ランデブーのVバー接近の解説
- H_Hirayama
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#PSND ランデブーのVバー接近で、後ろから近づく場合に、小刻みに上向きの噴射(下向きの推力)を与える理由について。解説します。
2012-07-06 12:22:02ここでは宇宙工学者以外にも理解してもらいやすいよう、一般の物理学の慣例でXYZ座標をとって解説します。X軸が水平で右向きです。
ちなみに宇宙工学ではランデブー問題は「RSW座標系」を使うことが多いです。RSW系では、X軸が半径方向R、Y軸が進行方向S、Z軸が軌道面法線つまり角速度ベクトル方向W。そしてグラフは進行方向を左に描きます。北半球から見下ろしたイメージなのだと思います。きく7号やHTVのランデブー解説図もそうなっていると思うので、このまとめの図と見比べるときは左右逆に考えてください。
宇宙船がステーションと同じ軌道を同じ速度で少し遅れて飛行する場合、ステーションから見ると後方に止まって見えます。ここをスタート地点とします。進行方向をX、上をZとしましょう。
2012-07-06 12:22:15後の説明のため、一例として宇宙船に前方斜め下向きの初速度Vx=+1m/s,Vz=-1m/sを与えた場合の、ステーションから見た相対運動を解説します。(現実より速いですが、きりのよい数字で)
2012-07-06 12:22:24前向き速度による遠心力増加が大きいため、下向き速度成分に勝って、高度が上昇し始めます。 http://t.co/1N3zEE0H
2012-07-06 12:22:34高度が上がるとこんどは、角運動量保存(ケプラーの第2法則)のため速度が落ちます。 http://t.co/xANdF394
2012-07-06 12:22:45この、上昇して速度が落ちる効果のほうが、最初に与えた前向き速度より大きいので、全体として-X方向へ後退する運動になります。以後この曲線を繰り返し。この形を覚えておいてください。 http://t.co/Bh9ysL8D
2012-07-06 12:22:56さて、軌道の形の対称性を考えると、下向きスタートから上昇に転じて、元の高度(ステーションの軌道高度)を横切るとき、速度は斜め上向きVx=+1m/s,Vz=+1m/sになっています。 http://t.co/7ZzqpSlp
2012-07-06 12:23:10もしここで上向きの噴射(下向きの推力)で速度変化ΔVz=-2m/sを与えると、Vxはそのままで、Vz=-1m/sつまり、スタートの条件と同じになります。するとこんな軌道。 http://t.co/rGwZU8TJ
2012-07-06 12:23:23訂正「減点」→「原点」
あの曲線軌道は全体的に後退していますが、ステーション軌道より低い、前進している弧の部分をつなぎ合わせてゆくのです。ステーションを座標減点で描き直してみます。これが後方からのVバー接近。 http://t.co/l10DjGWB
2012-07-06 12:23:44この方式の優れている点は、もしも不具合が起こって、ΔVzが与えられなかったとき。自然に遠ざかる軌道に入るので、ステーションに対して安全なのです。 http://t.co/2Gkcr6Eb
2012-07-06 12:24:10下向きの推力は間欠的な噴射で与えますが、平均的に推力Fだとしましょう。ステーションの軌道半径R、速度V。宇宙船の質量m、相対速度vで接近するとすると、下向きに重力と推力、上向きに遠心力が釣り合うので、 http://t.co/ClXw2eGy
2012-07-06 12:27:16参考文献
河野功, 杢野正明, 鈴木孝, 小山浩, 功刀信
ETS-VII 自動ランデブ接近軌道の設計
日本航空宇宙学会論文集, Vol. 49 (2001) No. 575, pp. 432-437
http://dx.doi.org/10.2322/jjsass.49.432
松永三郎(東京工業大学)
宇宙機の相対運動(ヒル方程式、CW方程式の導出)
http://lss.mes.titech.ac.jp/~matunaga/Hill-Equation.pdf
↑ ウィキペディアに「ヒルの方程式」がありました。
CW解が無かったので加筆してあげました。