藤村龍至による、アオーレ長岡（隈研吾）のレビュー

Ryuji Fujimura @ryuji_fujimura

ところで、昨日は隈さんのアオーレ長岡見学会へ。長岡駅前に4月にオープンした複合公共施設。これがとても面白かった。

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まず駅から屋根付きのペデストリアンデッキで繋がっていて、そのまま3階のエントランスへ。中央にアトリウムがあり、周辺に市役所、市民交流施設、ギャラリー、体育館などが連続する。

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アトリウムを囲んでデッキが立体的に配置され、まるでショッピングモールのような空間構成。立体的でワクワクするけど、モノを押し付けられない清々しさ。

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アトリウムから直接体育館のアリーナに連続しているのは面白い。同じ床に市役所の受付とギャラリーとセブンイレブンとモスバーガーと市議会の議場が連続しているのはとても今風だが、今までありそうでなかった光景。

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実際、市議会の議員さんかたちからはとても抵抗があったそうな。隈さんの説明によれば、隈さんが2回ほど議会で説明を行ったが納得が行かず、東京の事務所まで議員さんたちが押しかけて陳情してきたという。

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確かに1階の商店街から見える位置に、コンビニみたいな構えで議場があるというのは相当なインパクトがある。「透明な政治」が単なる理念を超え、地方自治の新しいあり方を象徴する。

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東大建築学科出身で建設省出身の森市長の構想力によるところも大きいだろう。市長は、市役所を中心市街地に配置して800人の職員が働くことのインパクトを語っていた。

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市長の説明は面白かった。「中心市街地の活性化」には3つあるという。(1)業務の活性化、(2)品格、(3)商業の活性化。(1)(2)は市役所の仕事だが、(3)は商店主の仕事。アオーレのイベントで5000人が集まっても、それを引き込めるかどうかは商店主の努力次第。確かにそう。

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市長の都市構造に対する明確な方針に、隈さんの提案する中庭形式のモール型建築がぴったりとフィットしていることがよくわかった。とても面白かった。

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コンビニのような公共施設を作りたいというコンセプトは伊東豊雄さんの頃からあったが、せんだいメディアテークの立地はオフィス街だし、ロビーにカフェと売店があるのみ。商店街のど真ん中にモール型の公共施設を配置するというくらいに都市形態と建築類型がピタっと結びついた事例はなかなかない。

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という具合に感動していたんだけど、会場にいらしたヨコミゾマコトさんは「政治や背景の話はいいんだけど隈さんがやりたいことを説明したほうがいいんじゃないか」とおっしゃっていた。なるほど建築家の視点。

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この建築では和紙とか廃材のルーバーは極めて表層的に作られているけれども、これがないと市長の言う「品格」は生まれない。ソシキ派のモダニストだと均質な箱になってしまうだろう。政治家と建築家の個性とかセンスが重要な役割を果たしている。

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長岡のナカドマは、隈さんが亀老山展望台を設計した頃から言い続けてきた「反オブジェクト」というテーマの結実でもある。塚本さんの「みやしたこうえん」もそうだけど、建築家が言い続け、試み続けてきたことが実現するのを見るのは勇気が沸くね。

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こういう話は、個人的な趣味とか感覚とか信念だと矮小化してはいけない。盤石に見える制度や組織も、現状維持を続ければ必ず疲労し、腐敗する。だからこそ絶えず批評や実験が必要になる。それを提案するのは建築家や政治家の重要な役割。

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この週末の刺激が強かったため、ややヒートアップしてきたが、今日のところはこの辺で。