おつきさま

0
@hiragi30000

つきがおいかけてくる、と、幼い弟が呟いた。腕の中のちいさなぬくもりは俺の服をぎゅっとつかみ、額を俺の胸に押し付けるようにして顔を覆う。「こわい、月がおいかけてくる」「こわい、か?月もきっとおまえといたいんだよ」「…いやだ、こわい」幼い弟は泣きだしそうに声を震わせて訴えた。

2010-07-10 02:56:44
@hiragi30000

「どうしても、怖い?」そう問えば、ちいさな唇が、こわい、と紡ぐ。「そっか。じゃあ助けてやる」「ほんと?」じわりと涙の浮かんだあおい目が俺を見上げ、俺はその瞳を覗き込みながら一度だけちいさく頷いた。「おつきさまとは、さようならだ」

2010-07-10 02:59:22
@hiragi30000

緋色のマントを手繰り寄せ、抱えた弟を覆い隠す。月からは、もう俺の可愛い弟は見えない。「ほら、隠れた。こわくないだろう?」「こわい、にいさんが見えない、…こわい」俺のわがままな王様は、握りしめた拳でぱたぱたと俺の胸元を叩き、にいさん、にいさん、と高くやわらかな声が俺を呼ぶ。

2010-07-10 03:02:49
@hiragi30000

「俺はここにいるだろ。ちゃんと触れてる」「こわい、…にいさん、おつきさまはもうついてきていないか?」「うん、ついてきてないよ。おまえを怖がらせる悪いおつきさまは、兄さんが追い払ってやったから」「ほんとうに?」「本当だ。だから怖がるな、おまえは何も見なくていい」

2010-07-10 03:04:04
@hiragi30000

抱きしめた、腕の中の幼いいのちが僅かに笑う気配を見せる。「…っふ、はは」「うん?」「うそつき。にいさんは、嘘つきだ。おつきさまはそこにいる、にいさんはうそつきだ」

2010-07-10 03:08:04
@hiragi30000

ヽ(*´∀`*)ノ <収拾がつかなくなってきた

2010-07-10 03:08:21
@hiragi30000

「…そうだよ、おまえの大好きなにいさんは、とんでもないうそつきだ。おつきさまはまだそこにいるし、おまえは何も見ずに済むなんてことはない。おまえは、この先ずっと、『おつきさま』を見てなければいけないんだ。おまえが望まなくても、『おつきさま』はついてくる。すべておまえのためだ」

2010-07-10 03:10:21
@hiragi30000

マントで隠した幼い王は、無言で俺の服を握りしめる。きつく結んだ手のひらに何を握るのか、頬を押し付けられた胸元が弟の吐息に温もった。「ちいさなおまえ。今は俺が守ってやる、いつか大きな世界をすべておまえのものにするために、今はまだ何も見なくていい。俺が、守ってやる」

2010-07-10 03:15:54
@hiragi30000

「いま、だけ?」「そう、今だけだ。今は俺がちゃんと守るよ、おまえは世界のすべてだ。…大きくなったら、おまえが俺を守る番だ」「にいさんを、まもる…」「うん、おまえは賢い子だから分かるな?おまえが大きくなったら、おまえが俺を守るんだ。俺を守って、そして、喰らえ。すべてだよ、ドイツ」

2010-07-10 03:18:54
@hiragi30000

弟を覆っていたマントを外し、未だそこに存在し続ける月光に弟を晒す。俺の胸にぎゅっとしがみついたままの弟の表情は分からない。ぽん、と髪を撫で、囁いた。「まだ、早かったか。いいんだよ、じきに分かる。今はまだ、いい」月を怖がる、かわいくて頼りないおまえでいい。

2010-07-10 03:23:50
@hiragi30000

月と同じ、きんいろの髪にそっと唇を寄せ、そこに触れさせる。あまい、太陽のにおいがした。俺の、太陽。「…兄さん」ぽつりとつぶやく幼い声に応えるすべを、俺はもっていなかった。

2010-07-10 03:25:23
@hiragi30000

兄さんに「俺の太陽」と言わせたかっただけだった。イエ、今日なんかつくやさんとそんな話をしたので。BLっぽい!BLっぽい!!とおおはしゃぎした覚えがある。おいどうだ、見たか、これで私がいかにBL書きであるかがお分かり頂けたと思うがね!!(どや顔)

2010-07-10 03:26:33