牧眞司の文学あれこれ2

牧眞司の文学あれこれ http://togetter.com/li/290388 あまりに前のまとめが長くなりすぎたので、続きを作りました。
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牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『逆転世界』を創元SF文庫版で再々読。プリーストには『ドリーム・マシン』『双生児』というオールタイムベスト級の大傑作があるので、あとまわしになりがちだが、この作品も傑作。読み返していろいろ気づいて、評価がいちだん上がった。 (続く

2012-06-24 08:36:44
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

逆転世界はSFのアイデアとして絶品だが、文学装置としても優れている。それが惹起するのは「世界の中心」をめぐる問題だが、それが登場人物の人生、社会システム、知覚・感覚、思考の枠組……という異なるレベルを縦貫している。

2012-06-24 09:01:02
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

プリースト『逆転世界』はふたつの現実の相克を描いていく。ふと考えたんだけど、これを逆転系だけの物語にしたらどうだろう。もちろんプリーストが狙ったものとはまったく関係のない、あくまでハードSF的なお遊びなんだけど。 (続く

2012-06-25 16:29:38
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

物語の終盤で、移動し続ける〈地球市〉は向こう岸が見えないほどの水面に突きあたる。『逆転世界』では、ここでもうひとつの現実があらわになって、この苦境自体が意味をなくすのだけど、もし逆転系が唯一の現実として継続していたらどうなるか? (続く

2012-06-25 16:30:20
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

もとの作中では、ちょこっと「最適線から遠く離れれば、進行方向が(相対論効果のように)縮むので、向こう岸への架橋が可能になる」との仮説が提示されていた。しかし、読んだひとは知っているように、最適線から離れると、南方向へ引っぱる強力な力(遠心力)が加わる。 (続く

2012-06-25 16:30:48
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

それに抗して、〈地球市〉が踏みとどまり、向こう岸への架橋を可能にするためには、どんな計画準備と実行が必要か? どなたかシミュレーションしてみませんか。

2012-06-25 16:31:04
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『逆転世界』の逆転系をハードSF的に解釈するお遊び、その2。作品では未来方向(北)への旅はほとんど描かれていない。北でも重力が傾斜するはずなんだけど、どうだろうか? ただ、南では重力傾斜の原因は遠心力だったけど、北では地面の勾配が問題となるはず。

2012-06-26 20:46:08
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

第二次大戦のうち英独戦争の帰趨をめぐって分岐したふたつの歴史が、そのまま平行するのではなく、もつれあい重なりあって、いわば波動の干渉のように立ちあらわれる。それを外側からではなく、あくまでその内側を生きる人間たちの意識にうつるさまとして描く。 (続く

2012-06-27 11:20:09
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

「歴史の分岐」という構図はSF(もしくは超絶技巧的文学)なんだけど、場面場面の叙述についていえば伝統的文芸の手練。抑制がきいていて奥行きがある。SFはわざとらしかったり空々しかったりでどうも苦手というむきも、『双生児』には唸るよ、きっと。

2012-06-27 11:22:18
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ステファンヌ・マンフレド『フランス流SF入門』(幻冬舎ルネッサンス)読了。入門書のわりには、バンドデシネや映画などメディア系に大きな比重が置かれているが、これはフランスのSF受容の現状に即しているのかな。 (続く

2012-06-27 19:50:48
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

作品評価など、英米と大きく異なった価値基準が示されていないかと期待したが、それほどではなかった。それにしても彼の地でもスチームパンクが流行している模様。 (続く

2012-06-27 19:51:05
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

いちばん興味深かったのは「結論」で紹介されている、フランス人の好む百冊の本ランキング。『指輪物語』の5位、『海底二万里』の7位はさもありなんだが、バルジャベル『時の暗闇』14位はびっくり。SFのランキングじゃなくてオールジャンルなのに、こんな高順位とは。

2012-06-27 19:51:45
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『ブラッドベリ、自作を語る』(晶文社)読了。いやあ楽しいたのしい。ぼくはこんなひとと仲良し、こんなひとと話したことがある、こんなひとに褒められた、こんなふうに思うがまま生きてきた……。自慢のオンパレードなんだけど、ぜんぜん嫌味じゃない。だってブラッドベリなんだもの。 (続く

2012-06-27 20:02:06
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

SFや現代小説の枠にとどまらない、文化横断的なスーパースターになったブラッドベリ御大が、天真爛漫に「自分の好きなもの」を語っている。インタビューをしたサム・ウェラーの引き出しかた、まとめ方も巧いのだろうが、語りの名調子におもわず聴き入っちゃいます。

2012-06-27 20:02:32
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ショーン・タン『ロスト・シング』(河出書房新社)読了。タンの絵そのものが新鮮で楽しいのに加え、本篇からはみだしたところにちょこちょこ遊びが凝らされていて、何度も何度も楽しめる。 (続く

2012-06-27 21:36:11
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

物語の背後にある町・社会・世界を、それぞれの読者なりに想像できるよう、ほんの断片的な手がかりがちりばめられていて、これもまた愉快。

2012-06-27 21:36:43
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

これもまたプリースト本来とは無関係なお遊びだけど、『双生児』を本格ミステリとして読み解く。歴史A(英独の講和成立)のルドルフ・ヘスと、歴史B(講和不成立)のヘスは同一人物か? それとも後者のヘスは替え玉だったのか? 歴史が分岐する前、ドイツからは二台の飛行機が飛びたっているが……

2012-06-27 22:14:25
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

プリースト『奇術師』(ハヤカワ文庫FT)再読。すごいよプリースト、あんたが奇術師だよ!

2012-06-28 19:56:49
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『奇術師』の主人公のひとりは〔(奇術のタネは)あまりにも卑小でささいなもの〕だと言う。しかし、イリュージョンそのものは素晴らしく、ひとを魅了する。プリーストの小説もそうであって、要素に還元してしてしまえば何ということはない。 (続く

2012-06-28 20:15:37
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

そもそも、世界は要素の寄せ集めでできているわけではない。要素に還元できないなにか(全体? 実感? 現実?)を指ししめすのが、文学の価値だろう。まあ、『奇術師』そのものは、そう大きく振りかぶることなく、きわめて良質のエンターテインメントですが

2012-06-28 20:16:07
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ジャンル小説の愛好家は往々にして、また、すぐに感動とか共感とかエモーションとか言い出すひともそうなんだけど、要素還元的に小説を読んでいるふしがある。まあ、そういうのもそれなりに楽しいんですが。 (続く

2012-06-28 20:25:53
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

しかし、それでは通用しない作品もあって、一度そういうレベルを知ってしまうと、要素還元的な読みかたにはちょっと飽きたらなくなってしまう。

2012-06-28 20:26:13
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

プリースト『ドリーム・マシン』(創元SF文庫――ただし、ぼくが持っているのは最初の推理文庫版)、読むのはこれで4度目か5度目。大傑作。プリーストのなかではもっとも好きな作品。 (続く

2012-06-29 15:43:20
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

「集団的な夢として未来の世界を顕現させる」リドパス投射器というアイデアが秀逸。SFガジェットの実体感と、文学装置としての機能が、高いレベルで総合している。そこから出発して、時間/意識/風景がべつべつのものではなく、世界の根底としてわかちがたく結ばれていることを鮮やかに示していく。

2012-06-29 15:44:38
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

クリストファー・プリーストの凄さをいくらSFファンに説いても、わかるひとには釈迦に説法だし、わからないひとには無駄なので、むしろ世界文学好きの方々に薦めるほうがスジだろう。 (続く

2012-06-30 10:02:21
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