山本七平botまとめ/「何かの力」に”無意識に”支配されている日本人/~その「何か」を解明しない限り、解けない呪縛~

山本七平著『「空気」の研究』/「水=通常性」の研究/148頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

1】前略~この発想の基本にあるものは何か。それは結局、各集団がそれぞれ「父と子の隠し合い」の”真実”で保持している経済的封建制度を革命で解体して、全日本一体の「父と子」体制、簡単にいえばクラスの壁を破って、全日本を「一教師・オール3生徒」で構成する学級体制(続

2012-06-23 14:58:31
山本七平bot @yamamoto7hei

2】続>即ち「一君万民」を作りあげようというわけである。彼ら(註:戦前の北一輝など)はそれを自由平等一律無差別な理想的政体と考え、それを立憲的民主的と定義しているわけだが、実際は集団倫理的体制を一体化し、それに全日本人を包含しようとしたわけである。<『「空気」の研究』

2012-06-23 15:21:18
山本七平bot @yamamoto7hei

3】そしてこの体制がある程度できあがっていたのが、実は戦時中の日本なのである。いわば一君万民で、一億総情況論理、総情況倫理。そこであらゆる虚構の情況が創立され、全てはその情況のもとに判断され「父と子」の間で事実を否定する事によって「直きことその中にあり」の忠誠で秩序が保持された。

2012-06-23 15:58:33
山本七平bot @yamamoto7hei

4】そしてひとたびこうなると、一切はそこで固定する。事実に立脚した自由な発想もその発想に基づく方向転換も不可能になり、にっちもさっちも行かなくなり、人はたとえそれが自滅とわかっていても、その方向にしか進めなくなるわけである。

2012-06-23 16:21:30
山本七平bot @yamamoto7hei

5】そしてその虚構が破綻しても、実は一学期と二学期で黒板の字を書きかえるだけでその虚構は消え、すぐ別の虚構へと移れるのである。――「父と子」で隠し合うことによって。私が「公害問題」に関心をもつのは、実は、この点なのである。

2012-06-23 16:58:27
山本七平bot @yamamoto7hei

6】もしかりに――これはあくまでも仮定の話だが「カドミウムはイタイイタイ病に無関係」と証明されたらどうなるのか。今までの治療も予防もやめて、別の原因を探究して対策を立てねばならぬはずである。これは医学的に見れば、過去にいくらでもあったことである。

2012-06-23 17:21:30
山本七平bot @yamamoto7hei

7】人類の歴史とは錯誤の歴史だから、その事自体は少しも不思議ではない。…結核もかつては遺伝だと信じられ、あの家は結核の家系だなどといわれもした。またカルシウムを連続的に注射すれば病巣が石灰化(?)して治癒するとかいわれ、私もそういった注射を随分打たれた経験がある。

2012-06-23 17:58:25
山本七平bot @yamamoto7hei

8】いま親しい医師にきくと、それは全く無駄なことだったそうである。ではもし、何らかの情況倫理が作用して、それが無駄だと今でも口にできない状態を現出したら「父子隠し合い」の真実が維持されつづけていたら、どうなっていたであろう。

2012-06-23 18:21:27
山本七平bot @yamamoto7hei

9】それはもはや医学の問題でも科学の問題でもなく…科学を否定しても、ある情況を維持してそれに対応しようとする我々が抱えている「通常性」の論理の問題、簡単にいえば「一君万民」「一教師・オール3生徒」と、これを創出するための情況論理と、それに基づく倫理の問題なのである。

2012-06-23 18:58:19
山本七平bot @yamamoto7hei

10】「公害」という直に表面化している点にだけ問題があるわけではない。そして「一君万民平等無差別」は、その「君」が誰であろうと、全体主義的無責任体制なのである。

2012-06-23 19:21:25
山本七平bot @yamamoto7hei

11】【…これは軍人そのものの性格ではない。日本陸軍を貫いている或る何かの力が軍人にこうした組織や行動をとらしめているのだ。(小谷秀三『比島の土』より)】

2012-06-23 19:58:35
山本七平bot @yamamoto7hei

12】【日本は、実にふしぎな国である。研究室または実験室であるデータが出ると、それを追求するよりも早く何かの力がそれに作用する……。(北条誠『環境問題の曲り角』の中のスイスの製薬会社社員の言葉)】

2012-06-23 20:21:39
山本七平bot @yamamoto7hei

13】この二つの文章には、ともに「何かの力」という言葉が出て来るが、元来は全く無関係、書いた人も書かれた情景も、ともに互いに相知る状態にはあり得ない人の文章である。小谷秀三氏は…技術者として軍に徴用され、ルソン島の敗滅にまきこまれて九死に一生を得た民間人。

2012-06-23 20:58:19
山本七平bot @yamamoto7hei

14】この人が民間人という第三者の立場から見た、壊乱し敗走し死滅して行く日本軍の中には、軍事とは本来無関係で「軍人そのものの性格」とも無関係な「何かの力」が働いているのが見えていた。そしてこの「何かの力」が、日本を壊滅させた。

2012-06-23 21:21:59
山本七平bot @yamamoto7hei

15】その日からは”民主化された戦後三十数年”がすでに過ぎている。そして北条誠氏は、小谷氏のことも、比島の日本軍壊滅の実情のことをも全く知らぬ一スイス人から、同じ種類の指摘をうける。次に氏の記述を少し引用させていただく。

2012-06-23 21:58:29
山本七平bot @yamamoto7hei

16】【「何かの力」と紳士は言ったが、その抽象的な表現がかえって私の心を傷つけた。左様確かに一つのデータ、現象、事件に、日本ではすぐ「何かの力」が作用する。マスコミがとびつく。そして大きな渦となり誇大に宣伝され世論となる。そのデータや事件とは全く無関係な処までひろがってしまう。

2012-06-23 22:22:02
山本七平bot @yamamoto7hei

17】これも日本人の過熱性だろうか。しかし「過熱性」とだけで、片づけられる問題ではなさそうだ。……人間の健康とか、平和な市民生活、と言うことは、起点に利用されただけで、いつか忘れられ、なまぐさい争いになっている。環境問題であるだけに、私は「何かの力」をおそれるのだ。】

2012-06-23 22:58:29
山本七平bot @yamamoto7hei

18】「人間の健康とか、平和な市民生活」が起点であるように、かつての日本軍もその発想の起点は、国家・国民の安全であり、その「生活圏・生命線の確保」であり、このことは繰りかえし主張されていた。

2012-06-23 23:22:03
山本七平bot @yamamoto7hei

19】だが、その「起点」に「何かの力」が作用すると、一切を壊滅さす方向に、まるで宿命のように走り出し、自分で自分を止め得ない。それは、その現場を直接目にした第三者には、もう何とも表現できない状態だから、「何かの力」という以外に何も言えなくなる。

2012-06-23 23:58:25
山本七平bot @yamamoto7hei

20】そしてわれわれは常に、あらゆる問題において、この「何かの力」をどこかに感じている。それはさまざまな言葉の端々に表われ、しばしば「……問題」という形で表現されている。

2012-06-24 00:21:13
山本七平bot @yamamoto7hei

21】たとえばある種の外交交渉が、国内で「政治問題と化した」と言われる場合、その表現には、「”何かの力”が作用して、この問題は純粋な外交交渉として合理的に解決することは不可能になった」の意味だと人びとは受けとる。

2012-06-24 00:58:16
山本七平bot @yamamoto7hei

22】私は前に「公害」と「公害問題」は別だと考えると言ったが、こう考えている人は、おそらく私だけではあるまい。「問題」といわれた瞬間、そこには小谷氏が指摘し、スイスの紳士が指摘した「何かの力」が作用し、その力は逆に懸案の解決を阻害しているわけである。

2012-06-24 01:20:59
山本七平bot @yamamoto7hei

23】幸か不幸か、確かにわれわれは、一つの力(エネルギー)に支配されている。これは否定できない。では一体、昔も今もわれわれを支配している「何かの力」とは何なのか? その力に抵抗することは不可能なのか?

2012-06-24 01:58:27
山本七平bot @yamamoto7hei

24】確かに「何か」と言っている間は不可能である――というのは、実体のわからないものには対抗はできないから。

2012-06-24 02:20:59
山本七平bot @yamamoto7hei

25】従ってもし、比島において小谷氏が感じ、また薬害問題について一スイス人が感じ、多くの人がさまざまの”問題”で感じている「何かの力」に本当に対抗し、この呪縛のような力から脱却することを望むなら、その「何か」を解明して再把握し、これに対処する以外に方法はない。

2012-06-24 02:58:25
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コメント

川津駄言 @dagon_kawadu 2018年10月3日
「父子相隠す」についての論考を含む。ただし、公害に関する認識には異論が出るかもしれない。
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