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「失われた10年」を説明する

林文夫 & Edward Prescott「失なわれた10年: 1990年代の日本」 http://p.tl/_E-e を読む <関連サイト> 林文夫教授の個人サイト Links Related to My Work on Japan's Lost Decade (joint with Edward C. Prescott) http://p.tl/efdT
経済 失われた10年 平成不況 日本経済
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Kohei Kawaguchi @mixingale
自分の整理をかねてかの有名な林&プレスコットhttp://t.co/XMEP4cPIの内容を改めてまとめてみる。この論文で「言っていること/言ってないこと」をちゃんと区別してここで「明らかになったことは何か」を理解するのはとても重要。この論文簡単だから実際読んでみるといいと思う。
Kohei Kawaguchi @mixingale
まずは「観察事実」の確認。20-69歳人口比GNPから2%成長のトレンド分を控除したものを1990年=100と基準化して時系列をとったもの。92年以降2%成長トレンドからの下方乖離が進んでいる。「失われた10年」というやつ。 http://t.co/BUHu8lMa
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Kohei Kawaguchi @mixingale
次に雇用者一人一週間あたりの労働時間の推移。88年から段階的に低下。これは1988年からの労働基準法改正で週あたり法定労働時間が48時間から段階的に1994年の40時間まで段階的に引き下げられたことに伴う変化。 http://t.co/kXMnKTtr
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Kohei Kawaguchi @mixingale
次に税引き後資本リターン。90年から94年にかけて激減、その後一度持ち直すが再び低下。これは土地投資のリターンを含む。土地を除くと80年代平均5.3%から90年代平均2.1%へ低下。 http://t.co/B0uodviZ
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Kohei Kawaguchi @mixingale
次に成長会計。生産量=TFP×(資本^a)×(労働時間×雇用量)^(1-a)、a=0.362として生産量の変化をそれぞれの変化に要因を分解。ここではじめて「観察事実」に「生産関数の形状に関する仮定」が加わる。まあとりあえず線形モデルで様子を見てみるようなものだ。
Kohei Kawaguchi @mixingale
この成長会計によると、TFP成長の寄与が80年代の3.7%から90年代の0.3%に低下していることが一人あたり成長率の低下に大きく影響していることがわかる。73-83でも同じくTFPの寄与低下があったが資本装備増加が補っていた。 http://t.co/sWGKmamM
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Kohei Kawaguchi @mixingale
ここまでは(成長会計での生産関数の形状の仮定と各種統計の測定・集計上の仮定を除けばほとんど)「観察事実」の確認である。次に「RBCモデルで90年代の低成長を説明できるか」という問題を考えてみる。詳しくいうとこういうことだ:
Kohei Kawaguchi @mixingale
(a)80年代のデータから求めたパラメータをRBCモデルに挿入し、(b)「状態変数:資本ストック」の「初期値=90年の値」を実際の値に設定し、(c)90年代のTFP、労働人口、政府支出GNP比の流列を所与として解いた結果は、90年代の実際の時系列データをどの程度説明できるか?
Kohei Kawaguchi @mixingale
なにはともあれまずは結果を見てみる。これはトレンド補正済み労働者一人当たりGNPの推移のデータ(実線)とモデルの解(点線)で描いたもの。まあ普通にみて「説明できてるっぽい」("フィット"を数値で表すことは可能だがそれはしてない)。 http://t.co/fDB06AJ1
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Kohei Kawaguchi @mixingale
次に資本-アウトプット比。これも大分「説明できてるっぽい」。 http://t.co/eW1BROY6
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Kohei Kawaguchi @mixingale
次に税引き後資本リターン。これもまあ「説明できてるっぽい」。 http://t.co/KHd6AtuJ
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Kohei Kawaguchi @mixingale
以上の結果から何が言えて何が言えないか? まず成長会計の結果から「90年代の成長率の低下と並行してTFP成長率が低下している」ことは明らかに「言える」。 ただし「TFPは外生的」というのはただの仮定だからこの結果だけから「TFP成長率の低下が"原因"だ」とは「言えない」。
Kohei Kawaguchi @mixingale
また「TFP成長率が低下している」のは確かだがこの結果から「これはサプライサイド要因による」とは「言えない」。「TFP」はただのブラックボックスであってそれがどう決まってくるのか何もわからないし何も「言ってない」(故に「林&Pはサプライサイドの議論だからダメ」も「言えない」)。
Kohei Kawaguchi @mixingale
また「"80年代のデータから求めたパラメータをRBCモデルに挿入し、状態変数の初期値を実際の値に設定し、90年代のTFP、労働人口、政府支出GNP比の流列を所与として解いたモデル"は90年代の実際の時系列データをかなり説明できる」は「言える」が「"〜"は正しい」は「言えない」。
Kohei Kawaguchi @mixingale
これは「彼女が知らない男と歩いていた」という「観察事実」があった時に「"あれは彼女の浮気相手である"という仮説で説明できる」も「"あれは彼女の兄である"という仮説で説明できる」も正しいがその時点では「"あれは彼女の兄である」とは言えないのと同じ理由。
Kohei Kawaguchi @mixingale
ただ「手元のデータは"〜"を潜在的には棄却しうるのにどうも棄却はしないっぽい、それどころかモデルはかなりデータにフィットするらしい」ということまではまあ「言える」わけである。
Kohei Kawaguchi @mixingale
「RBCなどというこんな簡単なモデルで現実が説明できる"はずがない"」と「思い込んでいる」人は多いのだが、むしろ実際にデータとシミュレーション結果を比較すると「ショックの過程がわかればRBCなどというこんな簡単なモデルなのにかなり現実が説明できてしまう」というのが「事実」である。
Kohei Kawaguchi @mixingale
そして「ショックの過程をうまく予測できるかどうか」は(単にその予測の挿入対象にすぎない)RBCモデルを使うとか使わないとかいうこととは全く関係のない話である。
Kohei Kawaguchi @mixingale
また「金融的要素や金融政策・財政政策が無意味」ということもこの結果からは「言えない」し「言ってない」。ただ「そういうの入れなくてもかなり説明できてしまう」ということを「言っている」。また「ゼロ金利制約下の経済でどのような政策をとるべきか」についても何も「言っていない」。
Kohei Kawaguchi @mixingale
結局この論文(では記述データの分析によって「銀行危機→貸し渋り」仮説を間接的に否定する議論も行なっているがそれは無視すると)「TFP成長率の低下で失われた10年をかなり説明できる。でもTFPの低下って一体何なんだろうね、さっぱりわからないね」と「言っている」だけなのである。
Kohei Kawaguchi @mixingale
これは最適な金融政策ってなんだろう最適な財政政策ってなんだろう経済をうまく記述するモデルってどういうのだろう経済学はクソだとかいった立場の違いによらず「日本に訪れた失われたXX年」を深く憂慮するすべての人が共有してしかるべき議論の出発点だと思う。
Ippei Nishida/西田 一平 @inishidas
@mixingale とてもわかりやすかったです。TFPは残差と習ったのですが、実際何なんでしょうね?成長する国の「雰囲気」とかスポーツでいう「流れ」みたいなものでしょうか。いずれにせよ、ありがとうございました。この論文もうちょい詳しく読んでみます
Kohei Kawaguchi @mixingale
@n_ippei317 まあ残差としかいいようのないなにかですね。最近は資源のミスアロケーションの結果(同じ総資本でも企業間にそれがどう分布してるかで総生産量がちがう)だとか言われることが多いですけど、それでも依然残差は残りますしね。

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