ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/06/19

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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かるくの @smnstuff

#twnovel 被災地のボランティア受付会場。受付を待つ長い行列。静寂の中けたたましく響く爆音。でかい羽をつけた水色のワンボックス。「やじうまか」「早くどっか行ってくれ」祈る人々。停車するワンボックス。降りてくるヤンキー。寝袋を背負い、スコップを持ち、汚い長靴を履いたヤンキー。

2012-06-19 00:44:55
女子高生風タチバナ @Tachibanashi

「ウォーリーをさがせ!」をお父さんに買って貰った。お父さんは「ウォーリーが見つかったら帰ってくるよ」と言って旅に出た。あれから10年経ったがお父さんは帰ってこない。全部みつけたのに…。最後のページがお父さんに破かれていたと知ったのは、それから10年後のことだ。 #twnovel

2012-06-19 00:45:26
千早 @tatsuya_chi

麺つゆは怯えながらも胸の高なりを抑えることができなかった。素麺が入ってくる…この時をどんなに待ちわびたことか。「本番はこれからだ」麺つゆは山葵の激しい攻めに晒され、氷を入れられ器を濡らしていた。ゴマ、葱…薬味たちの陵辱は激しさを増す。「早く素麺を入れて…」 #twnovel

2012-06-19 01:55:16
雨音 @candypeal

私が物心ついた頃には既に、父の頭には弾丸が埋め込まれていた。それは夫婦喧嘩の果てに母が撃ったもので、父の中に留まった弾は甘えん坊の母そのものだ。お前は母さんに似たな。母の葬式で呟いた父の言葉の真意を、私だけは理解できる。静かに引き金に指をかけ父に向け、そして。 #twnovel

2012-06-19 02:40:45
layback @laybacks

少女は一人浜辺に座り、海に沈む夕陽を見ていた。そろそろ帰らないとご両親が心配するよ。そうね。少女は麦わら帽子を僕に手渡した。貴方にあげる。もう夏は終わりだから。また来年があるだろう? 少女は悲しそうな目をして首を横に振った。もう来ないわ。もう二度と夏は来ないの。 #twnovel

2012-06-19 06:04:28
七歩 @naholograph

僕に小さい執事がついた。「雑事はお任せを」「それは私が」「ご主人様は価値ある事を」呼吸以外することがない。価値あることって何?「恋や学問でございますか」「執事彼女いる?」「私のことは」「恋の勉強」「お、おりません」「お茶にしようか」今日の紅茶はいつもより美味しい。#twnovel

2012-06-19 07:56:08
藤原ヒヨリ @HiyoriF101

傘に呪いをかけた。雨の時期には欠かせない、盗まれても必ず戻ってくる呪いだ。見た目はただの傘。錆の浮いた、使い古したただのビニール傘。でも呪いの効果は確実で、その証拠に昨日誰かに持ち去られたこの傘は今日にはきちんと私のもとに返ってきた。新しい赤錆を増やして。 #twnovel

2012-06-19 09:14:08
かなりひこくま @kanarihikokuma

雨の街で傘をさした黒猫と出会いびっくり、見つめてしまった。黒猫は二本足で器用に立ち、やはり器用な前足で黒いコウモリを支えていた。まじまじと見つめたせいだろうか。不機嫌な声で黒猫はこう言った。「あんたも迷信深い方かい。僕は知ったこっちゃないから前を横切るよ。失礼」 #twnovel

2012-06-19 09:54:30
ちゃーち @churchdevil

墓地の引っ越しに伴い、墓地内浮遊霊の僕と柳の木の下地縛霊の彼女は離れ離れになってしまった。距離にして30メートル。それがあまりにも遠い。人魂型通信機や虫の知らせを使って連絡はとれているものの、せっかくの死後婚、互いの成仏目に会えなくなったのはつらいものがある。 #twnovel

2012-06-19 15:14:04
@tofuhamburg

近所にみそ汁の自販機ができた。具材や味噌の選択肢が並ぶ端に「おふくろ」と書かれたボタンがある。そういえば長いことお袋のみそ汁飲んでないな。懐かしさに早速押してみると、出てきたのは味噌とだしの素と一枚の紙。『出来合物ばかり買ってないで、おみそ汁くらい自分で作りな』 #twnovel

2012-06-19 16:50:30
ナコ@文学フリマ東京Q-01 @nakotic

台風だから早く帰りなさい、と言われてコネコが魚屋さんの裏口から出ると、物凄い風と雨でした。「コロッケ下さいにゃあ」この辺りの肉屋さんは、台風の日にコロッケの特売をするのです。シイナさんの分と、二つ。パンに挟んで食べるのです。コネコは台風が、少し好きです。 #twnovel

2012-06-19 18:26:16
七歩 @naholograph

今日はコロッケよ。母がコロッケを揚げると台風がくる。台風だから揚げるのか揚げるから台風なのか。その辺難しいけれど、夏しかコロッケを揚げない母。そういえば死んだ父がコロッケ好きだった。そういえば父が死んだのは台風の夜だった。仏前にあがるコロッケはとても美味しそうだ。#twnovel

2012-06-19 18:26:39
miecha @miechorz

#twnovel 老夫婦の目の前に幼子が落ちてきたそうだ。あたりに人気はないので、老夫婦が預かることにしたのさ。幼子は素直で元気、しかしひとたび機嫌が悪くなると天気が荒れる。癇癪を起こせば嵐だ。途方に暮れる老夫婦のもとに来たのは風神様。「うちの子が御迷惑をおかけしました」だとさ。

2012-06-19 18:58:39
はたなか茶 @cha_hatanaka

無人島に持っていく本を一冊選べと女神が言った。一番お気に入りの本はちょっと厚みが足りない気がした。厚みも面白さも十分な本も、いずれは読み飽きてしまう気もした。飽きてもかまわないくらい好きな本を選ぶのですよと女神が言った。夢から覚めて、すぐに女神にプロポーズした。 #twnovel

2012-06-19 19:05:00
すわぞ @suwazo

#twnovel 竹林を焼き払った翌年、双子の姉妹が生まれた。妹は凡庸で両親に似て、姉は美しく誰にも似ていなかった。貴族や帝までもに求婚されたが姉は全てを退けた。愛しいのは妹だけ。いつか月から迎えの使者が来ることを姉は知っていた。哀しくはない。私の可愛い妹、お前だけは連れてゆく。

2012-06-19 19:23:49
篤。 @ishia2011

#twnovel 今年生まれた子狐は、人を化かす特訓中。木の葉を頭に乗せて精神集中、ぽん!ほら出来た。5回に1回は成功するようになって、鼻高々の坊やは「人間ってこんなのに騙されるなんて馬鹿な生き物だね」母狐はやさしく笑って「それはね、人は〝希望〟という眼鏡で世界を見ているからよ」

2012-06-19 21:01:14
篤。 @ishia2011

ろくろ首は困った。行灯の油を舐めに出たところで、頭が痒くなった。このうなじから耳の後ろをばりばり掻きむしったら、どんなに気持ちがいいだろう。だが伸ばした首はそうそう元に戻せない。畳の上を七転八倒、それでも油を舐めるのだけは忘れずに、耐え切れぬ痒みに「うらめしや」 #twnovel

2012-06-19 21:04:15
キヨシロウ @kiyoshiro_aoi

#twnovel 季節外れの超大型台風に、とある街が文字通り飲み込まれた。多くのビルや家屋、沢山の人々、何もかもが跡形もなく消え去った。台風一過。辺り一面瓦礫の平原となったその真ん中に、古びた図書館だけがぼつんと建っていた。誰もいなくなった街でそれでもなお歴史を遺そうとしていた。

2012-06-19 22:13:18
すみぃ @sumycafe

眠れない夜が続くから、寝る前に白檀の香を焚くようになった。質の良い線香だ。毎晩、枕元に一本、丁寧に点てて床に入る。いつしか習慣になって、まるで儀式のようだとふと思う。人は毎夜死んで、朝に生まれ変わるのだ、なんてフレーズが何かの本にあったっけ。さよなら今日の私。 #twnovel

2012-06-19 22:39:18
@mimimdr

台風は世界中で吹き荒れた。全人類が怯える中、日本人は狂ったようにコロッケを揚げ続ける。コロッケは恐怖した。台風より、非常時に何故かコロッケを揚げる日本人が怖かった。コロッケはたわしと一緒に家を飛び出し、風に攫われ雲に呑まれた。空はたわしに磨かれて急に晴れ渡った。#twnovel

2012-06-19 23:13:02
葦沢かもめ @AshizawaKamome

お気に入りの雑貨店で変な物を見つけた。水晶玉のような形で、中にオレンジの光が揺らめいている。「それは時間を色で教えてくれる色時計です。今は夕方だから夕焼け色なんですよ」感動した私は、早速一つ買ってしまった。ディスレクシアで悩んでいる友人にプレゼントしてあげよう。 #twnovel

2012-06-19 23:42:59
@apecrown

#twnovel かつて高度な文明があったと思われる廃墟から発掘された円盤状の記録機械を解析すると、この惑星の住民たちは日々豊かな食事を味わい、愛情いっぱいの家族に囲まれ、友人と哲学的な議論を行い、無益な戦争を批判し続けていたらしい。牢獄としか思えない小さな部屋の中で、ずっと。

2012-06-19 23:57:22