若松孝二監督『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』感想

2012年7月11日。テアトル新宿にて観ました。
1
島田 暁 @Akira_Shimada

テアトル新宿サービスデー(水曜1000円)を活用して、若松孝二監督の『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』を観に行きました。率直に言うと、この解釈って何が新しいんだろうというか、この三島の歴史的位置づけは既に多くの人がやってきてるのではないかと。その意味では物足りなかった。

2012-07-11 22:28:23
島田 暁 @Akira_Shimada

ただ、三島由紀夫を演じていた井浦新さんの演技に、理屈を超えた部分で「生きてる感じ」があり、特に東大全共闘と三島が議論する場面の迫真性は凄かった。理論をぶつけ合っているのに、ちゃんと「何が語り合われているのか、存在が語ってる」のです。あの難場面を成立させてるだけでも一見の価値あり。

2012-07-11 22:31:48
島田 暁 @Akira_Shimada

特に印象に残ったのは三島瑤子さんを演じた寺島しのぶさんの所在なさげな感じ。「男性監督が描く日本映画の女性像」の王道をパロディにして誇張したかのようで、その「浮き方」が逆にリアリティになってた。実在の人物だけどパブリックな場面で謎が多い瑤子さんを描くとしたら、ああなるだろうと納得。

2012-07-11 22:36:47
島田 暁 @Akira_Shimada

僕は三島由紀夫というのはセクシュアリティがバイセクシュアルだっただけではなく、性自認もきっと復性的だっただろうということを作品から感じるので、おそろしいくらいにグロテスクに女性登場人物の心理を描き出し戦慄させられる場合か、あるいは全く興味なく抽象的に突き放すかどちらかだと感じる。

2012-07-11 22:41:06
島田 暁 @Akira_Shimada

若松孝二監督の『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』における三島瑤子さんの描写は、その後者。描写しようという興味があまり感じられない抽象化された女性像という感じで、三島作品によく見かけられるタイプの女性描写であったという意味で、リアリティがあったと感じた。

2012-07-11 22:42:52
島田 暁 @Akira_Shimada

ただ、やはり「セクシュアリティと性自認が複雑で、社会的に扱われる性を極端に男性化しようとした三島由紀夫」という、ジェンダーやセクシュアリティの面に着目して人物像を捉え返すことこそが、これからの三島由紀夫描写に必要なことではないかという確信のようなものは得た。それが無いと進歩がない

2012-07-11 22:47:45
今野卓 @JETIKERU

@Akira_Shimada この映画すでに見ましたが、一口に感想を言えば「三島の哀れさ」でした。市ヶ谷での完全無視、東大での全共闘のかみ合わない議論。三島はいったい何を求めたのでしょうか?本当の国家の核となるものを天皇に求めたとよく言われますが、本当にそうなのか。

2012-07-11 22:49:32
今野卓 @JETIKERU

@Akira_Shimada 三島夫人については、今日までもいっかんして三島の同性愛的な部分は全面否定と聞きます。三島夫妻の二人の子どもはどう思ってるんでしょうか。三島夫人が高名な日本画家の杉山寧の娘であることからして、もう少しお嬢様っぽくしても良ったとは思うのですが。

2012-07-11 22:53:05
島田 暁 @Akira_Shimada

.@JETIKERU 映画の公式ガイドブックも買って読んだのですが、理論構築して三島由紀夫を分析することももちろん必要ではありますが、同じことの繰り返しになっていて「理論からはみ出す事」の複雑性にもっと果敢に乗り出さないと、真の三島由紀夫像って浮上しないだろうとは感じました。

2012-07-11 22:53:10
島田 暁 @Akira_Shimada

.@JETIKERU 公式ガイドブックに菅孝行さんが(三島の自決を)「ナルシスト三島の老醜への恐怖だとか、森田必勝との同性心中だとか、作家的限界を感じて死による生産を選んだのだとかいう解釈は通俗で不毛であり」と書いてあるのですが、僕にはどれも間違いではないと思えます。

2012-07-11 22:55:55
島田 暁 @Akira_Shimada

これまでの日本映画批評や作家研究が「通俗で不毛」と切り捨ててきた要素にこそ着目し直したい。それを語る主体が「どういったセクシュアリティで、どういった性自認であるか」ということを相対化せず絶対化した上で、自身の感知できないことを平気で切り捨てて来た傲慢さと怠慢さを自覚して欲しい。

2012-07-11 22:59:41
島田 暁 @Akira_Shimada

.@JETIKERU 瑤子さんがお亡くなりになって以降、三島由紀夫のセクシュアリティに関しては真正面から言及する書籍が複数、出版されるようになりました。封印されていた(と言われている)『憂国』はDVDで流通し始めましたし、ポール・シュナイダーの『mishima』も書店で買えます。

2012-07-11 23:03:47
島田 暁 @Akira_Shimada

若松孝二監督の『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』の三島像には論理破綻がない。説明ができてしまう。「一貫性のある生き方を貫いた人物」として造型されているところが物足りなさの最大要因。あれだけ様々に破綻しまくっていて多面体である人物像を「掴めたかのような錯覚」に陥るのが残念

2012-07-11 23:19:32
今野卓 @JETIKERU

@Akira_Shimada 若松はそこを逆に狙ったのかもしれません。三島は色んな面で悩んだはず。しかし、そうでなく、いっかんしたものがあり、その最終局面が自決(切腹)ということを強調することにより、三島のある種の陳腐さを映像化したような気がしてなりません。主演が井浦新だし。

2012-07-11 23:23:21
島田 暁 @Akira_Shimada

.@JETIKERU 若松監督の「過去の総括」に三島が使われた、という側面も強いのではないかと感じました。本当にそんな単純な捉え方でいいのだろうか、人ってもっと「わけがわからない」ものじゃないかと。人間を理解した気にさせる映画って陳腐です。だからこの映画の三島像はたしかに陳腐。

2012-07-11 23:27:27
今野卓 @JETIKERU

@Akira_Shimada 三島のセクシュアリティについて、正面から語られるようになりつつあることは歓迎。しかし、文壇を中心にメインストリームは三島の「思想」を重視しているような気がしてならない。

2012-07-11 23:26:58
島田 暁 @Akira_Shimada

.@JETIKERU 今回の映画でその方向性への「揺り戻し」が起きてしまったことを強く感じてしまいました。「思想」で人間を捉えられる、語りきれると思ってしまうのは、それこそ「20世紀的な所業」ではないのかと。

2012-07-11 23:31:47
今野卓 @JETIKERU

@Akira_Shimada 石原慎太郎が五木寛之との対談で「丸山なんとかがついてからおかしくなったよ」みたいな発言はあった。石原は三島の思想、まさに憂国には共鳴するが「死んでしまったら何もできなじゃないか」と。石原リアリズムに、三島の複層的なイデオロギーは通じなかった。

2012-07-11 23:37:40
島田 暁 @Akira_Shimada

.@JETIKERU むしろ死んだから、より複層的な謎が謎を呼び、こうして語り継がれているのではないかと思うので、三島由紀夫はまったくもって死んでないというか、本当に計算高かったのだなと僕は思っています。永遠の命を手に入れてる。

2012-07-11 23:45:38
今野卓 @JETIKERU

@Akira_Shimada 私は個人的には三島を思想家というくくりではみたくないです。あくまで作家三島由紀夫は好きです。特に『金閣寺』なんかは好き。思想を行動に移していくことはとても困難性が伴う。そこをブレークスルーした人こそ新の思想家。また語り継がれる人こそが真の思想家では?

2012-07-11 23:43:42
島田 暁 @Akira_Shimada

.@JETIKERU そうですね。思想家というか、三島由紀夫という「存在そのもの」が「不朽の名作」と同じくらいに人間のあらゆる複雑な面を「垣間見させてくれるもの」としての命を持っていると僕は思っています。

2012-07-11 23:48:01