気がつくと其処は見覚えのない、暗い室内だった 正確には見覚えがないわけではないが…… 彼は一度この部屋に入ったことがある。それはこの部屋が彼の妹の部屋だからだ。 何故こんなところに?と思考がやっと正常に動き出したところである異変に気づいた。 身体が動かせない 何故こんなところに?
2012-07-15 01:23:53親が異形の化物、そんな彼が取り乱して冷静を欠くことはなかったが動揺しなかったと言われれば嘘になる。 まず行動よりも先に考えることが大事だ。自分は先程まで何をしていた?必死に記憶を遡るがリビングで水を飲もうとした所からぷっつりと記憶が途絶えている。 まさかその直後に……?
2012-07-15 01:35:55これ以上は考えても無駄だ。ここでやっと行動に出る。 まずは身体が動かない原因を確認……いや、確認をする必要はなかった。 彼は知っていた。この身体に巻きつく太い縄のようなモノを。 生き物のように不気味に脈打つ異形のナニカ。 それはまさに触手と呼ぶに相応しいモノであった。
2012-07-15 01:40:24「あら兄さん、もう起きたの?」 あぁやっぱりか、内心望みが絶たれたような、嫌な予感が的中してしまったような複雑だがすくなくとも良くはない感情に溜息を吐きながら声の聞こえた方向へと目を向けた。 ……近くないか? それは彼が予想していたよりも近い位置に、ほぼ密着に近い距離にいた。
2012-07-15 01:45:36「……エミリア、何のつもりだ?」 疑うまでもなく彼をこのような状態にした犯人はこの少女と呼ぶには大人びた雰囲気を纏った彼の妹、エミリアであった。 「兄さんが好きだからに決まってるじゃない。あ、異性として」 言い返そうと口を開いたところで言葉を付けたされ見事に反論を阻止された。
2012-07-15 01:54:45「俺も好きだぞ、とか言ってはぐらかすのはもうやめたら?流石に何度も多用するのはよくないわよ」 反論できない。この程度で何も言い返せなくなるのではあまりにも情けないが、彼は妹に甘い。本気で妹を言葉で負かすことすら躊躇われるほど妹が可愛いのである。 ただ、妹とは好きの方向性が違うが
2012-07-15 02:00:13「そうそう、どうせいつもみたいに逃げられるだろうと思っているなら無駄よ。上り階段撤去したから」 その何気なく言われた発言により彼は身体が凍りついたような錯覚を受けた。 ここは自宅で言う所の地下。自宅から出るには一旦一回へ戻らなければならないが階段と呼ばれるアイテムがなければ……
2012-07-15 02:08:02どうせこの聡明な妹のことだ、頑丈な縄もギロチンもアイアンメイデンもなければ備蓄にストマフィリアやふかふかパンも用意して確実に餓死もしないようになっているのだろう。 しかしここまでくると妹に対して可愛いとか言っていられない。それどころか恐怖で身体が震えそうになってしまう。
2012-07-15 02:13:16……やべぇ超怖い 生憎魔法はつい最近とある依頼でほぼ使い切ってあるためマナの反動で死ぬことはできない。いっその事硫酸でも飲もうかと考えたが触手に拘束されて動けない上に……道具が全て没収されている?武器も防具すらもない。あのセブンリーグブーツ神エンチャついてるんだぞ!何処にやった!
2012-07-15 02:19:23「どうせ兄さんにはもう必要ないだろうし装備ならこれになったわよ?」 そんな彼にとって絶望的とも言える発言をしながら見せたのは大量のスペン、違う、アルローニアだった。 何故アルローニア?と聞こうと口を開こうとするとその前に彼女が微笑みながら説明した。
2012-07-15 02:28:51「兄さんにはもっと魅力的になって貰いたいから」 お前、俺もう魅力520もあるんだよ馬鹿。と言いたくなったが寸でのところで思いとどまる。可愛い妹に馬鹿なんて言えない。 何処までも妹馬鹿な彼はそんな些細なことで反論をやめてしまったりする。賢い賢くない以前に馬鹿であった
2012-07-15 02:32:10突然エミリアがそのか細い腕からは想像できないような力で首を締めてきた。 呼吸ができないことよりもその圧迫感に苦しみ悶えるが触手に拘束されているために振り払うことも叶わない。そんな中、頭に直接響いてくるようにエミリアの声が聞こえた。 「私以外の女にも優しいのはちょっと許せないわね」
2012-07-15 02:40:17「殺しはしないわよ?這い上がっちゃうでしょうし」 殺してくれたほうがよかった。このような状況でこんなことを考えていられるのは世界広しといえども彼だけだろう。彼女もそれに気づいたのか巻きついて拘束していただけの触手で身体を締め上げてきた
2012-07-15 02:48:45「ぎっ……!?」 初めて彼の口から苦痛に呻くような声が漏れた。小さな声だったが至近距離にいた彼女が気づかない筈もなく、玩具を買って貰った子供のように嬉しそうな笑顔を見せた。 「まだ私の知らない兄さんを見れたわ……」 みしみしと音をたてて締め上げながら愉快そうにくつくつと笑っていた
2012-07-15 02:53:21彼女はご満悦のようだがこちらとしてはたまったもんじゃない。 まだ力強く身体を締め上げる触手は全く緩まる気配がない。 では触手を操る本人は? 恍惚とした表情で彼の顔に頬擦りするようにして擦り寄っている。 しね、口にこそ出さないが流石にいらっとしたようである。
2012-07-15 03:04:51しかしその頬擦りのおかげで満足したのか触手の締め上げる力も段々と弱まってきた。 しかし彼女の『お仕置き』はまだ終わっていなかった。 触手が振りほどくことはできないが初期と同じ程度の力にもどった時、異変は起こった。
2012-07-15 03:13:03実は目覚めた直後から服がじっとりと湿っていたのだが、その時は汗でもかいたのだろうと多少の不快感を気にすることはなかったのだが今は違う。明らかに服が濡れている。 しかもその原因は触手から滴る液体であることも今更ながら気づいた。一体これは何なのか
2012-07-15 03:17:37「それはただの潤滑液だから気にしないで」 潤滑液と言われて気にするなと言われる方が無理だろうがそれを言う前に彼女はさらに言葉を続けた。 「ところでこれ、どうしたの?」 笑顔を崩さぬまま今まで何かを隠していた布を取り払った。其処には…… 100955服の祝福された媚薬があった
2012-07-15 03:23:12時が止まった 実際には数秒固まっていただけだがそれは何時間にも何日にも感じられた。媚薬が見つかる程度なら言い訳できる。しかしこれはその量が問題であった。こんな量よほどの執念がなければ収集できない。しかも祝福。何がしたかったのか、色々と気になるが彼が話すことはないだろう
2012-07-15 03:28:13しかしここで彼はある異変に気づいた。 この媚薬、殆どが中身のない殻の状態だった。何に使ったのか?もしや触手の液体?それならもっと早く効果が現れるはずだ。 周りの状況を忘れて思考を張り巡らしている間に彼女は不気味に微笑みながら彼ごと小さな室内を出た
2012-07-15 03:33:24「兄さん、別に媚薬の所持で怒ってるわけじゃないんだよ?」 まだ思考に没頭している彼に話し掛け無理やり意識を現実に向けさせる。 ……ここは? 一瞬疑問に思ったがすぐに何処なのかは把握できた。シャワー、脱衣カゴ、タオル、そして媚薬が注がれた浴槽、ここは浴室なのだろうと……ん?
2012-07-15 03:36:59「おいちょっと待て、アレはなんだ」 恐らく今回の騒動で初めて心の底から驚いたような態度で彼女に訊ねた。 しかし答えはなく、その代わりに彼の服を剥ぎ取り始めた。 抵抗は拘束によりできない。叫び声をあげたりしたところでその事実は変わらず、衣服を全てひん剥かれた。 もう泣く寸前である。
2012-07-15 03:43:36しくしくと擬音が聞こえそうな泣き方をしている間に彼女自らも着ていた衣服を脱ぎ払った。 一応触手で見えてはいけない部分は隠しているが儀礼的なモノであって本人としては隠す気はあまりないようだ。 そして…… 「久しぶりに一緒にお風呂に入ろう?」 死刑宣告が告げられた
2012-07-15 03:51:09昨日の続き? 死刑宣告の後、彼女は間髪入れずに彼を浴槽に沈めた。勿論触手に巻きつかれた状態のままで。 「ーっ!!?」 溺れそうになるが流石にその辺りは考えているのかギリギリ溺れない程度に沈められ、パニックを起こそうとも溺死はできなかった。
2012-07-16 01:05:38「湯加減はどうかしら兄さん」 呑気にそんなことを訊ねるが沈められている方からしたらたまったものではない。 もともとこの媚薬は飲むだけでなくぶつけられただけでも結構な効果があるのだ。それに全身を沈め、それだけでなく目や鼻、口からも侵入してくる。
2012-07-16 01:11:24