CKさんの「黒い羽の娘(仮」まとめ俺用

いいねーーーー!! とぎゃったーはじめて練習がてら俺用 2012/6/22:続編追加 2012/6/28: 続きを読む
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CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

こんこん なんだろう、窓から妙な音がする。何か飛んできた看板か何かが当たっているのだろうか「……い、します…・・・」 声が聞こえる。「入れてください、お願いします」間違いない。窓の外から聞こえる。カーテンを開けるとびっしょり濡れた女の子がベランダに立っていた。

2012-06-19 22:05:36
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「あの、お部屋に入れてください、お願いします!」 言われるがまま、窓をあけると女の子は僕の部屋に飛び込んでくる。 そしてようやく僕は彼女が二階のベランダに立っていた理由を理解した。 髪と同じ、漆黒の翼がその背にあった。

2012-06-19 22:10:38
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

彼女の体、着ているもののいたるところからぽたぽたと水滴が垂れ、あっという間に床に大きな水たまりをつくる。 「あ、あ、どうしよう……すいません、床濡らしちゃっって……」 彼女はわたわたと拭くものを探すが、見たところ彼女の持っているものはすべてびしょびしょに濡れているだろう。

2012-06-19 22:16:04
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「とりあえず、タオルと雑巾持ってくるから」 洗面所に駆け込み、バスタオルを二枚と雑巾を何枚かバケツにぶち込んで部屋に戻る。 彼女はどうしたら良いのかわからないようで、怯えた視線で僕の部屋の中を見回していた。 「はいどうぞ」 「あ、ありがとうございます!」

2012-06-19 22:18:30
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

彼女が体を拭く様子を、僕は黙って見ていた。 体に触れるのは失礼だろうし、嫌がられそうなのでやめた。 「あ、あの……」 彼女は体をあらかたふき終わると、恥ずかしそうにまだ使っていないバスタオルをこちらに差し出す。 「羽根の……後ろ側……ふいてもらえますか?」

2012-06-19 22:23:52
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

最後の方はほとんど聞きとれなかった。 「わかった」 そう言うと彼女の後ろに回り、羽の付け根にタオルを軽く押し当て、端に向かってゆっくりと滑らせる。 濡れていると真っ黒に見えていたが、タオルで拭くと単純な黒ではなく、紫や緑や青の入り混じった複雑な色であることがわかった。

2012-06-19 22:27:55
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「綺麗だなぁ……」 「えっ?」 うっかり口からこぼれてしまった言葉に彼女が振り向き、視線が合う。 吸い込まれそうな深い藍色の瞳だった。 「あ、いや……綺麗な羽根だなって」 「ありがとう、ございます……」 気まずい沈黙。 左の羽根にタオルの乾いた端を押し当てる。

2012-06-19 22:31:39
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「はい、拭き終わったよ」 「どうも、ありがとうございます」 彼女は姿勢を正してお辞儀する。 「じゃ、そこちょっとどいてくれるかな? 今床を拭くから」 「……ぅ? あぁー! すいません! ごめんなさい!」 水たまりの存在を思いだした彼女は慌てて飛び退く。

2012-06-19 22:37:38
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「……ふぅ」 床を拭き終わった雑巾をバケツに放り込み、洗面所に戻す。 「で、君はなんで僕の部屋のベランダにいたの? っていうか……どちら様?」 冷静に考えると実際怖い。こんな嵐の夜に背中に羽根の生えた女の子が僕の部屋にいる。 そして僕に有翼人の知り合いはいない。

2012-06-19 22:41:18
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「え、えーっとわたし、こういうものです!」 彼女はこれまたびっしょり濡れたトートバッグから手帳を取り出して僕に渡す。 「桜田……かなめさん? 学生なんだ」 「はい」 手帳に挟まれた学生証には『普通科2年 桜田 かなめ』と書かれている。

2012-06-19 22:52:59
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「で……桜田さんはなんで僕の部屋に?」「えっと、学校の帰りに……風に煽られてしまって、私飛ぶの得意じゃなくて……えっと、その……」なんとなく彼女が言いたいことは分かった。学校の帰りに風に煽られて着地もままならず、とりあえず僕の部屋のベランダで風が落ち着くのを待っていたのだろう。

2012-06-19 22:57:01
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「くしゅん!」 手帳を返そうとした時、彼女は全身を震わせてくしゃみをした。背中の羽も大きく広がる。 「あ、体冷やしたらまずい。シャワーとタオル使っていいから!」 彼女を風呂場に案内して部屋に戻る。何で早くそれに気づかなかったんだろう。 つくづく気の回らない自分に嫌気が差す

2012-06-19 23:02:06
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

いすに座り、桜田さんが出てくるのを待つ。 やがて断続的に聞こえていたシャワーの音が止まり、扉の開く音がした。 「あの……」 扉から顔だけを出した桜田さんが不安そうな目をこちらに向けてくる。 「何か……羽織るものでいいので、貸していただけませんか?」

2012-06-19 23:07:16
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「え、えーっと……とりあえず、これ!」 そう言ってなるべく彼女の方を見ないようにしてワイシャツを渡す。首のサイズを間違えて買ったせいでほとんど着ないで畳んでおいたものだ。 「ありがとうございます!」 桜田さんはひったくるようにワイシャツを受け取るとドアの向こう側に引っ込む。

2012-06-19 23:12:15
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「あ、あのう……」 再びドアが開き、桜田さんがドアを盾に僕を呼ぶ。そういえば僕の名前は教えてなかったな。 「化していただけるのは嬉しいんですけど、羽根が引っかかちゃって、着れないんです……」「あぁ、いいよこれで切っちゃって。どうせ着ないから」 さっきと同じようにハサミを渡す

2012-06-19 23:17:26
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

ちょきちょきと、ハサミの音がしばらく続き、ドアの向こうから小さく 「できた!」 という嬉しそうな桜田さんの声が聞こえた。ドアが開き、桜田さんが入ってくる。 「ありがとうございます! 羽根を通す穴、出来ました!」 そう言うと彼女は嬉しそうに僕の前でくるりと回ってみせた。

2012-06-19 23:22:44
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

背中の翼の生み出す乱流でふわりとワイシャツの裾がまくれ上がり、形の良いお尻がその影からちらりと覗いた 「!」 「……っ! み、見ました!?」 少なくとも前は見えなかった。うん。だから僕は見てない。 桜田さんは顔を真赤にして裾を押さえるが、今度は胸の膨らみが襟から覗く。

2012-06-19 23:27:56
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

刺激的すぎる。これで我慢しろというのは割と拷問めいている。 本人が危ないことを自覚していないからなおさらたちが悪い。 「で、でも私なんかの裸が見えたって、嬉しくないですよね。はは……」 桜田さんは自信なさげに笑う。僕としてはむしろすごく嬉しいのだけれど。

2012-06-19 23:34:27
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「私、飛ぶのも下手だし、お兄さんにも迷惑かけてばっかりで、着るものまでいただいちゃって……迷惑ばっかりかけて。なにかお礼でも出来ればいいんですけど、何もできないし……」桜田さんの表情が沈むと、一緒に羽根も縮こまる。「いや、いいんだよ。それよりおうちの人に連絡しなくていいの?」

2012-06-19 23:42:47
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

一応学生だし、このまま泊めてしまうと主に僕がマズイ。 さすがにこの若さで前科つき、しかもその手の前歴がつくのはこのご時世非常によろしくない。 「親は、居ないんです……」 「あ、ごめん、悪いこと聞いちゃったね」 「いえ、いいんです。よく聞かれますから……」

2012-06-19 23:48:36
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「あ、あれ? おかしいな……」 桜田さんの目から涙がこぼれ、シャツに染みを作る。 「なんでだろう、こんなに優しくしてしてもらったの久しぶりで。涙が、とまんない……どうしよう」ぽたぽたと白い頬を涙が伝う。 両手で涙を拭おうとする桜田さんが、なんだかとても弱々しい存在に見えた。

2012-06-19 23:52:14
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「!」 桜田さんをぎゅっと抱きしめる。やがて彼女は僕の胸に顔を押し付けて大声で泣いた。 「ひっぐ、うぇっ、うわああああん!」 「よしよし」 すすり上げながら泣く桜田さんの頭を優しく撫でる。固体石鹸で洗ったのだろうか、つややかな黒髪から甘い匂いがした。

2012-06-20 00:00:10
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「落ち着いた?」 十分ほどそうしていると、桜田さんはゆっくりと顔をあげた。 「くすん……はい、ありがとうございます」 そう言うと桜田さんは僕に笑いかけた。桜の花が開くような、明るい笑顔だった。 理性の最後の安全装置がはずれ、彼女の桜色の唇に自分の唇を押し当てる。

2012-06-20 00:08:25
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「~~っ!」 「ごめん、嫌だった?」 「い、いきなりだから! ファーストキスの味、わからなかったじゃないですか!」 桜田さんはバラのように顔を赤くして僕を怒鳴りつけた。 そんなこんなで僕と桜田さんの奇妙な共同生活は始まったのだった (つづく?)

2012-06-20 00:09:45