せめて働けメロス ~あなたって、本当に最低の屑だわ!~

@miyamo_7さんの秀逸きわまりないメロスパスティーシュ
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みやも(大阪府) @miyamo_7

メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を自分以外の誰かが除かなければならぬと期待した。メロスには政治がわかったつもりでいる。メロスは、村の穀潰しである。他人の吹く笛を聞いては自分は一度も吹いた事もないくせに音色を批判し、羊と遊んで暮らす者があれば己の身は棚に上げて軽蔑して来た。

2012-06-26 04:01:13
みやも(大阪府) @miyamo_7

勿論 正義に対しては不必要に拒否反応を示した。今日未明メロスは村を追い出され、野を越えるのを避け山を越えるのも面倒くさがり、徒歩3分の此のシラクスの市にやって来た。メロスには父も母もいて、恵まれた環境にぬくぬく暮していた。己の不細工をわきまえず選り好みが激しいため嫁はいなかった。

2012-06-26 04:02:31
みやも(大阪府) @miyamo_7

十六の、外向的な妹とは疎遠だ。この妹は、村の或るリッチなボンボンを、近々、花婿(はなむこ)として引っ張り込む事になっていた。結婚式も間近かなのである。妬みにかられたメロスは、盗み出した花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走の材料やらを売り飛ばしに、市にやって来たのだ。

2012-06-26 04:03:07
みやも(大阪府) @miyamo_7

先ず、その品々を金銭に換えて、それから都の裏通りをこそこそ歩いた。メロスには友のふりをしている金づるがあった。セリヌンティウスである。今は此のシラクスの市で、石工をしている。そのうわべだけの友を、たかりに訪ねてみるつもりなのだ。

2012-06-26 04:03:59
みやも(大阪府) @miyamo_7

久しく逢わなかったからといって、訪ねて行くのが楽しみという事もないが。歩いている内にメロスはまちの様子を怪しく思った。賑やかにしている。もう既に日も落ちてまちの暗いというのに、何だか月明かりのせいばかりでは無く、市全体がやけに明るい。陰気なメロスは段々うっとうしくなって来た。

2012-06-26 04:06:44
みやも(大阪府) @miyamo_7

路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来た時は朝でも皆が無言でまちは寂れていた筈だがと質問した。年寄りはにっこり笑って手を振った。しばらく歩いて老爺に逢い、今度はもっと語勢を弱々しくして質問した。老爺の答えを恐れてメロスは両手で自分のからだを抱きしめた。

2012-06-26 04:07:52
みやも(大阪府) @miyamo_7

老爺は、あたりをはばからず高い声で、大いに答えた。「王様は、人を許します。」「なぜ許すのだ。」「だれしも良心を抱えている、というとおり、みなが良心をもつようになりましたゆえ。」「たくさんの人を許したのか。」「はい、はじめに、王様を毒殺しようとした妹婿さまを。それから、

2012-06-26 04:08:52
みやも(大阪府) @miyamo_7

寝首をかこうとしたお世嗣(よつぎ)を。それから、隣国と密通し政乱を引き起こそうとした妹さまを。それから、暴力をふるう妹さまの御子さまを。それから、浮気した皇后さまを。それから、逆臣のアレキス様を。」「おどろいた。国王は偽善者か。」

2012-06-26 04:09:23
みやも(大阪府) @miyamo_7

「いいえ、偽善ではございませぬ。人を信ずる、というのです。このごろは、臣下の心をも、お信じになり、少しでも苦しい暮しをしている者には、税を免じて世話人を送り出すことを約束して居ります。御約束を違えば自ら十字架にかかって、死んでやるといいます。きょうは、六人救われました。」

2012-06-26 04:10:15
みやも(大阪府) @miyamo_7

メロスは、屈折した男であった。金を、入念に隠しておいてから、こそこそ王城のまわりをうろついた。なかなか彼は、巡邏(じゅんら)の警吏に捕まらなかった。メロスは懐中の短剣を捨てて来たので、もし捕縛されてもなんとか言い訳をして大きな騒ぎにはならないよう用心していた。

2012-06-26 04:10:40
みやも(大阪府) @miyamo_7

王が家来を引き連れて城から出てきた。メロスは王を遠巻きから監視しようとしたが、物陰に隠れそこねて見つかってしまった。「やあやあ、城のこんな近くで旅人を見かけるのは珍しい。道にでも迷ったかね。よければ城の者に案内させようか。」善王ディオニスは親切にほがらかに、かつ威厳を以て問うた。

2012-06-26 04:12:06
みやも(大阪府) @miyamo_7

「ぺっ! この俺様、セリヌンティウスがお前の世話になんかなるか! うんこ!」とメロスは友の名を騙りつつ足元に落ちていた犬の糞を王の顔に投げつけて、兵士たちが反応する間もなく一目散に駆け出した。もう二度と戻る事は無いまちに中指を立て、メロスはどこまでも走っていくのだった。(終)

2012-06-26 04:19:43
みやも(大阪府) @miyamo_7

力尽きて最後は適当になった

2012-06-26 04:22:27
みやも(大阪府) @miyamo_7

題:『せめて働けメロス ~あなたって、本当に最低の屑だわ!~』

2012-06-26 04:27:21