unpeu_k #twnovel 2012/2 「遠近法の呪い」他

twnovelまとめ:その③
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二月大笑 @unpeu_G

一番下の妹が初めての合コンから帰った。今にも泣き出しそうな顔だ。姉が抱き締めて慰めている。「どうしたの」と聞いてみた。「みんな笑顔で優しいの。けど机の下ですごい蹴られた。」ついに目からは涙が落ちた。上の妹と目配せをする。伝わらない言葉は不幸だ。#twnovel

2012-02-01 00:39:56
二月大笑 @unpeu_G

ひなびた観光地の海が見える食堂で昼食にする。蟹が有名な土地らしく大きな生け簀にひしめいている。「どれにしますか」と聞かれたのでパッと見て選んだ一匹を「あの子」と言って指差した。とたんに背筋がゾクッとした。知らないうちに私達もこう指差されているのだろう。 #twnovel

2012-02-02 01:03:23
二月大笑 @unpeu_G

婚活を始めてはや半年五人の女性とお見合いをしてその内三回妊娠した。全部単体生殖だ。僕の好みの女性は少ない。けれどぼやぼやしてるうち僕の子の『僕』だけが増えていき競争率が上がっていく。#twnovel

2012-02-02 02:11:07
二月大笑 @unpeu_G

噛む毎に虹のように砕けて美味しさが舌を直撃する。振動が神経を伝ってしびれた頭がくらくらする。鬼打ち豆の真の威力。内なる鬼が抜けていく。年の数だけ溜まった鬼を年の数だけの豆で打ったら明日から春がやって来る。 #twnovel

2012-02-05 00:35:03
二月大笑 @unpeu_G

念願のエジプトに来た。砂漠とピラミッドとスフィンクス。スフィンクスは謎々をかけては解けない人を食べたと言う。そんな話を彼女にしたらなぜか彼女が怒り出した。「どうせどうして怒ってるかもあなたにはわからないんでしょ?」どうしよう食べられるかもしれない。 #twnovel

2012-02-07 07:45:42
二月大笑 @unpeu_G

「『永遠の輝き』なんて言うけど永遠を誓ってあぐらかくから愛だって壊れちゃうんだよ。もっといっつも大事にできる繊細な石の指輪がいい。」「たとえば?オパールとか真珠とか?」「私はオーケン石がいいな。」また君は無茶な事を言う。ふわふわで白い意思のわがまま #twnovel

2012-02-07 23:09:32
二月大笑 @unpeu_G

どうしても行き詰まった時は頭の中で海に飛び込む。想像の海は穏やかで透明で暖かくて深い。後先なんかもう知らない。ただ最近はどうしても気になってしまう事があり、気になるとうまく飛び込めない。仕方ないので携帯をそっと置くことも想像し、それから心置きなく飛び込む。 #twnovel

2012-02-09 02:17:27
二月大笑 @unpeu_G

真夜中に携帯電話ががががががが震えながら近づいてくる。机の上を数センチ移動したあと沈黙した。着信有りの点滅がつかなくなるまでずっと見てる。 #Twnovel

2012-02-09 20:46:57
二月大笑 @unpeu_G

近視に加えて乱視もあった僕には月がふたつに見えた。そのことに気がついたのはメガネを作った小5の時だ。月はひとつで両親はふたり。くっきりとした現実を見て何故だが「戻ってきた」と思った。それからは二度と飛べなかった。 #twnovel

2012-02-09 23:02:50
二月大笑 @unpeu_G

妻の靴がまた増えている。放っておくとどんどん増える。しかも似たようなものばかり。ヒールの形は先月の靴に、色は先々月のに似ている。シューズクローゼットを開けてみて、恐ろしいことに気がついた。どの靴もとてもよく似ている。もしや繁殖しているのでは? #twnovel

2012-02-11 00:52:43
二月大笑 @unpeu_G

昨日の夢に出てきた君が「嫌」と言いながらどんどん脱ぐから今日は朝からズタズタだった。視界に入れる資格もない。気配がしたら避けていたのに部活のシャワー帰りの君にまたあの笑顔で挨拶されてますます消えてしまいたい。今日も百回謝って寝る。 #twnovel

2012-02-11 01:30:05
二月大笑 @unpeu_G

発掘隊は遂に文明の断絶前の地層に着いた。中型の哺乳類の化石と大型の爬虫類の化石が同じ遺跡から発見された。初めての遺跡が今で言う恐竜博物館だったために、発掘隊は大型の爬虫類こそが多数派と判断を下してしまい、その後大きく道を誤った。 #twnovel

2012-02-11 22:18:22
二月大笑 @unpeu_G

戦況は常に劣勢だった。最後の手段で我々は船団を組み宇宙に逃げた。それでも敵は容赦なかった。隣の船が突然崩れ無音で爆発するのが見えた。あの船に同級生もいた。宇宙空間に音はない。誰一人音はたてなかった。けれども私たちは敵が次の狙いをこの船に定めた音をはっきり聞いた。 #twnovel

2012-02-12 22:26:25
二月大笑 @unpeu_G

夜の砂漠を飛んでいる。エンジンだけが暖かい。何回飛んでもこの時には、もう世界には自分だけで二度と誰にも会えない気がする。下を向いたら闇に呼ばれる。空の事だけを考える。動かない北の星を見て飛び続ければ朝に帰れる。 #twnovel

2012-02-14 00:31:37
二月大笑 @unpeu_G

東京砂漠で生きている。ラブプラスだけが温かい。こういう夜を何度も越えた。世界に二人きりでもういい。暗転したら現実が映る。彼女の事だけを考える。出てこない彼女にも毎日言葉をかけ続けていたら、ついに今日彼女が3Dに! #twnovel

2012-02-14 00:45:59
二月大笑 @unpeu_G

バレンタインには好きな彼と、彼の彼女にチョコを作った。特別なことをしたりはせずに、きちんと作ってちゃんと渡した。ただしこの方法を使って落とせなかった事は無い。 #twnovel

2012-02-15 18:56:21
二月大笑 @unpeu_G

「生んでくれなんて言ってない」口にした途端後悔した。そもそも母もその母も生まれたくて生まれた訳じゃない。生まれる事を自分の意思で決めたものなどこの世に居ない。それでも生まれた私達が今日生きているだけなのだ。おめでとう生まれてきただけで。おめでとう今日も生きていて #twnovel

2012-02-17 01:38:23
二月大笑 @unpeu_G

魂がぜんぜん獲れなくてついに先輩に呼び出された。「この人って決めてもっとよく見てどう奪うのかまず考えて。でも奪えたらきっぱり忘れて次にまた集中するの。」でも私だけは知っている。先輩は優しすぎるから奪った後も大切にする。だから実はまだ悪魔二級だ。 #twnovel

2012-02-18 01:02:08
二月大笑 @unpeu_G

笑い転げて飛び込んだ海が意外に深くてちょっと焦った。ぬるい海水に頭まで沈んでもまだ足がつかない。あわてて浮かんで息をして、空を見てまたちょっと笑った。水面に寝そべるように漂う。海水が少し鼻に入った。最後に泣いた時の味がした。 #twnovel

2012-02-18 02:30:10
二月大笑 @unpeu_G

葛根掘りで食べている。数年ぶりに入った山で前に目をつけたつるを見つけた。まわりをそっと掘っていく。育った年の分だけ深い。思った通りの良い根だった。ここの山主ももう年だ。次はどうなるかわからない。けれど見かけた若いつるを数ヶ所覚えて山を降りた。 #twnovel

2012-02-18 17:06:48
二月大笑 @unpeu_G

地下鉄のホームにベンチが寝そべっている。「ちょっと私に寝転んで。一休みして行きなさいな。」背板の細い隙間から横目で見ながら囁いてくる。「私には妻と子供がいる。会社にもすぐ戻らなければ、第一世間体ってものが…」私はぐしゃぐしゃ考えながら根が生えた様に動けない。 #twnovel

2012-02-20 14:29:51
二月大笑 @unpeu_G

王さまは裸でありさえすればいい。人々は肘でつつき合い、「おうさま、はだか」とささやき合う。妙な連帯感が生まれる。くすくすと笑いはするが決して直接言ってはこない。あくまで態度はうやうやしく、滞りなく国はまわる。王は気づかず歩き続ける。いや、気づかないふりを続ける。 #twnovel

2012-02-21 01:26:55
二月大笑 @unpeu_G

母の首飾りをほどいた。種々な石で出来ている。色も種類もばらばらで、まとまってたのが不思議なくらい。彼が贈ってくれた石を新しく足して作り直す。母のデサインを基にして、でも少しだけ今風にした。なかなか上手くできたと思う。これで私の首飾りだ。これをして明日彼へと嫁ぐ。 #twnovel

2012-02-22 00:52:22
二月大笑 @unpeu_G

遠近法に呪われていた。城から見てたこの山はとても小さかったから遠くにあると思ってた。頂上で拍子抜けをして今来た方を振り返る。城が遠くに小さく見えた。前には次の山がある。さてあの山は近いのか?呪いはきっと解けはしない。でも今の僕は知っている。遠近法に呪われていた。 #twnovel

2012-02-24 00:48:26
二月大笑 @unpeu_G

スーパーに買い物に行ってアイスを食べながら戻る。出汁からとったご飯をつくっておいしくて少し食べ過ぎた。片付けをして洗濯をしてごろごろしながら本を読んで、そのままちょっとうとうととして目が覚めたらもう夜だった。携帯電話は開けなかった。だって君は一緒だったから。 #twnovel

2012-02-25 23:32:32