「キョート・ヘル・オン・アース」序「エンタングルメント」#8
(「ドーモ。ダークニンジャ=サン。……ニンジャスレイヤーです」「ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン。ダークニンジャです」両者はオジギした。ニンジャスレイヤーのヌンチャクに「忍」「殺」のカンジが。ダークニンジャのブレーサーに「刃」「鉄」のカンジが光った。 )
2012-07-25 13:07:30第2部「キョート殺伐都市」より:「キョート・ヘル・オン・アース」序 「エンタングルメント」#8
2012-07-25 13:08:01ダークニンジャとニンジャスレイヤーは言葉を交わさなかった。敵意が二者の視線を結び合わせた。「ニ……ニンジャスレイヤーッ!」怒りと恐怖で震えながら叫んだのは、シャドウウィーヴである。血走った目を見開き、突き進もうとした。「今こそマスターの仇を!何もかもお前のグワーッ!?」1
2012-07-25 13:23:06包囲網のニンジャがどよめいた。「な……?」シャドウウィーヴは一撃でメンポを跳ね飛ばされ、叩き伏せられて、困惑の目でダークニンジャを見上げた。鼻が折れ、目からも出血。やったのは……ダークニンジャだ。裏拳を叩き込んだ右手は禍々しいガントレットで覆われている。ブレーサーの変形だ。 2
2012-07-25 13:28:12パープルタコはシャドウウィーヴとダークニンジャを交互に見、問いただそうとした。「何を……グワーッ!?」腹に左拳を叩き込まれ、回転しながら吹き飛ぶ!不条理な暴力!衝撃と困惑、畏怖で、子鹿めいて震えるシャドウウィーヴとパープルタコを、ダークニンジャは見もせず言った。「邪魔だ」 3
2012-07-25 13:31:28ニンジャスレイヤーはこのやり取りの最中もダークニンジャめがけて先制攻撃を繰り出す隙を探り、数十通りのイマジナリー・カラテでシミュレーションを行った。ニーズヘグにスリケンを投げてトドメを刺し、殺す方法も探った。だが、どれもうまく行かぬ。 4
2012-07-25 13:42:35「ウブ……ウッ」シャドウウィーヴは弱々しく起き上がり、ニーズヘグのもとへ近づくと、無言で抱え上げた。パープルタコがそれを助けた。包囲網が割れた。ダークニンジャは苛立たしげに繰り返した。「邪魔だ。散れ!」ニンジャ達は疑問と安堵の目を見交わし、少しずつ、包囲を崩し始めた。 5
2012-07-25 13:53:52ニンジャスレイヤーは摺り足で動きながら、初手を検討する。戦意を喪失したサンシタ・ニンジャをヘルタツマキで出来るだけ殺すか?否。ダークニンジャのデス・キリが来る。その太刀筋は不可視。筋肉の緊張と瞳孔の収縮拡散、呼吸、鼓動音を、ニンジャ洞察力ニンジャ聴力ニンジャ第六感で探るべし。6
2012-07-25 14:07:06潮が引くようにニンジャ達は離れ、散乱する四肢と死体と、ニンジャスレイヤー、ダークニンジャだけが屋根カワラ上に残される。ニンジャスレイヤーのニューロンが加速。この後は?陽動はここまでか?あるいは更なるグランドマスターが現れるか。ガンドーはうまくやっているか……ナンシーは……。7
2012-07-25 14:13:27「!」ニンジャスレイヤーはヌンチャクの鎖を張った。遅れてダークニンジャの声が聴こえた。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは受けた!デス・キリを!振り向き、さらにヌンチャクを構えると、背後からのさらなる斬撃が襲いかかった!「イヤーッ!」赤黒のインパクト火花が散る! 8
2012-07-25 14:33:55「イヤーッ!」繰り出されるダークニンジャのガントレット左拳!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはヌンチャクでこれをガード!飛び散るのは琥珀色の超自然の電光!「イヤーッ!」ベッピンを鞘へ戻し、右拳!ヌンチャクでガード!琥珀色の電光! 9
2012-07-25 14:37:51「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは膝を砕く斜め下の蹴りを繰り出す!「イヤーッ!」ダークニンジャは瞬間跳躍でこのケリを回避、ニンジャスレイヤーの腿、そして胸を蹴り上がる!「イヤーッ!」「グワーッ!?」そのまま垂直に飛び上がると、宙返りを打ちながらクナイ投擲!「イヤーッ!」 10
2012-07-25 14:41:56「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーのヌンチャクが炎の軌跡と共に閃き、クナイを撃ち落とす。ナムサン!そこへ落ちながら抜刀し斬りかかるダークニンジャ!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは高速旋回して上体を屈め、後ろ足回し蹴りでベッピンの鍔を蹴り、止める!メイアルーアジコンパッソ! 11
2012-07-25 14:44:58「イヤーッ!」ダークニンジャは鍔を横から蹴られた反動を利用し回転!空中後ろ回し蹴りだ!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはメイアルーアジコンパッソからさらに回転!回し蹴りを躱し、側宙しながら蹴る!「イヤーッ!」「グワーッ!」ダークニンジャは吹き飛び、カワラに手を突いて復帰!12
2012-07-25 14:51:00「イヤーッ!イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは追い撃ちのスリケンを二連続投擲!ダークニンジャはクナイを二本投げ返し、これを相殺!ニンジャスレイヤーは急速接近しヌンチャクを繰り出す!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ダークニンジャはベッピンをイアイ!両者の得物がぶつかり合い、競り合う!13
2012-07-25 14:52:55「「ヌゥーッ……!」」二者は競り合いながら、真っ向睨み合った。「ソウカイヤ……ザイバツ……根無しの犬……妻子の仇……!」「おれの根はおれだ、狂犬!お前に神器は過ぎた玩具……そしてそのソウルだ……ナラク・ニンジャ……!」「オヌシは何を企む……!」 14
2012-07-25 15:00:40「お前にはわかるまい。聖なるヌンチャクは三神器のひとつ……お前は扱いを知らぬ……神器、ソウル、何もかも……おれが奪う」「果たさせぬぞ」ニンジャスレイヤーは力を込めた。「オヌシのインガはここで返す……ザイバツともども、滅ぼす……次の朝日は見せぬ」 15
2012-07-25 15:30:25「「ヌゥーッ!」」一進!一退!両者の上半身に縄めいた筋肉が浮き上がる!ニンジャスレイヤーは殺意の純度を高めた。ニーズヘグのイクサはおぞましき体験であった。獣に堕せば復讐は永劫に失われる。恐るべき事にあの時ニンジャスレイヤーの意識はナラクではなく、あくまでフジキドであったのだ。16
2012-07-25 15:36:16ナラクの声はいまだ無い。フジキドは、ガンドーら殺すべきでない他者の存在が周囲に在る事で、己が無意識の内にナラクを抑制しているものと推察していた。だが、敵地で独り戦う今この時も、やはり同様にナラクの存在は無い。(否。無いのではない)……人は、己自身の顔を見ることはできぬ。17
2012-07-25 15:51:02妻子の仇。復讐。ニンジャを殺す。裏を返せばそれは、システムとのイクサ、抑圧とのイクサ、理不尽とのイクサだ。その大義を失えば、すべては灰燼に帰する。(それを忘れるなフジキド。チャドー。フーリンカザン。そしてチャドーだ)フジキドは己に命じた。ドラゴン・ゲンドーソーめいて。 18
2012-07-25 15:56:59「システム総じ緑な」「谷」「弾薬」「殴り薬」「沈痛」……HUD表示が次々に浮かんでは消え、目の前の光景が徐々に解像度を増してゆく。ネブカドネザルは適切に注入される人工ニンジャアドレナリンが血管を巡る感覚を捉える。カタパルトデッキの地面には雷神の意匠が白く描かれている。 20
2012-07-25 16:22:58『やっつけろ。いっぱいやっつけて殺せ』モーティマー社長のIRC通信をネブカドネザルは粛々と聴いた。『わかっていると思うが、プレゼンテーションが必要だ。子供の遣いみたいに依頼だけ終えて帰るな!たくさん壊して殺せばオムラの凄さが伝わりV字回復する。簡単なんだ、経営なんてものは!』21
2012-07-25 16:26:26「イエスボス」ネブカドネザルは答えた。「前回の対ニンジャスレイヤー戦闘時のデータ解析精度は高く、白兵戦時に遅れを取る可能性は極めて低いです」『絶対やっつけろ』とモーティマー『パパは間違っていた。僕が正しい。そうだな?』「イエスボス」『オムラは大丈夫だ。だろ?』「イエスボス」 22
2012-07-25 16:40:49「モーターツヨシ、デバイス接続シーケンス。MAAA(モーター・アブナイ・アットー・アグリゲイト)システム、連結成功な」合成マイコ音声が告げた。ネブカドネザルに背部脊髄接続したモーターツヨシに、さらに連結されたのは、神話モンスターめいたロケットエンジンの集合物である。 23
2012-07-25 16:57:25