定本・銀ねずの和歌タイム1

このまとめは、平成24年5月27日~平成25年4月27日の約11ヶ月間にわたって、銀ねずがTwitter上に流していた和歌解説ツイートをまとめたものです。全100首。 取材範囲は基本的に勅撰集を主体とし、あとは銀ねずが持っている私家集等より引用しています。 当初はまとめる意図もなく、本当に何の気なしに始めたつぶやきでしたが、フォロワーさんからご感想など頂戴していい気になってしまい、かくのごとき仕儀と相成りました。 続きを読む
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銀ねず @ginn_nezz

和歌批評のメルマガやりたいなあ…

2012-05-08 18:36:29
銀ねず @ginn_nezz

【1】この歌、超絶技巧なんですよね。1ツイートで書ききれないので分けます。まず「ふしみ」。地名の伏見と「伏して見る」。 RT @shinkokinshu: 1165/よみ人知らず/かりそめにふしみの野邊の草まくら露かかりきと人に語るな #tanka #waka

2012-05-27 22:38:20
銀ねず @ginn_nezz

【2】それから「露かかりき」。『露が掛かった(=濡れた)』と『かくありき(=こうだった)』と『つゆ…な(…しないで)』。 RT @shinkokinshu: 1165/よみ人知らず/かりそめにふしみの野邊の草まくら露かかりきと人に語るな #tanka #waka

2012-05-27 22:38:37
銀ねず @ginn_nezz

【3】訳その1。伏見での仮の宿りなんだから、濡れたとかぼやきなさんなよ。 RT @shinkokinshu: 1165/よみ人知らず/かりそめにふしみの野邊の草まくら露かかりきと人に語るな #tanka #waka

2012-05-27 22:38:56
銀ねず @ginn_nezz

【4】訳その2。あなた様とはかりそめの契りですから、あの女はこうだったと言いふらさないでね。 RT @shinkokinshu: 1165/よみ人知らず/かりそめにふしみの野邊の草まくら露かかりきと人に語るな #tanka #waka

2012-05-27 22:39:08
銀ねず @ginn_nezz

【5】ということで、これは伏見の遊女の歌とされています。すごいんですよ、この歌は! RT @shinkokinshu: 1165/よみ人知らず/かりそめにふしみの野邊の草まくら露かかりきと人に語るな #tanka #waka

2012-05-27 22:39:23
銀ねず @ginn_nezz

【1】鳥は人の魂をあらわすもので、「鳴く」と「泣く」が掛詞になっているのもそのため。 RT @shinkokinshu: 1186/攝政太政大臣/又も來む秋をたのむの雁だにもなきてぞ歸る春のあけぼの #tanka #waka

2012-05-29 16:40:56
銀ねず @ginn_nezz

【2】「たのむ」は「秋を頼む」と「田の面の雁」の掛詞。秋は王朝文学では結婚の季節で、男女は秋を待ち望み、にもかかわらず「飽き」を呼ぶ。 RT @shinkokinshu: 1186/攝政太政大臣/又も來む秋をたのむの雁だにもなきてぞ歸る春のあけぼの #tanka #waka

2012-05-29 16:41:07
銀ねず @ginn_nezz

【3】雁は秋に飛来し、春に去る渡り鳥。この雁は、結婚の約束を裏切られて泣く泣く故郷へ帰る男の魂なのであります。 RT @shinkokinshu: 1186/攝政太政大臣/又も來む秋をたのむの雁だにもなきてぞ歸る春のあけぼの #tanka #waka

2012-05-29 16:41:25
銀ねず @ginn_nezz

【1】来むとしもたのめぬうはの空にだに秋風吹けば雁は来にけり(源実朝) #waka #jtanka 実朝の恋歌は、あまり注目されない。武家歌人として恋歌はふさわしくないのだろうし、何より正岡子規が実朝の恋歌をガン無視してしまったのが大きい。

2012-06-14 01:27:52
銀ねず @ginn_nezz

【2】来むとしもたのめぬうはの空にだに秋風吹けば雁は来にけり(源実朝) #waka #jtanka でも実際に実朝の恋歌はほとんどつまらない。王朝和歌にとって恋歌は一番大事な分野で、恋歌の巧拙を競って和歌が推進していったというのに。

2012-06-14 01:33:11
銀ねず @ginn_nezz

【3】来むとしもたのめぬうはの空にだに秋風吹けば雁は来にけり(源実朝) #waka #jtanka この歌は恋歌ではない。有名な歌だから、成立事情は調べればすぐわかる。お気に入りの側近が国元に行ってしまって戻ってこないので贈った歌という。

2012-06-14 01:40:42
銀ねず @ginn_nezz

【4】来むとしもたのめぬうはの空にだに秋風吹けば雁は来にけり(源実朝) #waka #jtanka 「雁はほら、『いついつ行きますよ』とも言わないのに、秋風が吹くと(私のことなんか)上の空でもやって来るんだよ(なのにお前は八月には来ると行ったくせに来ないのだな)」

2012-06-14 01:53:06
銀ねず @ginn_nezz

【5】来むとしもたのめぬうはの空にだに秋風吹けば雁は来にけり(源実朝) #waka #jtanka 雁は渡り鳥で、秋に飛来して春に去る。秋は王朝歌人にとって結婚の季節で、約束した男が秋にやってくることの象徴でもある。春に去るのは、別の女のところに行くのでもある。

2013-04-27 05:50:02
銀ねず @ginn_nezz

【6】来むとしもたのめぬうはの空にだに秋風吹けば雁は来にけり(源実朝) #waka #jtanka この歌は恋歌ではないのだけれど、こう詠むからは実朝は『待つ女』でなければならない。恋歌のルールに則れば、そうなる。

2012-06-14 02:01:17
銀ねず @ginn_nezz

【7】来むとしもたのめぬうはの空にだに秋風吹けば雁は来にけり(源実朝) #waka #jtanka 実朝はよく『孤独』と言われるのだけど、もちろんそれは間違ってないのだけど、こういう技巧的な恋歌らしい歌を贈れる相手は、いた。これを受け取って理解できる仲間が、いた。

2012-06-14 02:05:20
銀ねず @ginn_nezz

【8】来むとしもたのめぬうはの空にだに秋風吹けば雁は来にけり(源実朝) #waka #jtanka 部立の『恋』につまらない歌が多いかわりにこういう屈折した歌があるというのが実朝『金槐和歌集』の魅力で、読むたびにびっくりする。実朝は、そういう歌人なのである。(了)

2012-06-14 02:11:17
銀ねず @ginn_nezz

【1】言はざりき今来むまでの空の雲月日へだててもの思へとは(藤原良経) #waka #jtanka 恋歌は、和歌の歴史を推進させた最重要の分野で、それは現代短歌も変わらないと思う。恋歌を否定してしまうと、歌は成り立たないのである。

2012-06-16 06:46:45
銀ねず @ginn_nezz

【2】言はざりき今来むまでの空の雲月日へだててもの思へとは(藤原良経) #waka #jtanka 王朝和歌の恋歌は、万葉の昔から男女の相聞という形で切磋琢磨されてきた。相手が返歌に困ってしまうような質の高い歌を詠むことで、恋を勝ち取った証拠として勅撰集に載るのである。

2012-06-16 06:50:10
銀ねず @ginn_nezz

【3】言はざりき今来むまでの空の雲月日へだててもの思へとは(藤原良経) #waka #jtanka ただ時代が下ると貴族も家格が固定されてきて、おのずと結婚相手も家格によって決定されてしまうので万葉以来の自由恋愛がしづらくなってしまう。

2012-06-16 06:53:03
銀ねず @ginn_nezz

【4】言はざりき今来むまでの空の雲月日へだててもの思へとは(藤原良経) #waka #jtanka そうなった時、貴族は相手のレベルに合わせて恋歌を詠むことをやめ、架空の相手…つまり理想的な恋を心に思い描いて歌を詠むようになる。天井知らずの超絶技巧へ傾斜するのである。

2012-06-16 06:57:04
銀ねず @ginn_nezz

【5】言はざりき今来むまでの空の雲月日へだててもの思へとは(藤原良経) #waka #jtanka この歌は本歌取りで、本歌は『今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな(素性法師)』。「今すぐ行くとあなたが言ったので待っていたら夜が明けてしまった」

2012-06-16 07:02:02
銀ねず @ginn_nezz

【6】言はざりき今来むまでの空の雲月日へだててもの思へとは(藤原良経) #waka #jtanka この歌は素性の本歌から300年を経た心境を詠んだもの。初句と二句以降結句まで大胆な倒置が使われている。「~とは言はざりき」と、読者に二度見させる構造になっている。

2012-06-16 07:08:27
銀ねず @ginn_nezz

【7】言はざりき今来むまでの空の雲月日へだててもの思へとは(藤原良経) #waka #jtanka 「あなたは今来たけれど、それまでに空を流れる雲を何日も何ヶ月もかけて物思いにふけっていろとは言わなかったじゃありませんか(今すぐ行くと言ったあれから300年経ってますよ)」

2012-06-16 07:13:09
銀ねず @ginn_nezz

【8】言はざりき今来むまでの空の雲月日へだててもの思へとは(藤原良経) #waka #jtanka 古今集と新古今集の間はちょうど300年経っていて、新古今集を編んだ人びとはこれを強く意識していた。「古」と「今」の衝突と調和こそが新古今集の魅力で、それは読者も意識すべきだと思う。

2012-06-16 07:17:36
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