オペレイション・レスキュー #3

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第二部「キョート殺伐都市」より:「オペレイション・レスキュー」 #3

2012-06-20 11:01:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(あらすじ:ガイオンシティに接する双子山と麓の森が、今、熾烈なイクサの舞台と化した。ヨロシサン製薬の悪魔実験によって生み出されたバイオニンジャを元研究員フォレスト・サワタリが率いるならずものクラン「サヴァイヴァー・ドージョー」が、ついにヨロシサン製薬の標的となったのだ。)

2012-06-20 11:07:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(脱走者たるサヴァイヴァー・ドージョーを身から出た錆と断じ、これを殲滅すべく現れたヨロシサン製薬最強のニンジャ。その名はサブジュゲイター。ヨロシDNAコードを持つバイオ存在を強制服従・洗脳する、特許取得済みの恐るべきジツ「ヨロシ・ジツ」の使い手だ。)

2012-06-20 11:10:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(サブジュゲイターは偽情報でドージョーの者たちを誘い出すと、ヨロシ・ジツで統制したクローンヤクザと新型バイオニンジャを率いてこれを襲撃。ドージョーのニンジャ、ディスターブドは斃れ、フロッグマンは邪悪バイオニンジャ「アサイラム」の餌食となり生死の淵をさまよう。)

2012-06-20 11:16:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(首領フォレスト・サワタリは新入りのセントールとともに瀕死のフロッグマンを連れて包囲網を突破。麓の森の洞穴に身を潜めた。だが彼は再び独り出てゆく。フロッグマンの治療マテリアルと、逃げ損ねて捕虜になったであろうドージョーのニンジャ、ハイドラのために。彼は森の研究施設を目指す。)

2012-06-20 11:27:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(同じ時刻。同じ研究施設を目指す別の集団が同じ日没を見ていた。我らがニンジャスレイヤー。ニンジャ私立探偵タカギ・ガンドー。美しき潜入者ナンシー・リー。三人は悪のニンジャ組織ザイバツ・シャドーギルド本拠地へ侵入する為、ヨロシサン製薬の暗号プログラムを必要としていたのだ。)

2012-06-20 11:34:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ニンジャスレイヤーとフォレスト・サワタリは因縁浅からぬ相手。しかも研究施設を囲む森には恐怖のバイオ植物ニンジャ「ボタニック」が棲む。サブジュゲイターも絡んでくるだろう。オイオイ、ヤバイにヤバイをかけて100倍、さらにヤバイをかけて1000倍?ヤバすぎる危険が待ち受けるぜ!)

2012-06-20 11:36:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヒートリー、コマー「ザザッ」キターネー。ミスージノ、イト「ザザッ」ニー。……ゼンめいたタイコ・ビートに乗せて、ノイズ混じりの歌唱が流れる。安らぎと得体の知れぬ深淵めいたアトモスフィアの入り混じった音楽は、この施設全体に流されている。 1

2012-06-20 11:49:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

この音楽はサブジュゲイターの指示だ。彼はヨロシサン製薬に造られたバイオニンジャであるが、部長クラスよりもなお上の管理者権限を与えられている。今回クローンヤクザやバイオニンジャと共にヨロシサン研究員も数名同行している。彼らは恐怖とへつらいの眼差しで、サブジュゲイターに会釈する。 2

2012-06-20 11:54:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「最適化の具合は如何で」廊下の壁にもたれ、四本の腕を組むニンジャがサブジュゲイターに声をかける。アサイラムである。サブジュゲイターは答える「不安定な個体ゆえ、多少時間がかかります。フォレスト・サワタリ元研究員の到着が先になるやも」「頭数に含める必要も無し」「その通りです」 3

2012-06-20 12:08:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サブジュゲイターは瞑想的に目を細める。「そもそも、ボタニックを越えてここまでこられるものかどうか」「フン」アサイラムは侮蔑的に言った「俺のイクサもあれきりか……カエル一匹、歯ごたえの無い」「いずれまた力を振るう機会は訪れましょう」「そう願いたいものですな。もっと殺せますよ」 4

2012-06-20 12:25:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」サブジュゲイターはこめかみに指を当てた。「……ボタニックの反応かね?」アサイラムが言った。サブジュゲイターは頷く「憎悪のパルスを感じる事ができる。戦闘が開始されたようです」「便利なものよな……」「ナーガラージャはどこに?」「さあね。どうせ鼠でも喰ってるさ」 5

2012-06-20 12:30:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フォレスト・サワタリの配下には、かつて、貴方の旧型がいました」サブジュゲイターは言った。「どおりで」とアサイラム。「妙な反応をしてやがった。ヌルい奴らです。確かにイアイドには慣れている様子だったが」「油断なさらぬように」「油断?」アサイラムはせせら笑った。「殺すだけさ」 6

2012-06-20 12:52:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サブジュゲイターはアサイラムとの会話を終え、独り、施設地下室への階段を降りてゆく。壁には「結構防護服が要します」と書かれたパネル。階段を降りきったところに、「バイオハザード」とカタカナでショドーされた隔壁だ。彼は認証鍵を挿し、ためらわずこれを開く。7

2012-06-20 13:17:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二重隔壁を通過すると、彼のニンジャ皮膚感覚は空気中の毒をチリチリと感ずる。まっさらな市民サラリマンが無防備に立ち入れば最悪死ぬ。当然、ヨロシサンの生体改造技術と彼自身のニンジャ耐久力がこれを無効化する。サブジュゲイターは打ち捨てられてなお動き続けるUNIXの間を進む。 8

2012-06-20 14:28:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

当時のいたましき事故の折、この施設のヨロシ研究員は、シャットダウンやデータの持ち出し・消去を行う暇もなく、着の身着のままで退避し……ようとした。結局、誰一人として生きて帰ることはできなかった。ボタニックから逃れる事は叶わなかったのだ。 9

2012-06-20 14:32:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

当時サブジュゲイターがいれば、事故がこれほどに手つかずの問題として放置される事も無かったであろう。実際彼はボタニックを容易にヨロシ・ジツで服従させ、こうして研究施設にエントリーした。そもそも、サブジュゲイターが生み出された背景は、社によるこうした実験事故の頻発にあるのだ。 10

2012-06-20 14:38:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

バイオニンジャの暴走、脱走事案が無視できぬ頻度となり、監査役員や株主が難色を示し始めるに至って、社は重い腰を上げた。研究陣はヨロシDNAコードに存在する脆弱性の逆利用に着目。ヨロシ・ジツ構想、そしてサブジュゲイターを完成させた。彼こそが……ニンジャこそがセキュリティなのだ。 11

2012-06-20 14:43:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サブジュゲイターにとって、ヨロシサンの全てのバイオ研究は、帝王たる己が征服し所有すべき手つかずのバルバロイに過ぎない。サブジュゲイターに対する抑止力は確かに存在する、存在するが、それが何だというのか?過大な力を不用意に与えられた彼がヨロシサンCEOに就任するのは時間の問題だ。12

2012-06-20 14:52:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ストココココ、ストココココ、ストココココ。埃をかぶったUNIX機器はまどろむ獣の寝息めいて、地下室を計算音で満たしている。彼は破損した巨大なシリンダーを見上げた。ガラスに「ボタニック」と刻印されている。彼は振り返る。檻がある。そして、中にニンジャが座っている。 13

2012-06-20 15:00:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャじゃねえか。ヨロシサンのニンジャかよ」檻の中のニンジャは態度悪くあぐらをかいていた。サブジュゲイターを見上げる。サブジュゲイターは不思議な懐かしさめいた感覚をおぼえた。「……ドーモ。サブジュゲイターです」「サブジュゲイター……?」 14

2012-06-20 15:04:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

檻の中のニンジャは歪んだ笑みを浮かべた。「サブジュゲイターは、俺よ。するってえと、結局うまくいったんだな?おめでとう俺」「これはこれは」サブジュゲイターは目を見開いた。「データのみならず、実験体も死なずに残っていたとは」「あぐらをかいて寝ていただけだからよ。死にゃしねえさ」 15

2012-06-20 15:12:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

檻の中のニンジャは肘をついて横向きに寝た。「殺していいぜ。この世にいちゃいかんよ、俺は。製品版がロールアウトしたなら。俺なんかアルファ版だ。役立たずだしよ」「それはおいおい決めます。社には不要でも、私には意義があるかも知れません」「無い無い」彼はパタパタと手を振った。 16

2012-06-20 15:16:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ここへ降りてきたって事は?ボタニックは?やったんだな?」彼は欠伸した。「いや、パルスを探れば、わかるんだがな。それくらいはできる。だが調べるのも面倒くせえから、いいさ。よくやったな。さすがだ。俺の?研究データ?そっちのUNIXだろ、フロッピーが挿さったままだ。持ってけ」 17

2012-06-20 15:20:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」サブジュゲイターはこの胡乱なニンジャを見下ろした。石灰色の装束に黒い渦巻模様。装束の意匠も似ていない事は無い。彼は起動したままのUNIXデッキを操作し、ディスク内容をあらためた。彼は目を細めた。フォレスト・サワタリ殺害ミッションの陰で彼が密かに求めていたデータだ! 18

2012-06-20 15:27:35