茂木健一郎（@kenichiromogi）さんの連続ツイート第６６４回「自己超克と、ライバル」

茂木健一郎 @kenichiromogi

しゅりんくっ！　ぷれいりーどっぐくん、おはよう！

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連続ツイート第６６４回をお届けします。文章は、その場で書いています。本日は、昨日の集英社の取材の際に改めて思ったこと。

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じら（１）新著『挑戦する脳』に絡んで、徳間書店のアサヒ芸能が「挑戦を支える本」についての取材をしてくださるというので、集英社に行った。そしたら、鯉沼さんが、「今日の取材、永江朗さんですよ！」と言うのでびっくり。永江さんと言えば、ライター界の大御所。「お久しぶりです！　永江さん！」

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じら（２）聞くところによると、永江さんはアサヒ芸能でレギュラーの記事を持っているのだという。大学でも教えていらして、早稲田の文化構想学部でこんなことを言っている、というような話をうかがっているうちに、本題の、「挑戦」を支える本についての話になった。

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じら（３）どんな本を挙げたかは、「アサヒ芸能」をお読みいただくとして、その中に漫画を二つ入れた。『巨人の星』と『あしたのジョー』である。梶原一騎はやはり天才だと思う。この二冊には、私たち人間が、とりわけ日本人が、現在の困難な状況に応じて「挑戦」を続けるためのヒントが隠されている。

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じら（３）『あしたのジョー』に書かれているのは、ライバルのすばらしさである。矢吹丈にとっての永遠のライバル、力石徹。よきライバルは私たちを奮い立たせる。あいつには敵わないかもしれない、と思いながら、それでも立ち向かう。ライバルには負けたくないという精進が、成長につながる。

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じら（４）自分を脅かす者の存在はいやかもしれないが、成長を手助けしてくれるライバルだと思ったら歓迎となる。日本人は、グーグルやフェイスブック、アップルをライバルだと勝手に思えばいい。あいつらには絶対に敵わないと自分で決めつけたら、成功はない。フェイスブック上等、抜かしてやるぜ！

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じら（５）『巨人の星』にも、ライバルの物語がある。星飛雄馬と、花形満。そして、左門豊作。伴宙太に至っては、最初は星を支える無二の親友でありながら、後に他球団に移籍し敵となる。星飛雄馬を脅かすライバルの存在があるからこそ、星飛雄馬は成長する。だったら諸君、ライバルを求めたまえ！

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じら（６）そして、『巨人の星』は、自己超克を描く。成長とは、たとえば６０点の人が７０点になるというような単一パラメータで記述される学習曲線ではなく、古い自分が滅び、その灰の中から新しい自分が舞い立つというような、烈しい自己超克の物語であると、教えてくれるのだ。

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じら（７）「大リーグボール養成ギブス」をつけた星飛雄馬が、剛速球投手となりながら、球質が軽いという致命的な欠点に悩まされる。投手としての「死刑宣告」を、大リーグボール一号という新変化球を編み出すことで乗り越える。弱点が長所に転化する。この天地逆転こそが、梶原漫画の真骨頂。

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じら（８）今こそ、『巨人の星』や『あしたのジョー』は読まれるべきだろう。グーグルやフェイスブック、アップルにやられっぱなしではいけない。中国に抜かれっぱなしではいけない。勝手にライバル宣言して、抜かしてやるとばかり自己超克を図る。それくらいの元気は日本人にも残っているだろう。

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じら（９）ところで、「サブカル」と見なされがちな漫画の方が、かえって人間成長の本質をとらえることがあるのは、「ハイカルチャー」は文脈内のきれい事になってしまうからかもしれぬ。お上品な建前をぶっこわすエネルギーが、（一部の）漫画にはあった。漫画というジャンル自体が下克上だったから。

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以上、連続ツイート第６６４回「自己超克と、ライバル」でした。