癖でも移ったのだろうか。口にしておいて、行動を起こさないなんてダメな人間の模範じゃないか。口だけ人間。有言不実行型。そうだ本田君を見習わなきゃ。

2010-06-30 04:50:11
(S.Fujita) @highdiox

サッカーをみよう。今、世間はワールドカップブームだ。テレビをつけてみるとスペインVSポルトガルという試合がやっていた。「イベリア半島対決ね」彼女はヨーロッパの地理には少し詳しかったが、サッカーのことは全くだ。しかしサッカーのルーツについては興味があった。なぜ手を使わないのか。

2010-06-30 05:00:14
(S.Fujita) @highdiox

奴隷が手を縛られたまま石ころを使って遊びはじめたのがはじまり。と、彼女は信じていたが、そういう説は全くない。似たようなルーツでカポエラはあるが、アレは格闘技だ。窓の外が明るい。もう寝よう。彼女の遅い夜は、平凡に終わった。今日は歯科助士のバイトがお休みの日だ。ゆっくり眠れる(続)

2010-06-30 05:15:03
(S.Fujita) @highdiox

http://ow.ly/25ey3 私はコメント欄で彼に私の存在とメアド変更の旨を伝えようと考えた。 が、彼のblogはいつもと違った。表現がまるで違う。イレギュラー。まるで誰かが代筆したように。コメント欄で、どう知らせよう。彼と私しか知らない言葉を見つけなければならない。

2010-07-01 01:45:03
(S.Fujita) @highdiox

「アンジェロ」私が飼っていた犬の名前。イタリア語で天使という意味を持つポメラニアン。道で拾って、大事に育てて、病気で4年前に死んだ。彼も彼なりの優しさで世話してくれた。ハンドルネームは決まった。さて、どう書こうか。彼のblogから句読点が消えている事をいつの間にか忘れていた(続)

2010-07-01 01:50:04
(S.Fujita) @highdiox

http://ow.ly/25Jbj  「イレギュラーには意味がある」そう言っていたのは彼だ。月のない夜空。コンビニのシャッター。電波が届かない携帯電話。付録が主役の雑誌。鎖につながれた猫。だからそのサインを私は無視しちゃ駄目だった。だめだったんだ。(続)

2010-07-02 01:25:03
(S.Fujita) @highdiox

http://ow.ly/26FRI アンジェロという名前で私の言葉を彼のblogに残した。それは彼に対するメッセージではなく、あくまでも彼のblog記事に対するコメントだ。はじめましてと名乗るここもなく。ごく、自然に。書き込んだ。送信ボタンを押す前に、なんども推敲した。これまで

2010-07-04 01:00:08
(S.Fujita) @highdiox

になく、慎重に。小学生の時に1回だけやったピンポンダッシュをする前のような緊張感を感じた。私はコントレックスの水を一口含んだ後に、句読点がないblog記事が消えていることに気がついた。彼のイレギュラーは消された。少なくとも目の前からは。私は考えられる可能性を思いめぐらせた。そして

2010-07-04 01:05:07
(S.Fujita) @highdiox

いくつかの仮説を立ててみた。ひとつ、ひとつ当てはめて意味のある仮説を拾っていく。「イレギュラーには意味がある」彼の言葉を借りれば、今起きていること(少なくとも私が感じてる違和感)には意味がある。そしてイレギュラーは起こそうとして起こるべきでもあると私は付け加えた。(続)

2010-07-04 01:09:50
(S.Fujita) @highdiox

http://ow.ly/26PL6 つまり、“それ”は意図的に行われた。例えば誰かにメッセージを送るとか。モールス信号のように、そのルールを知っている者のみに伝えられる何か暗号的な手段。句読点の無い文章。文節の区切り方にヒントが……?たどり着いた仮説。あの文章の中に、彼からの

2010-07-05 01:50:02
(S.Fujita) @highdiox

メッセージが含まれている。しかし、もう文章はない。失われた。……いや、キャッシュがある。サーバーにはまだ残っているはずだ。証拠は完全に消せない。人間の記憶と一緒で、脳みそのどこかに保管され、取り出されるのを待っている。か、忘れ去られることを望んでいる。彼の意図はどちらだろうか。

2010-07-05 01:55:02
(S.Fujita) @highdiox

悪魔で仮説だ。そう。これは私の都合世界の中での解釈。でも進むしか無い。私はいつもの手段でキャッシュを呼び出し(それは恐るべきほど単純な方法、RSSを大いに利用した)文章を私のPC内に保存した。記憶の移動(寧ろコピー)は完璧だった。しかし、解読のアイデアは浮かんでいなかった。(続)

2010-07-05 02:00:04
(S.Fujita) @highdiox

http://ow.ly/278W1 「少年犯罪の報道について」彼は熱心に語りだした。メディアを批判したいらしい。しかし内容は二番舌だ。どこかで聞いたことがある。“悪意のある演出を辞めよ”一端のblogが何をいってんだか。と私は意地悪になった。内容はどんどん過激になっていき、

2010-07-06 02:15:02
(S.Fujita) @highdiox

最後の方は私も読み飛ばした。彼は“不愉快のスタンプ”を押しているようだった。消印はもちろん彼の名前が書いてある。どこかで読んだことがある内容にそのスタンプを押して、彼は彼なりの個性を誇示する。それが彼なりのストレス発散あるいわ、リハビリなのかもしれない。アンジェロに返事はなかった

2010-07-06 02:20:02
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