大津市いじめ事件と私刑の政治

大津市のいじめ自殺事件の反響について、私刑感情の政治化という観点からの、@heero108さんによる分析。第一次世界大戦後のドイツの義勇軍運動、暴力の経験史を研究されている方ならではの分析ということで採録させて頂きました。
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朝守飛阿弥 @heero108

滋賀大津中学生「自殺」事件加害者への、メディア・ネットを駆使した「集団報復」騒動。幸運にも懸命なフォロワーの方々のおかげで、今まで知らずにいることができたが、先程ついに知ってしまった…この現象は自分の研究テーマとも少なからずかかわってくるものと考え、あえてつぶやくこととする。

2012-07-09 08:00:58
朝守飛阿弥 @heero108

(承前)日本が近代国家であり法治国家である以上、被害者の関係者、被害者に同情した者、そして事件そのものに憤りを覚えた者が、加害者に直接「刑を下す」ことはできないし、またあってはならない。「私刑」を許容すれば今以上に社会に暴力が氾濫することとなり、死傷者数も増加することは確実。

2012-07-09 08:05:52
朝守飛阿弥 @heero108

(承前)その辺は誰もが承知しているところであろう。しかし、そうであるがゆえに生じる歯がゆさが、加害者への怒りを増幅させているのではなかろうか。そしておそらくそこには、単純な「メシウマ」感情だけでなく、純粋な想像力が介在している。もし被害者が自分の親族や友人だったら…という想像力。

2012-07-09 08:10:19
朝守飛阿弥 @heero108

(承前)しかしどんなに許せなくとも、どんなに歯がゆくとも、「良識ある大人」ならばいったん理性に立ち戻り、荒ぶる感情を抑えながら、今度は自分が加害者にならぬよう努めねばならない。加害者の親族が所属する組織まで晒し、目の敵にし、誹謗中傷を繰り広げることが、問題解決につながるのか。

2012-07-09 08:17:02
朝守飛阿弥 @heero108

(承前)そして今回の「報復」で一番やっかいなのは、この現象に少なからずの子どもたちが関与しているであろうこと。大人になら「わきまえ」を求めることができる。しかしそれを子どもたちにも同様に求めることができるのか。非常に難しい問題で、私自身も回答を用意できない。

2012-07-09 08:21:33
朝守飛阿弥 @heero108

(承前)もし中高生の頃の自分が今の日本に生きていて、今回の事件に接したとすれば…おそらく怒りに燃えながら、自分の信じる「正義」を求め、スマホの画面とにらめっこしながら日夜「報復」に明け暮れていることだろう。そしてそうした中高生が、おそらく今、ネット上にはたくさんいる。

2012-07-09 08:25:10
朝守飛阿弥 @heero108

(承前)そして私が本当に危惧するのは、そうした純粋な怒りや正義感を一定の政治的方向に水路づけ利用しようとする力学が、目下の状況において多分にはたらいていること。担任が「人権派」で朝鮮史やハングル語を教えていたという情報や、大津市長が民主・社民推薦であることが執拗に強調される。

2012-07-09 08:28:35
朝守飛阿弥 @heero108

(承前)勿論「人権派にもかかわらず」という批判は成立し得るが、それでは「反人権派」なら許されるのかという問いは常につきまとうし、逆に「やっぱり人権派は人殺し」とか、より進んで「人権派の反日サヨクがチョンと組んで日本人の男の子を殺した」とかなってくると、これはもう陰謀論でしかない。

2012-07-09 08:32:59
朝守飛阿弥 @heero108

(承前)そして私が一番危惧するのは、そうした政治的陰謀論が、今回の事件に対する人びとの純粋な怒りや正義感を養分としつつ、ネット上での「報復」という嵐の「目」をゆりかごとしながら、怪物のようにすくすくと成長していくのではないかということ。それ程のインパクトを、この事件はもっている。

2012-07-09 08:38:37
朝守飛阿弥 @heero108

(承前)万が一そうなれば、被害者の男の子ももはや被害者でなくなる。彼の像はその在りし日の姿を離れ、「聖性」をまとう「国民的犠牲者」への変質を余儀なくされる。悲しむべき尊い命の喪失としての死が、重い教訓として受け止められることなく、いつの間にか政治の道具として利用されてしまう。

2012-07-09 08:57:02