政治学における理論と方法

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@BlueTreeYou

色々な理論(その妥当性は問わず)を学ぶにつれて、ある問題を分析する場合に重要であろう変数をピックアップする作業に慣れてきた気がする。これが分析力というものなんかな。それと同時に既存の理論に思考を規定されているため、既存の理論が取り扱っていない重要な変数を見逃しているわけか。

2010-06-26 02:53:18
Daina Chiba (千葉 大奈) @dynamanTW

.@BlueTreeYou 「理論=変数のリスト」と誤解している人が政治学者にも結構多くいるので注意。理論Aが挙げる変数群aと理論Bが挙げる変数群bを一緒くたに1つの統計モデルにぶち込んで、aが統計的に有意でbは有意じゃないから理論Aの勝ち、みたいなのは駄目です

2010-06-26 03:32:05
Masahiro Yamada @myamadakg

ここもう少し説明してほしいな^^。 QT @dynamanTW: .@BlueTreeYou 理論Aが挙げる変数群aと理論Bが挙げる変数群bを一緒くたに1つの統計モデルにぶち込んで、aが統計的に有意でbは有意じゃないから理論Aの勝ち、みたいなのは駄目です

2010-06-26 06:41:51
Daina Chiba (千葉 大奈) @dynamanTW

理論の想定する(観察されない変数間の)因果関係に基づいて、(観察される変数間の)相関関係を予測し、それを観察データで検証する一連の手続きをきちんとやろうとすると、理論ごとに異なる回帰式が必要とされる(ことが非常に多い)からです。@myamadakg @BlueTreeYou

2010-06-26 08:07:01
Daina Chiba (千葉 大奈) @dynamanTW

何も考えずにYをaとbで重回帰して、aの係数がaの因果効果、bの係数がbの因果効果、...というような解釈が成り立つケースは滅多にない、と言いますか。@myamadakg @BlueTreeYou

2010-06-26 08:09:19
Masahiro Yamada @myamadakg

その場合、理論間の優劣はどのように定まるのでしょうか? QT @dynamanTW: 理論ごとに異なる回帰式が必要とされる(ことが非常に多い)からです。@BlueTreeYou

2010-06-27 08:51:28
Daina Chiba (千葉 大奈) @dynamanTW

理論間の優劣を決めるのは実証だけではないですし、1つの論文で (もっと言えば1つの回帰分析で)2つの理論の雌雄を決する必要も ないと思うのです。@myamadakg @BlueTreeYou

2010-06-27 10:50:58
Daina Chiba (千葉 大奈) @dynamanTW

国際政治学の論文でたまに見かける駄目な計量分析の例:リアリズム(という「理論」が昔あった)が挙げる変数のリストと、リベラリズム(同上)が挙げる変数のリストを一緒くたに右辺に入れ、何かお好みのイベント(戦争とか経済制裁とか)を左辺に入れ、重回帰して有意だった方の勝ち、というもの

2010-06-27 10:52:13
Daina Chiba (千葉 大奈) @dynamanTW

こういうタイプがなぜ駄目かというと、因果メカニズムがきちんと考えられていないから。たとえば、「媒介変数を右辺に入れてコントロールする」などという教科書レベルの誤り(KKVで解説があったはず)を犯していたりする。

2010-06-27 10:53:11
Daina Chiba (千葉 大奈) @dynamanTW

2つの理論について実証でばしっと優劣をつけることに成功している政治学の論文ももちろんあります。これを綺麗にやる1つの方法は、外生変数xが結果変数yに与える効果について、2つの理論が正反対の予測をするような事例を見つけ、yをxで回帰すること。

2010-06-27 10:53:53
Daina Chiba (千葉 大奈) @dynamanTW

この場合、x以外に右辺に入れてコントロールするのは、対立理論が挙げる変数のリストではなく、(本当はあまり外生的じゃない)xについてのconditional ignorability仮定をもっともらしくするような変数群。

2010-06-27 10:54:31
Daina Chiba (千葉 大奈) @dynamanTW

国際政治学だとSchultz (2001, IO) http://ht.ly/23INf がまさにお手本。僕らの論文 http://ht.ly/23INF でも近いことをやっているが、優劣を付けること自体が目的ではないので、「負けた」方への配慮から、その辺りトーンダウンしてある

2010-06-27 10:57:55
Daina Chiba (千葉 大奈) @dynamanTW

ずいぶん長々と書いてしまった。政治学では、「計量分析では因果関係は分からない」とか「少数事例のケーススタディなら因果関係が分かる」とかいうレベルの無知・誤解がいまだに罷り通っている一方、質的研究の方法論もずいぶん高度に洗練してきているようだ。その方面は不勉強で殆ど知らないけど。

2010-06-27 11:03:26
@BlueTreeYou

@dynamanTW 僕はなんか自然と計量と事例の両方によって実証する方が信頼性が高いと思ってたんですが、実際のところ計量と事例を組み合わせるという実証の利点は何なのですか?

2010-06-27 11:13:02
Daina Chiba (千葉 大奈) @dynamanTW

組み合わせの利点はあまり無いんじゃないかと。一人の研究者が一本の論文を書く上で、両方やろうとしても、紙幅をオーバーしたり方法論の勉強が足りなかったりしてどちらも中途半端になる危険性が高いと思います。@BlueTreeYou

2010-06-27 11:35:27
Daina Chiba (千葉 大奈) @dynamanTW

計量にしろ事例にしろ、どちらも観測データの分析である(実験データではない)以上、似たような制約におかれています。いずれの場合でも、因果関係は頭の中(理論)からくるのであり、目に見えるのは相関関係だけです。@BlueTreeYou

2010-06-27 11:42:00
Daina Chiba (千葉 大奈) @dynamanTW

もちろん、両者の制約条件の違いを互いに補いあうことは可能でしょうが、それは得意とする方法論の違う複数の研究者が協力してやれば良いことであって、「一人でどちらも」やる必要はないんじゃないかと。@BlueTreeYou

2010-06-27 11:42:28
Daina Chiba (千葉 大奈) @dynamanTW

この2つの方法論の架橋について、日本語で読めるものとして @sunaharayさんのhttp://ht.ly/23Je9 がお勧めです。@BlueTreeYou

2010-06-27 11:48:35
@BlueTreeYou

@dynamanTW 納得です。共同研究というのは理論だけでなく方法論に関しても利点があるわけですね。そうするとMansfield & Snyderの共著は理論というより方法論での協力だったのかもしれませんね。

2010-06-27 11:51:58
tetsuki tamura @ttya70

@dynamanTW すみません、無知ゆえのお尋ねですが、「計量分析では因果関係はわからない」ことはない、という時の「因果関係」は「因果メカニズム」も含めてわかる、という意味なのでしょうか。それとも、KKVが言っているような意味での「因果効果」がわかる、という意味でしょうか?

2010-06-27 12:03:56
Daina Chiba (千葉 大奈) @dynamanTW

@ttya70http://ht.ly/23Jp8 を踏まえた上で)因果メカニズムも含めて分かるという主張です。 反証が上がるまでは、とりあえず「分かった」ことにしておくと言いますか。

2010-06-27 12:10:07
tetsuki tamura @ttya70

@dynamanTW 「因果メカニズム」について理論を作ったうえで、「因果効果」が計量的に確定できれば、「メカニズム」も解明できた、ということになるでしょうか?

2010-06-27 12:05:51
Daina Chiba (千葉 大奈) @dynamanTW

@ttya70 先ほどの僕の投稿と入れ違いで読みました。まさにそういうことです。

2010-06-27 12:13:05
tetsuki tamura @ttya70

@dynamanTW 僕はprocess tracingで因果メカニズムを明らかにする、というのもアリなのではと思っていたのですが、process tracingはあくまで「記述」だ、と先日某先生に言われたのでした。

2010-06-27 12:07:57
tetsuki tamura @ttya70

@dynamanTW で、そうだとすると、結局、質的研究でも「因果メカニズム」を解明できるとは言えず、物事の連鎖を詳しく「記述」することができるだけ(強いて言えば、whyではなくhowですか)、ということになりそうに思います。となると、「メカニズム」って解明できるんだろうかと。

2010-06-27 12:09:25