千葉雅也(@masayachiba)さんによるベルサーニ&フィリップス『親密性』第二章についての考察まとめ
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宮澤由歌・檜垣立哉共訳、ベルサーニ『親密性』をお送り頂きました。宮澤さん、ありがとうございます。先ほど一章を読みました。後の方では、Tim Dean への言及もあるようで、楽しみ。
2012-07-25 21:03:02ベルサーニ&フィリップス『親密性』に付された檜垣立哉さんの解説文を読みました。色々とツッコミどころがあるかも。
2012-07-28 19:49:56煎じ詰めると、檜垣さんがベルサーニに対し不満に思っているのは、「生殖」を肯定的に扱っていないことなのだろう。
2012-07-28 19:55:17この『親密性』で貴重なのは第二章で、そこでは、未邦訳のTim Dean, Unlimited Intimacyの要点が示されています。ティム・ディーン『無制限の親密性:ベアバッキングのサブカルチャーに関する考察』。ベアバッキングとは、ゲイの「生堀り・種付け」のことです。
2012-07-28 19:59:35ディーンによると、アメリカでは、防御なしでアナルセックスをして積極的にHIVに感染したいゲイ、そういうゲイに感染させたいゲイの乱交というサブカルチャーがある。これは、医療の発達でHIVの活動を抑えられるようになり、HIV+=死ではなくなったがゆえの「文化」。「死を生きる」文化。
2012-07-28 20:04:27ディーンの解釈では、ベアバッキングによるHIVの伝達は、自己破壊において無数の匿名のゲイ(感染者たちの系譜)と合一するという共同化である。ディーンは、ベアバッキング論を、ゲイの市民権をより堅固に(健康に)しようという活動のまさに裏面としての、もう一つの共同体論として提示している。
2012-07-28 20:08:49UKでは自分からHIVにかかろうとする若者をとりあげたBBCドキュメンタリーが人気俳優でゲイであるスティーヴン・フライのプロジェクトとして作られました。http://t.co/K1T1VXKP @masayachiba
2012-07-28 20:09:52@mineotakamura そうそう、大学でテマティスムを教えるときにいつも模範例として使ってるんですよ。
2012-07-28 20:10:07@Cristoforou おお、まじすか。ドキュメンタリーまで作られてるんだ。英語圏は進んでる(?)というかすごい状況ですね。
2012-07-28 20:11:05で、ベルサーニはこのディーンの議論を受けて、自己破壊による他者とのコミュニケーションというテーマを、キリスト教神秘主義とつなげちゃう。ここは、僕としてはかなり不満で、エイズによる死を超越化しちゃってると思う。
2012-07-28 20:16:04BBCでは、自分からHIVをもらいに行こうとする若者はゲイコミュニティでもかなり疎外されていることが多い(医学的な知識がなく、友だちができないなど寂しい思いをしている)という推測をしていました。病気になれば助けてもらえるから、という… @masayachiba
2012-07-28 20:18:58ところで、HIV入りの精液を受け入れるネコについてのベルサーニの形容が、なかなか興味深い。「こういったビデオのなかで(…)ネコたちは笑みを絶やさない。その様は知的障がい的であり、聖的であり、そして麻薬中毒者のような印象を与える」(『親密性』88頁)。
2012-07-28 20:24:02ベルサーニは、「非人称的なナルシシズム」による他者とのつながりを肯定するんだけど、これがキリスト教神秘主義と重ねられるあたりに、檜垣さんは「バタイユ的」なトーンを見ている。正しいと思う。でも、ベルサーニの他の論文、ハッテン場論なんかでは、そういう傾向はもっと薄いようにも思う。
2012-07-28 20:26:41(承前)これは、僕の連載のレヴィナス論で考えていたことでもある。レヴィナス的には、子供とは、自分でありかつ他者であるものだ。自らにおいて子供になること、自らにおいて他者化するがままになること、それは免疫疾患になることだろう。だから、レヴィナスによるミニマムな子の定義は、(続く)
2012-07-28 20:56:45(承前)レヴィナスによる「自分でありかつ他者である」というミニマムな子の定義からの帰結は、そのような子に自らなってしまう場合(広い意味での、肉体的・精神的な免疫疾患)と、そのような子を別の「実体」として生じる場合(通常の出産=超実体化)に分けられる。(続く)
2012-07-28 20:59:33解説のなかで檜垣さんは、HIV感染者の系譜への参加ということは、結局、「通常の性交渉のなかで生じる妊娠」に酷似すると考える。この指摘は重要なものだ。子供を生むときは、「ゲイ集団におけるHIVウイルスとパラレルな意味での、遺伝子のひきうけがなされている」(『親密性』221頁)。
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