[120622]現代の貧困と憲法第25条 - 名古屋法律事務所友の会法律講座100回記念 連続憲法講座第2弾

【主催】  名古屋法律事務所友の会 (http://www.nagoyalaw.com/tomonokai/index.html) 【講師】 続きを読む
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白川陽一 @shirasan41

これから、6月22日に名古屋法律事務所で行われた憲法講座「現代の貧困と憲法第25条」の覚え書き連続Tweetを行います。要点を箇条書きにしたスタイルです。よろしくお願いします。

2012-06-26 00:12:24
白川陽一 @shirasan41

現在の日本では「貧困」は一見問題になっていないかのようにみえる。それはある意味正しく、ある意味間違っている。「貧困」には二種類あることに注目すると、議論がすっきりする。

2012-06-26 00:12:39
白川陽一 @shirasan41

「貧困」には「絶対的貧困「相対的貧困」の二種類がある。 「絶対的貧困」とは、衣食住に事欠く状態のこと。日本でも少ないが起こっている。餓死問題など。 「相対的貧困」とは、多くの人の生活水準より下の生活をしている状態のこと。日本はこれが多い。

2012-06-26 00:12:51
白川陽一 @shirasan41

「相対的貧困」問題は日本は深刻である。ある調査によると、日本人は、生きていくために必ず必要になるものを「必要ない」と答える割合が多かったという。日本では、相対的貧困の境界線を自覚していない人が多い。

2012-06-26 00:13:04
白川陽一 @shirasan41

最近のキーワードとして「格差社会」というものがある。これは「貧困」とセットで考えるべきもの。貧困な者はますます貧困になっていき、社会は病的なものへとなっていく。

2012-06-26 00:13:14
白川陽一 @shirasan41

OECDの調査では、相対的貧困率はアメリカが圧倒的な一位だが、2000年から横ばいの値で推移している。日本は年々上昇してる。 また、別のデータでは、日本は「税や社会保障の所得再分配によって社会的格差を是正できていない」という衝撃的な事実がみえる。これはOECD諸国の中で日本だけ。

2012-06-26 00:13:48
白川陽一 @shirasan41

東日本大震災では、一瞬で生活の基盤を失った人が多い。復興に際して、まず重要な問題は「被災者」であるとして、貧困問題は少し後ろに追いやられた感がある。しかし考えてほしい。実際問題、貧困な人の方が被害の受け方は甚大だし、社会に復帰するのは大変。これは阪神大震災で学んだ教訓でもある。

2012-06-26 00:14:25
白川陽一 @shirasan41

また、余談だが、大震災という「混乱」に乗じて、人々の判断能力が低下している時に、どさくさにまぎれて行動する人も出てきた。悪質な震災ビジネスや、政府がTPPを押し通そうとしたことなど。

2012-06-26 00:14:37
白川陽一 @shirasan41

「ワーキングプア」とは1年間の収入が200万円を越えない人たちのこと。2006年にNHKが特集を組み爆発的に普及した概念である。日本人の年収は平成6~10年がピークでそれ以降は減り続けている。今では年収の平均は500万円だが、正規分布になっておらず、左(少ない方)に偏っている。

2012-06-26 00:14:55
白川陽一 @shirasan41

ワーキングプアの大きな原因には「派遣切り」といわれる問題がある。低賃金労働、非正規雇用が大量に出現していて、働き方の諸相は以前とは明らかに変わってしまった。今は正社員で働くのが当たり前な時代とは言えない。ちなみに、愛知の派遣切りの割合は、全国の13%程を占めていて、かなり多い。

2012-06-26 00:15:15
白川陽一 @shirasan41

「生活保護」を受ける人は200万人を突破した。芸能人へのバッシング問題で話題になっているが、「親族への扶養義務」という点をしっかり理解してほしい。 現行制度では、親族からの扶助があろうとなかろうと「生活保護を受ける事は出来る」。扶助があれば生活保護の「額が減る」だけ。これが問題。

2012-06-26 00:15:34
白川陽一 @shirasan41

日本の生活保護率は全人口に対して1.6%程であるが、これはヨーロッパ諸国からみると少なすぎる割合である。日本で相対的貧困率は高いことと合わせて考えると、「本来は生活保護を受けないといけない人が、実は受けられていない」ことになる。

2012-06-26 00:15:48
白川陽一 @shirasan41

子どもの貧困について。高校生のアルバイト調査によると、普通科→職業科→定時制の順でアルバイト経験者が多い。これは家庭の貧困状況と相関する。つまり、家庭が貧困な者ほどアルバイトをしている。稼いだお金は、自らの生活の為、家計の為に使われている。親が貧困だと子供も貧困。貧困は連鎖する。

2012-06-26 00:16:02
白川陽一 @shirasan41

貧困の原因とは何か。 デフレ?低成長時代の煽り?リーマンショック?確かにそのような経済的な問題も関係はあるだろう。しかし、最も大きい原因は、日本が推し進めてきた「新自由主義政策」にある。

2012-06-26 00:16:11
白川陽一 @shirasan41

「新自由主義政策」とは、グローバル競争に勝つ為に「市場のことは市場にまかせて全て民間企業の自由にさせてみる」事である。「自己責任論」はこの流れで生まれた。この論は「それはあなたが引き起こしたのだから、自分で責任をとれ」という事を主張する。これは弱い人にしわ寄せがくる主張である。

2012-06-26 00:16:23
白川陽一 @shirasan41

「社会保障と税の一体改革」について、厚労省は「自助・共助・公助」ということを掲げている。普通のイメージでは「自助=自分で自らを助ける」「共助=周りの皆と助け合う」「公助=政府が国民を助ける」だろう。しかし、厚労省は「共助=社会保険」と位置づけている。ここから増税の論理が出てくる。

2012-06-26 00:16:52
白川陽一 @shirasan41

自助とは「自分で自分の面倒をみる」だから自己責任論。また、厚労省がいう共助とは「(増税による)社会保険」だから「社会保険を受けたければ税金を払え」という事であり、これも自己責任論。更に、政府は公助を減らそうとしてる。 この事からも、今の日本は自己責任論を推し進めている事が分かる。

2012-06-26 00:17:14
白川陽一 @shirasan41

現代の貧困をどうやって克服していけばいいのか?憲法25条に立ち戻って考えてみる。 〈日本国憲法25条〉 1.すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 2.国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び推進に努めなければならない。

2012-06-26 00:17:29
白川陽一 @shirasan41

憲法25条は、GHQの原案になかったもので、戦争により荒廃しきったた中にもかかわらず、先人達が自らその必要性を考え議会において追加したもの。

2012-06-26 00:17:38
白川陽一 @shirasan41

25条第1項では「生存権」を規定している。第2項では「国の社会的使命」について規定している。

2012-06-26 00:18:01
白川陽一 @shirasan41

このあと憲法では、26条で「教育を受ける権利および義務教育」を、27条、28条で「勤労」「労働」について規定している。これらはセットで捉えたい。共通するのは、国の積極的な関与によって、社会的不平等を是正していこうということ。

2012-06-26 00:18:07
白川陽一 @shirasan41

現代の日本は個人の自立をベースに作られている。すなわち、王権神授説から近代民主主義に移行した際、社会契約論を根拠に「国家は国民のためにある」ということになり、ここから「人間は自由や平等である」ことが保障されるようになった

2012-06-26 00:18:17
白川陽一 @shirasan41

しかし、国家は、自由や平等を推し進めるだけでは充分ではない。社会には、実質的に人権を侵害されている人がいる。すなわち、社会には「格差」が現に存在するので、国家は、自由や平等を推し進めるとともに格差を是正することもしていかなければならない。

2012-06-26 00:18:27
白川陽一 @shirasan41

日本では、企業内の福利厚生の方が社会保障制度よりも身近という印象がある。しかし最近では、企業のコストカットなどで、福利厚生自体が縮小してきている。また「職場に憲法なし」という言葉の通り、専ら労働者は企業の論理で働かされている。さらに、労働組合も十分に機能していない。

2012-06-26 00:18:44
白川陽一 @shirasan41

「裁判所は、25条を根拠にして格差を是正するよう働きかけることは出来ない」という判例が出たことがある。しかし、これからは、ますます国の責任で権利としての生存権を保障していかなければならない時代になっていく。したがって、それを実現するトータルプランを打ち出していくべきである。

2012-06-26 00:18:56