2012年7月13日

嫉妬する父

奇しくも、病院坂と同じく「父との関係構築」が伊丹十三のテーマだったように思う。
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カルヴァドス @cornelius0321

①先日2週にわたってNHKで伊丹十三の特集を放送していた。没後15年。伊丹十三は、俳優、デザイナー、作家、そして映画監督までこなしたマルチ・タレントとして知られている。父は巨匠映画監督だった伊丹万作である。

2012-06-03 02:04:45
カルヴァドス @cornelius0321

②立派な父を持つ息子ならその父を自慢したくもなるだろうが、伊丹十三は父万作について、多くを語りたがらない。

2012-06-03 02:04:31
カルヴァドス @cornelius0321

③十三は父の万作から、いつも厳しく叱られていたという。十三が愚鈍な子供ならそれもわかる。でも十三は成績優秀で手先も器用だった。それなのになぜ、父の万作は息子に厳しく接したのか。

2012-06-03 02:04:23
カルヴァドス @cornelius0321

④昔気質の父親なので子供への愛情表現が下手だということもあるだろうが、万作は十三の才能に「嫉妬していた」からではないか、というのが私の感想だ。

2012-06-03 02:04:14
カルヴァドス @cornelius0321

⑤父が息子に嫉妬するということはあると思う。私が真っ先に思い浮かべるのは、映画『魔界転生』だ。ここでは柳生但馬守(若山富三郎)が息子十兵衛(千葉真一)の恐るべき剣術の才能に嫉妬し、魔界の者に転生してまで十兵衛と剣を交えたいという設定になっていた。

2012-06-03 02:04:04
カルヴァドス @cornelius0321

⑥子供のころ模型飛行機を上手に作った十三は、母親にそれを見せようとしてその飛行機が置いてあった縁側を離れた隙に、父親の万作がそれを故意に踏み潰してしまっていたという話もあった。私には、この模型飛行機のエピソードも父が息子に嫉妬していたことの証拠に思える。

2012-06-03 02:03:50
カルヴァドス @cornelius0321

⑦万作は十三への愛情を嫉妬という形でしか表現できなかった。そして十三はそのような屈折した父の愛情を受け止めることができず、長いあいだずっと「父から褒めてもらえない」「父から疎まれている」と思い続けてきた。

2012-06-03 02:03:39
カルヴァドス @cornelius0321

⑧親が子にどう接するかは、その子に大きな影響を与えると思う。単純化して言えば、親子関係は次の4つのパターンがある。「A親に肯定してもらえなかったけど、その子供は自分自身のあり方を肯定できた」、「B親に肯定してもらえなかったから、その子供も自分自身のあり方を肯定できなかった」、

2012-06-03 02:03:28
カルヴァドス @cornelius0321

⑨「C親に肯定してもらえたから、その子供は自分自身のあり方を肯定できた」、「D親に肯定してもらえたけど、その子供は自分自身のあり方を肯定できなかった」だ。明らかに伊丹十三はBに該当する。

2012-06-03 01:55:58
カルヴァドス @cornelius0321

⑩父に肯定されなかった息子は、自分自身の存在を肯定的に受け止められず、心に大きな欠落を抱えたまま生きることを余儀なくされる。

2012-06-03 01:55:43
カルヴァドス @cornelius0321

⑪伊丹が多方面でマルチな才能を発揮させているのも、「自分の心の隙間を埋めるパズルのピースはどれなのか」と自問しながら、その心の欠落を埋める作業のような気がしてならない。

2012-06-03 01:55:29
カルヴァドス @cornelius0321

⑫そしてまた、父に肯定されなかった息子は、自分自身が息子を持つ父になった時も、その息子と「どう接してよいかわからなくなる」。宮本信子と結婚したのを機に湯河原の山荘へ引っ越した伊丹十三は、豊かな自然環境の中で二人の息子を育てることにした。

2012-06-03 01:55:13
カルヴァドス @cornelius0321

⑬幼い息子たちが学校へ行くときは、首に「自然食で育てているので、むやみにお菓子を与えないでください」というプラカードをぶらさげさせていたという。

2012-06-03 01:54:55
カルヴァドス @cornelius0321

⑭「何もそこまでしなくても」と思うが、これも父親であることはどういうことかが分からないまま父親になった伊丹十三の「試行錯誤」であるような気がする。芸術の分野で素晴らしい器用さを発揮するにもかかわらず、家族関係や子育てに関する限り、伊丹十三はあまりに不器用だ。

2012-06-03 01:54:38
カルヴァドス @cornelius0321

⑮親子の血のつながりを「命のリレー」という言葉にたとえることがあるが、それを使うなら、父から息子、そしてその息子からそのまた息子へと、ぎこちない形でバトンタッチされていく関係性。

2012-06-03 01:54:21
カルヴァドス @cornelius0321

⑯伊丹十三は、もともと伊丹一三(いたみいちぞう)という芸名だった。父伊丹万作と、阪急グループ創始者で大実業家の小林一三にちなんで、大映社長の永田雅一がこの芸名にしたという。

2012-06-03 01:54:07
カルヴァドス @cornelius0321

⑰その後、マイナス(-)からプラス(+)に転じたいとの思いで伊丹は、一三から十三にしたということになっている。でも私はこの改名の理由は「嘘」だという気がする。小林一三や永田雅一といった大物のメンツをつぶすことにもなりかねない。

2012-06-03 01:53:50
カルヴァドス @cornelius0321

⑱一三も十三も、どちらも「じゅうさん=13」だ。父万作が死去したのは、伊丹が13歳のときである。父が亡くなり、自分自身のあり方を模索する「はじまりの年齢」である一三=十三を捨て切れなかったのではないか。

2012-06-03 01:53:36
カルヴァドス @cornelius0321

⑲伊丹十三の死については今もいろんな憶測があるが、どれもうわさの域を出るものではない。伊丹十三の心の欠落を埋めるパズルのピースは、父万作から肯定的に褒めてもらうことしかないように思われる。万作がその言葉をかけることなく亡くなったことが、伊丹十三の悲劇だと私は思う。

2012-06-03 01:53:20
カルヴァドス @cornelius0321

⑳「私自身は、ほとんど無内容な空っぽの入れ物にすぎない」-伊丹はエッセイにそう書いている。パズルのピースは、埋まらないままだ。<この話題終わり>

2012-06-03 01:53:06

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