「キョート・ヘル・オン・アース」序「エンタングルメント」#7

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第2部「キョート殺伐都市」より 「キョート・ヘル・オン・アース」序 「エンタングルメント」#7

2012-07-24 13:28:27
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「コワイ!コワイ!嫌だ!アラクニッドは恐怖し、拒絶する!拒絶しているのだ!」肉鈎に吊られたアラクニッドが粗末な明かりの中で身をよじる。「アラクニッドはダークニンジャを拒絶する!」「ダメだ」ダークニンジャは構わず、ツカツカと格子の前まで歩み寄った。 1

2012-07-24 13:35:15
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ホウリュウ・テンプル地下牢の格子はいにしえの鉄で作られており、破壊できるかどうか定かで無い。ダークニンジャは自剣ベッピンの斬れ味をあえて試しはしなかった。道中に彼を誰何したザイバツ・ニンジャの血を振り払い、格子の向こうからアラクニッドを見た。 2

2012-07-24 13:50:09
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「哀れなアラクニッドに何を求める」アラクニッドはすすり泣いた。「アラクニッドは壊され、捻じ曲げられ、記憶は塵芥だ。ダークニンジャの役には立てぬのに」「そのように占ったのか?戯言だ」ダークニンジャは言った。「記憶の残滓を搾り出せ。役に立つか否かを決めるのはお前ではない。おれだ」 3

2012-07-24 13:56:29
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「アイエエエエ!痛い!強いイドをぶつけないでおくれ!アラクニッドは苦しむのだ」「ならば苦しめ」ダークニンジャは取り合わない。「アイエエエエ!」アラクニッドがもがくと、肉鈎の鎖が激しく音を立てた。「助けてほしい!」「ハガネ・ニンジャについて、お前の知る事を話せ」「ハガネ!?」 4

2012-07-24 14:09:43
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「ハガネだ。地上の帝国において、彼は何を為そうとした?」ダークニンジャはただアラクニッドを睨むばかり。視線に捉えられたアラクニッドは親指締めの拷問を受ける罪人めいて苦悶する。「ア、アラクニッドは努力する、だから」「ソガによって失伝されたハガネの探索!その秘密だ!」「アナヤ!」 5

2012-07-24 14:19:50
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アラクニッドのヨダレが地に落ち、ボタボタと音を立てた。「アナヤ!アナヤ!ハガネ・ニンジャの探索?……ヤマト……」「ヤマト・ニンジャを遣って何を探させた!」「アラクニッドの研究は不完全だ。う、ウラナイでそれを補う事ができると……でも、アラクニッドは苛まれ……もはや、記憶が……」6

2012-07-24 14:30:09
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アラクニッドはすすり泣いた。その涙は責め苦への痛みではない。悔し涙だ。彼はかつて研究者であり、逃走を試みて幽閉されるまでは、このホウリュウ・テンプルの書物を自由にしていた。豊富な古文書とウラナイから導いた、深淵に至る考察……それらは人格と共に破壊され、もはや永遠に戻る事はない。7

2012-07-24 14:36:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「国を追われるまでのハガネ・ニンジャは、備えようとしていた。ヤマト・ニンジャはハガネの命を受け、探索行に出た」「その通りだ。ダークニンジャの考察は外れていない。本当だ。それはわかる」「……竜退治。聖杯。航海。その先に何を求めていた」「ああ!アラクニッドとて、思い出したいのに!」8

2012-07-24 14:44:18
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アラクニッドの嗚咽を、ダークニンジャはただ見つめていた。その瞬間の彼の胸中に、何があったろう?自らと同じく、歴史の闇へ踏み込んで行った者の、その成れの果てを前にして?アラクニッドは不意に泣くのをやめた。「……マスターヤリのヤリ、それは知っているか」「ヤマト・ニンジャのヤリか」 9

2012-07-24 14:50:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そうだ」アラクニッドは認めた。ヤマト・ニンジャ……ハトリ・ニンジャに率いられてカツ・ワンソーと戦った神話英雄であり、マスターヤリの称号を持つニンジャ六騎士の一人。称号通り、その得物はヤリであった。「ヤリは彼の斃れた地を示す」 10

2012-07-24 14:55:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ダークニンジャは今更そのヤリの実在を疑いはしない。「ヤリ・オブ・ザ・ハント(YoTH)」彼は呟いた。複数の神話伝説に語られる神秘的な名を。「そうだ、YoTH……許してくれ……所在などわからぬ……」「十分だ。次の質問だ」「ア、アイエエエ……」 11

2012-07-24 15:13:41
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YotH。流麗な穂と黒い飾り布、ひとたび投げ放てば必ず獲物の心臓を撃つ。神秘のヤリがヤマトの墓所へ、そして求める秘密へ導くのだろうか。アラクニッドは目に見えて消耗している。だがダークニンジャは続けた。「ナラク・ニンジャについて話せ」12

2012-07-24 15:21:07
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「ナラク!ああ!」アラクニッドは震えた。「なぜお前たちはアラクニッドを苛むのか?あれはアラクニッドのせいではないのに」「その問いに答えよう、アラクニッド=サン」ダークニンジャは素早く言葉を挟んだ。その目が注意深く細まった。「答えるゆえ、おれの問いに答えろ」「……わかった」 13

2012-07-24 15:26:48
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「おれがナラク・ニンジャについて問い、お前を苛むのは、それが隠匿された力であるからだ。それが答えだ。なぜ失伝している」最小限の答えだ。だが、アラクニッドは答えねばならぬ。「ナラク・ニンジャ……ああ!アナヤ!COFF!COFF!ギンカクは本来あのように用いるものではない!」14

2012-07-24 15:37:21
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「ギンカクと言ったな」ダークニンジャが言った。「ギンカクで生み出すと!」「アラクニッドは恐ろしく思う。禁忌だ。イケナイ。ギンカクによって集められたモータル怨念、その悪しき利用……」「十分だ」ダークニンジャは言った。「過去の歴史に数度、ニンジャスレイヤーに類似する者が現れた筈」15

2012-07-24 15:57:29
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「それは、それは知らない……」アラクニッドが呟いた。ダークニンジャは頷いた。「当然だろう。かろうじて組み立てた仮説に過ぎない。だがギンカクが装置として存在するのならば、おれの中で辻褄は合った」「ロードとパラゴンのせいだ!アラクニッドは占った……占わされただけで、無実だ……」 16

2012-07-24 16:12:41
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「ロードとパラゴン」のくだりで、ダークニンジャの眉は僅かに動いた。だが、残された時間は少ない。最後の質問に入らねばならぬ。その質問がこの哀れな蜘蛛に何をもたらすか、ダークニンジャは予測がついている。おそらくは蜘蛛自身にも。 17

2012-07-24 16:18:37
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「助けてほしい。お前はアラクニッドをどうしようというのだ」ダークニンジャの目を見た。「その問いに答えよう。ゆえに、おれの問いに答えよ」ダークニンジャは形式めいて言った「おれはアラクニッドに質問をする。それだけだ」アラクニッドは嗚咽した。ダークニンジャは言った。「では、問う」 18

2012-07-24 16:29:43
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「……」「三神器の正体を明かせ!」「アイエエエエ!?」アラクニッドが恐怖に目を見開いた。一瞬にして、その黒髪が真っ白に成り果てた。「アイエエエ!」「答えろ!なぜ運命者のオートマトンは三神器を正しく認識できぬのか!」「アイエエエ!それは!」「『奴』に対する方法を明かせ!」 19

2012-07-24 16:38:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「知りたくなかった!だから問われたくなかった!」アラクニッドは泣き叫んだ。「アラクニッドの記憶は壊れたのに!」ビリビリと空気が震えた。唸りだ。唸りが現世を外側から揺らしているのだ。「答えよ!」ダークニンジャはベッピンを抜いた。キィィィィ、刃は敵意を鳴らす! 20

2012-07-24 16:45:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「三神器を琥珀ニンジャ像に戻し、そして、どう用いる!」「アナヤ!」01010111……ダークニンジャの眼前に、超自然存在が急速に実体化を開始する!ダークニンジャは飛び下がった。シシマイの巨大仮面、「ツル」と全面に書かれたニンジャ装束!威圧的長身! 21

2012-07-24 16:49:43
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「ドーモ、ダークニンジャ=サン。マスタークレインです」運命者は機械的なオジギを行うと、上半身をぐるりと後ろへ回転させ、いにしえの金属の格子に手をかけた。そして、それをバターのように捻り切った。「イーアアアアー」「アイエエエ!」「惑わされてはなりません。イアー」「アバーッ!?」22

2012-07-24 16:55:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マスタークレインの動きは驚くほどに俊敏であった。格子を破壊し、下半身を後ろへ回転させながら牢の中へ入り込むと、アラクニッドを掴んで、肉鈎からもぎ取った。そして地面に叩きつけ、右腕を振り上げた。ダークニンジャはこうなる事を予期していた。この瞬間だ。この瞬間が好機。 23

2012-07-24 17:07:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イアー」「アバーッ!」マスタークレインは左手でアラクニッドの身体を押さえつけ、その喉首に右手のチョップ突きを撃ち込んだ。「カッ、カッ、アバッ」アラクニッドは血泡を噴いた。「イヤーッ!」ダークニンジャは既に跳んでいた。マスタークレインの背中に、斜め上からベッピンを突き刺した。24

2012-07-24 17:10:08
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