【空想の街】　黒狐の更夜（こうや）

@sakutukixxx

ここはどこであろうか。目を開けて、我は明るい空を見上げる。守っていた社が焼けて放り出されたのが一週間前。今度建つのは稲荷神社ではないから、神使としての我も必要なくなった。今頃狛犬が来ているであろうよ。さて、ところでここはどこなのだ？ #空想の街 #黒狐

@sakutukixxx

【更夜（こうや）設定】 紅の瞳の黒狐。稲荷神社の神使をしていたが、社が焼けたためクビになり旅に出た。現在は一匹でさすらっているため妖力が足らず、人の姿をとる時は十歳くらいの少年の姿。「本当はもっと、こう、大人で威厳のある姿にもなれるのだぞ！社さえ決まれば！」 #空想の街 #黒狐

@sakutukixxx

ふらふらしているうちに、見知らぬ街に来たようだ。随分風変わりだが、賑わっている。こういう人の活気は我らの好むところだ。しかし、やはり人の姿の方がいいだろうな。変化の術を使ってみたが、どうにも視線が低い。・・・子供の姿ではないか。しかも耳と尻尾が隠せておらぬ。 #空想の街 #黒狐

@sakutukixxx

なんかいい匂いがする。出汁の匂いと、あげだ。だがこの街の金を持っていない。何気ないふりをしてうどん屋の前を通りすがると、赤い髪したタヌキの子供が見えた。タヌキがきつねうどんを食っている。妙にツボに入って、思わずにやけてしまった。 #空想の街 #赤いタヌキ #うどん屋 #黒狐

@sakutukixxx

この街では祭りがあるらしい。物陰でこっそり試してみたら、なんとか浴衣の姿になれた。これで祭りに来た子供のように見えるであろうか。我は通りの店の硝子に姿を映してみる。耳と尻尾が生えた黒髪で紅い目の子供がこちらを睨み付けておる。ふむ。我ながら可愛いげがないのう。 #空想の街 #黒狐

@sakutukixxx

そういえば、風船をもらっておいでと道行く人に教えてもらったのだった。どこへ行けばいいのかわからぬが、とりあえず歩いてみようか。あとでうどん屋にも顔を出そう。その時、辺りがわあっと沸いた。つられて空を見上げると、白鴉が渡ってゆく。ああ、白い羽が美しい。 #空想の街 #黒狐

@sakutukixxx

白鴉の白が目に染みる。我は黒い。神の使いとなるには不浄であると、生まれ落ちたときに決められた。そのまま闇に落ち、人を害するあやかしとなるのだろうと言われた。だが、我を人柱の姫神が救ってくれたのだ。小さく訪れるものもほとんどいない社であったが我は幸せであった。 #空想の街 #黒狐

春森しゆう @junju_usako

苺色の着物を着てお賽銭箱の前に立つ。 お祈りは「みんなが平和に暮らせますように」 百合の髪飾りが白く光る。肩までの黒髪との対比が鮮やかで。 たっと駆け出した少女の頭上、白い鳥が舞っている。 #空想の街 #苺 @sakutukixxx

@sakutukixxx

共に居たのは人の時間で五十年ほどであったか。我と共に仕えるのを狐たちは嫌がったため、姫神の神使は我しかおらなんだ。だが、幸せであった。やがて姫神は離れた社の主の元へ嫁いだが、我はついて行けるはずもない。我のせいで肩身の狭い思いをすることは我自身が許せなんだ。 #空想の街 #黒狐

@sakutukixxx

そして我は主のいない社に居座ることとなった。要は縁起の悪い黒狐を出歩かせるよりはマシと思うたのであろう。だがそれも、社の火事でおしまいだ。隣村の社の神が口添えしてくれなんだら、我は恐らく封じられておったであろうな。それほどに忌み嫌われておったのだ。 #空想の街 #黒狐

@sakutukixxx

神曰く、「神に仕えた五十年は報われねばならぬ。社を持つまでその力の半分を封じれば否やはあるまい」神狐たちが逆らえるはずもない。そして、かの神は我に言ったのだ。「今一度、神に仕える意味、己の力の意味を問い直すため、旅に出るがよい」まあ、体のいい厄介払いだの。 #空想の街 #黒狐

@sakutukixxx

社の火事の後、呆然としておった我をあのじじい・・・いや、神は放り出しおったのだ。なすべきことなど知らぬ。我は姫神のために力を使えればよかったのだ。だから、社を捨てられなんだ。ずっと思い出を守りたかった。だが炎はあっという間に大事なものを灰にしてしもうたのだ。 #空想の街 #黒狐

@sakutukixxx

ぼんやりと白鴉を見送っているうちに、辺りは夜になったようだ。だが、なんだ。きな臭い。火が？暗いはずの空が焼けておる。火事か！？胸が騒ぐ。また、大事な何かを誰かが失うのか？あのような苦しい思いを誰かがするのか？我は駆け出していた。 #空想の街 #黒狐

春森しゆう @junju_usako

#空想の街 男の子を追いかけていたのにいつの間にか見失った。子供とは思えない速さだったからだ。 「はー、はー、」上がった息を整え顔を上げた苺の眼に #ブックカフェ黒猫 の看板が入った。 「素敵なお店、ここ子供が入ってもいいのかな…」 #苺

@sakutukixxx

思わず駆け出していた足が、次第にゆっくりになり、やがて止まった。我は何をしている？何もできはしないのに行ってどうなるというのだ。きびすを返し、来た道を戻る。うどん屋はまだやっているだろうか。この街のことを聞くためだけでも、入って良いだろうか。 #うどん屋 #空想の街 #黒狐

@sakutukixxx

頭が冷えれば周りが見える。夜が更けたら随分と人が少ない。風船といい、この静けさといい、この街は何やら変わっておる。うどん屋はしまっておるようだ。そうだ。明日、一杯所望してみようか。労働を申し出れば引き換えに食えまいか。店の軒先を借りて目を閉じる。 #空想の街 #黒狐 #うどん屋

@sakutukixxx

いきなり街に迷い込んだ黒狐、うどん屋の軒先を勝手に拝借して今夜は寝ます。元々、狐だし、神社でも社の前に立ってる狐の石像、あれが宿る場所だったので、外でも平気のへいざですwww #黒狐

チーズトースト @_urt

「朝だからね、空いてるかな～？お風呂屋さん って、わっ！！ ぉ…、ぉ親方ァア！！ こ、今度は黒い…！黒い子です！黒い子が店先にぃ…！！」　むゅ。黒い子。耳！尻尾！出ちゃってるっ！ @sakutukixxx #空想の街 #黒狐 #うどん屋 #赤いタヌキ

チーズトースト @_urt

テル慌てんぼう。また走って行っちゃった。 あっ、セイだ。セイ、セイ！この黒い子、耳と尻尾があるよ！　「おやおや、本当だ。どれどれ、うーん？ まだ寝てるようだね。中で寝かせてあげよう。よいしょっと。」 @sakutukixxx #空想の街 #黒狐 #赤いタヌキ #うどん屋

@sakutukixxx

ああ、もう朝か。耳を振って朝露を落とし、顔を上げるとなにやら凝視されている。いい機会であろうか。「店はいつからであろうか。その・・・金はないのだが、何かしら手伝いをするので食わせてもらえぬだろうか」 @uryuuraita #空想の街 #黒狐 #うどん屋 #赤いタヌキ

チーズトースト @_urt

起きた！　「おや、赤い方の坊は坊主と一緒にお風呂に行っといで。」　分かった！テル、お風呂だ！　〈ふふ。ねぇ、セイ。いい加減、テルの事はテルと呼んでおやりなさいな。分かりづらいわ、ねぇ？タヌキさん〉　さすが、すずね！いいこと言う！ #空想の街 #黒狐 #赤いタヌキ #うどん屋 #狐

チーズトースト @_urt

「これはこれは、また…。」〈セイ、この子…。〉「すずね、もしかして、この坊やは、きつ…？ あぁ、いやいや。すまないね。お金なんか良いから、食べておゆき。開店まではまだ時間があるから、うちの普通のご飯でよければ。」 @sakutukixxx #空想の街 #黒狐 #うどん屋 #狐

@sakutukixxx

「ありがたい！」思わずがばりと顔を上げ、いやいや落ち着けと自分を制する。これでも神使狐の端くれ。「申し訳ない。いただきます」店の主人はとてもいい方のようだ。密かに店の繁栄を祈る。力が弱くとも、祈りは無ではない。 @uryuuraita #空想の街 #黒狐 #うどん屋 #狐

@sakutukixxx

「この街は始めてなのだが、行っておいたほうがいい場所はあるだろうか。あと、風船とはなになのだろうか」先に用件を言っておかねば、この店に漂ういい香りで気もそぞろになりそうだった。尻尾がついふわんふわんと動く。 @uryuuraita #空想の街 #黒狐 #うどん屋 #狐

チーズトースト @_urt

「ゆっくりお食べ。」〈セイ、この子…。今、お社がないみたい。私も元々、この世界の狐じゃないから、この辺の社はよく分からないけど…そう感じる。あぁ！お姉ちゃんがいれば、分かるかもしれないのに。神様なんだもの！〉 @sakutukixxx #空想の街 #黒狐 #うどん屋 #狐