ツンデレラ

ツンデレラから何か話を作って!とか無茶振りがなぜか来たので、即興で作ってみたお話。ほぼ自分用まとめ。後半ツンデレじゃないような気がしなくも無いですがそこはご愛嬌と言うことで。勢いって大事だね。
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@okane

あなたはあの有名な靴の話をご存知でしょうか?オーダーメイドで作った靴を意中の相手に拾われると恋が実るというあのお話が、今若い娘の間で話題になっていました。

2010-07-11 22:15:58
@okane

おかげで靴屋は大繁盛。中でも人気の靴屋がある小さな村は、いつの間にか噂を聞きつけた人で溢れるようになり、やがて大きな都になりました。

2010-07-11 22:20:35
@okane

その都であるお触れが出されました。『この都で作られる靴はすべてオーダーメイドのみとしブランドの価値を維持すること』たちまち靴は高級品になり、急な発展に付いていけなくなった人々は靴を買うことが困難になっていったのです。

2010-07-11 22:27:15
@okane

青年は3代目でした。祖父が始めた靴屋を確かな技術を受け継いだ父が大きくし、いずれ自分が継ぐであろうその大きな店先で今日も通りを眺めていました。

2010-07-11 22:30:07
@okane

華やかな靴に包まれ意気揚々と通りを歩いていく人々、思いを届けるために置き去りにされた片方だけの靴。そしてそれを拾っていく裸足の子供達。この都では当たり前の、いつもの日常でした。青年が少年だった頃から変わらず続いている光景でした。

2010-07-11 22:33:09
@okane

あのまじないのような風習はいつしか形を変え、靴を無くした娘にいかに似合う靴を作ってあげられるか、という紳士の道楽になっていました。娘達はこぞって靴屋の前に靴を置いていきます。なぜならこの都で一番お金を持ち、裕福な暮らしをしていたのは靴屋だったからです。

2010-07-11 22:38:16
@okane

父が作った靴が片方だけそこにありました。名前も知らぬ職人が作った靴が片方だけそこにありました。青年はそれをさみしそうに見つめていました。まるで道端にある石のようなその靴は、しかしいつまでもそこに放置されるわけではなくいつしか誰かに拾われていきました。

2010-07-11 22:43:39
@okane

青年が今日もぼんやりと通りを眺めていたある日のことです。からん、とベルをならして店のドアが開きました。父親は工房にこもって靴を作っているため、青年は店番をしていたのでした。「あいにく今月は忙しいから靴造りは受け付けてないよ。すまないね。」通りから目を離さず青年は言いました。

2010-07-11 23:53:36
@okane

「そう…。」入ってきたのは女のようでした。また置き去りの靴の注文か、とうんざりしていた青年は、一向にドアが閉まる音がしないことに気づきそちらに目をやると、赤いヒールのある靴を履いた少女がこちらを睨んでいました。

2010-07-12 00:02:09
@okane

「私は別に靴を作って欲しくてきたんじゃないわ。そんな態度で仕事が勤まるなんていい身分ね、さすが靴屋様々!」さすがの青年もむっとした表情を浮かべましたが、すぐに彼女の靴興味を惹かれました。彼女の靴のヒールが片方無かったのです。

2010-07-12 00:08:34
@okane

「もしかして、修理の依頼だったかい?」この都ではオーダーメイド以外の靴の製造は禁止されていましたが、元々あった靴の修理は許可されていました。それは若い見習い達の収入源であり腕を磨く場になっていました。

2010-07-12 00:14:20
@okane

それでも片方だけの靴を拾って喜んでいる子供達が手を出せる金額ではなく、将来に期待して若者に投資するためのもので、修理された靴の扱いは酷いものでした。「あなた、これ治せるんでしょう?仮にも靴屋の店先にぼーっと座って居られるのだから。」良くみれば、少女は片足だけつま先立ちでした。

2010-07-12 00:21:08
@okane

「そんなに無理して履いていなくても良いじゃないか…。」危ないよ…と言おうとした青年の言葉を「私はね、二つ揃ってない靴なんて大嫌いなのよ!!」という少女の大きな声が遮りました。その拍子でバランスが崩れた少女は転んでしまいました。

2010-07-12 00:28:06
@okane

転んだ拍子に靴が脱げ少女の裸足があらわになりました。よほど無理をして履いていたのか豆だらけの足でした。少女は転んだことも無かったかのように、きっ、と青年を睨み「治せるの?治せないの?はっきりしなさいよ!」と言い放ちます。やれやれと青年は重い腰を上げました。

2010-07-12 00:37:35
@okane

気の強い少女には目もくれず青年は靴を手に取りました。そうとう古い作りの靴のようで、何度か直した跡がありました。ぽっきりと根元から折れたヒールをみつめて思わず顔をしかめると、さっと少女の顔が曇りました。

2010-07-12 00:47:07
@okane

「…治せないの?」「いや、そんなことは無いけれど…」お世辞にも少女はお金を持っているようにも見えませんでした。青年はどう説明したことかと思っていた所でしたが「直るのね、良かった…。」ずっと吊り上がっていた少女の目がほころんだのを見て、彼はただ働きを決めることにしました。

2010-07-12 00:55:21
@okane

元々使い捨ての靴に嫌気が差していた青年はすぐに靴を直してあげました。少女の足に一揃えの赤い靴が戻りました。うれしそうに店の中を歩く少女でしたが、何かに気づいたかのように足を止めました。きっと代金のことなのだろうな、と青年は思います。「あの、私、ええと…。」その通りでした。

2010-07-12 01:03:55
@okane

「代金のことなら良いよ。その靴が捨てられなかっただけで僕には十分だからね。」「でも…それじゃあ私が酷いことをしたみたいで気分が悪いわ。一生かけてでもこの代りは返してやるわ!」お礼を言われているのか良くわからなかった。

2010-07-12 01:10:27
@okane

「…お金はすぐには無理なの、ごめんなさい。」意外と素直に謝った少女に驚きつつも、青年はこう言いました。「じゃあ、さっそくその借りを返して貰っても良いかな?」少女は頷き「何をすればいいの?」と問うと青年が笑顔を浮かべ、軽く尻込みしながらもきっと睨みつける少女にこう言いました。

2010-07-12 01:18:00
@okane

「君の靴を作らせて欲しいんだ。」「え?」驚いた少女を横目に青年は言葉を続けました。「つまり練習させて欲しいんだよ、靴作りの。どうやら僕はやる気の無い奴だと思われているらしくて、修理の依頼も実は君が初めてなんだ。靴を作るのは好きだけれど実際に他人の靴を作ったことはないんだよ。」

2010-07-12 01:25:19
@okane

「でも、それって、材料とかほら、色々と…」もじもじと少女が言う。良く見ればヒールを履いていてもまだ僕より全然小さい、子供に近いような彼女を見下ろしてこう言った。「お金は…まあ何とかするさ。何たって、靴屋様々だからね。」赤いヒールが青年のすねを蹴ると、少女はまた転んでしまいました。

2010-07-12 01:33:43
@okane

それからしばらく、通りをみつめるやる気のない青年の姿は見ることができませんでした。変わりに同じ場所で目を吊り上げた少女が通りを見つめるようになりました。時に青年を罵倒するような声が聞こえたかと思うと、からんとドアが開き真新しい靴を履いた少女が通りを駆け抜けていきました。

2010-07-12 01:39:46
@okane

ある良く晴れた日、いつものように少女が、からん、とドアを鳴らして店に入ると見慣れないヒールの靴がありました。少女の足には大きすぎて合いそうにありません。そういえば、最近青年の作る靴に文句をつけることが少なっていました。何故か少女は悲しくなりました。借りが、返し終わったのです。

2010-07-12 01:44:43
@okane

「やあ、おはよう。今日はいい天気だね。」眠そうな青年が奥の工房から出てきました。ふと少女をみると少女は裸足でした。「靴はどうしたんだい?」「もう、そろそろ借りは返し終わったかと思って。あなたの練習には十分付き合ったのでしょう?だから返すの。この練習用の靴も!」

2010-07-12 01:48:43
@okane

裸足のまま出て行こうとした少女を青年が引き止めました。「この靴は、たとえ練習用だったとしても君のために作った靴だ。返す必要はないんだよ。」「私は靴を買えるだけのお金なんて持っていないの!また私に借りを作らせるつもり?…それにあなたはもう仕事が取れるようになったみたいじゃない!」

2010-07-12 01:55:37