ツイート怪談「いまからいくからね」

satakein:limbotemple @satakein

ふむ（ʹ・ω・‛）暑いし怪談連ツイートでもするか

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えーこれから書く話は一部を除いて私の実体験ではありません。十数年前に某ホラーマンガ誌で読んだ話ですのでご承知願います。

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これはペンネームをTさんという女性マンガ家さんの描かれた話です。Tさんといえばイニシャルだけで分かる人もいるかな。竹本泉さん系列の画風で当時「ハロウィン」「ネムキ」等で活躍されていました。またTさんの妹御も同じくUさんというペンネームで漫画家として活動されています。

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さてTさんは名古屋のご出身なのですが、これはTさんがまだ地元の大学に通っていた頃の話です。 晩秋のある日、Tさんはゼミの教授を囲む会かなんか、とにかく飲み会に出席することになった。

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で偶々その日はTさんを含む家族全員が家を空けて夜まで誰も居ない日だった。ご両親は揃って外食、高校生の弟と中学生の妹（後のUさん）も部活やらで夕食には戻らないという。

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で当日。大学の講義を終えたTさんは飲み会の前にいったん帰って着替えをして出直そうというつもりで大学からバスで数十分の自宅に戻ってきた。もうご両親も出ていて家には誰もいません。

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で通学用のカバンを置いて、シャワーを浴びて着替えをして、メイクなんかしてるうちにそろそろいい感じの時間になって来た。家の中を一回ぐるっと廻って戸締りの確認をして、さて玄関口で靴に足を通そうかという時に、『ジリリリリリリリン』　・・・・・・玄関先に置いてある黒電話が鳴った。

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「（ʹ・ω・‛）（なんだよもー。今から出かけるのに・・・）」と思いながらTさんが受話器を取ると、何だか幼い感じの声がした。５，６歳くらいの、男の子の声だ。

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「もしもし」　その声が言った。

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「ぼく。ごろう」

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「いまからいくからね」　と、その声が言った。

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「？（ʹ・ω・‛）」　Tさんは一瞬わけが分からなくなったが、すぐに（ああ、間違い電話か）と思い直した。だってそんな小さな男の子なんて知り合いにいないし親戚筋にも心当たりがない。家の中で一番年下の妹だって今は中学生だしこんな小さな子の友達はまさかいないだろう。

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でTさんが「・・もしもし？えー、どちらにおかけですか？」と問い返すと、電話の向こうの幼い声が「・・・。あのね。ぼく、ごろう」と言う。ごろうなんて子は知らない。

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「・・・えーとね？ごろうくんっていうの？あのね、うちは」とTさんが言いかけると、電話の向こうの声が遮るように「◯◯（地名）の◯◯（Tさんの苗字）でしょ。　　いまからいくからね」と、言った。

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Tさんの家は名古屋市内にずいぶん沢山親戚のいる家でして、全部が同じ苗字です。それで親戚同士で電話をかける時は「新田の◯◯ですが」とか「五所堤の◯◯ですが」等自分の家の町名や字名を名乗るのが習慣になってる。まあ屋号みたいなものですね。ちなみに新田とか五所堤とかは私の創作ですが。

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で、、、、今電話の向こうの声が言った「◯◯（地名）の◯◯」は、Tさんの家以外にはいないんです。つまり間違い電話じゃないんだ。

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・・・秋口の陽は短くて、玄関口から見える居間の窓の空にはまだ光が残っているけれど、もう家の中は薄暗くなってきてる。「　　　　いまから、いくからね」　電話の向こうの声がまた言った。

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Tさんは「（なんだろう・・・この子、おかしい）」と思い始めた。「（この電話はおかしい）」と思い始めた。

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ふつう５，６歳の子供なんてあどけないものです。集中力だって続かない。電話口で話が通じなければ不機嫌になったりあるいはクスクス笑ったり、「ママー」とか母親に呼びかけたりするものです。でも今電話で話してるこの『ごろう』なる子供にはそうしたところがない。

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「ぼく、ごろう」「いまからいくからね」こればかりを繰り返している。あどけなさも巫山戯た様子も一切なく、間延びした平板な調子の、生気の感じられない声で繰り返している。

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Tさんは唐突に「（もうこれ以上この電話で話してちゃいけない。この子と話してちゃいけない）」と思い至った。もう家の中は真っ暗になりかけていて、灯りが点ってるのはこの玄関先だけだ。腕時計で確かめてみたら便々と話してるうちにもう30分以上も経ってしまっているんだ。

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いい加減に切り上げないともう約束の時間に間に合わない。　 「あのね。ぼく、ごろう」　電話の向こうの声がまた言う。　「・・・もしもし？あのね？ごろうくん？お姉さんね、今からお出かけしなくちゃいけないの。わかる？」　電話の向こうで沈黙があった。

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「・・・ぼく、ごろう」「うん、だからねごろうくん、誰か大人の人と替わってくれる？ね？」Tさんは苛立った。

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「いまからいくからね」「だから、今来られてもうち今誰もいないの。私も出掛けるの。だから早く」少し強い、叱りつけるような口調になってしまった。　「お父さんか、お母さんに替わってください！」

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電話の向こうで、少し長い沈黙があった。