『風姿花伝』なう

『風姿花伝』全文の現代語訳です。
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世阿弥なう @zeaminow

能の源って、インド発祥とか、神話の時代に作られたとか色々言われてるけど、ぶっちゃけ昔過ぎてよく分からない。でも今皆が見てる能は聖徳太子が秦河勝に作らせた六十六の芸能を「申楽」って名付けたのが始まりなんだそうな。

2012-06-07 23:59:37
世阿弥なう @zeaminow

だから今でも河勝の子孫が奈良の興福寺や滋賀の日吉大社なんかに奉納してるんだって。だから伝統を大事にしなきゃいけないし、能を極めようと思ったら、それ一本で勝負しなきゃだめ。やってもいいのは和歌ぐらいかな。

2012-06-08 00:04:05
世阿弥なう @zeaminow

能の掟二カ条。一つ、風俗行ったり、ギャンブル、アルコールは絶対だめ。一つ、稽古や修行は一生懸命やれ。いいかげんなのはだめ。『風姿花伝』序

2012-06-08 00:08:19
世阿弥なう @zeaminow

能では七歳から稽古を始める。この頃は自然な演技の中に光るものがあるので、好きなようにさせたらよい。あんまり「いい」とか「悪い」とか注意してはだめ。子供がやる気をなくしちゃうから。稽古は子供がやりたい部分だけにして、緊張しない場面で出演させましょう。『風姿花伝』第一年来稽古条々

2012-06-08 22:00:43
世阿弥なう @zeaminow

十二三歳になると声も安定し、演技も自分で理解できるので、色々な演目を教えるとよい。どんな演技でも可愛いし、声も通りやすいから、それほど複雑な能をやらなくてよい。だけど、この時期の魅力は一時的なもので、一生の芸の良しあしとは無関係。だから基本的な技術をしっかり習得させましょう。

2012-06-08 23:30:21
世阿弥なう @zeaminow

十七八歳は難しい時期。声変わりして体も大きくなるから、今までのやり方が通用しなくて能が嫌になってしまう。人の目を気にせず、「今が一生の分かれ目だ」と強い気持ちで修行しましょう。ここでやめれば芸もそこで終しまいです。『風姿花伝』第一年来稽古条々

2012-06-09 17:17:41
世阿弥なう @zeaminow

二十四五歳は声も体も安定し、大人の芸が生まれる時期。だから周囲も注目する。役者同士の勝負で勝ったりすると、思い上がって自分は上手だと過信してしまいがち。これは本人のためにならないし、たまたま目新しさが評価されたにすぎない。わかる人にはわかるはず。

2012-06-10 00:02:06
世阿弥なう @zeaminow

まだ「初心」のはずなのに、自分は上手いと勘違いして、勝手な演技をするやつがいる。周りが持ち上げても、実力を自覚し、先輩にアドバイスをもらって一層修行に励むべきだ。身の程をわきまえていれば、芸の良さはなくならないが、過信すればそれもなくなってしまう。『風姿花伝』年来稽古条々

2012-06-10 00:18:51
世阿弥なう @zeaminow

三十四五歳は脂の乗りきった時期で、その後の役者人生の試金石となる。三十四五までは上達するけど、四十以降は衰えていく。だからこの頃までに一流芸能人として認められなきゃいけないし、もしそうでなければ今後将軍様の目に留まるのは難しいと思う。『風姿花伝』第一年来稽古条々

2012-06-10 21:12:10
世阿弥なう @zeaminow

四十四五からは芸の方向性が大きく変わる。どんな一流の役者でもだんだん衰え始めるので、自分の代わりが任せられる若手が必要でしょう。超イケメン以外は年取ったら素顔は見せられないしね。もうあんまり手の込んだ役はしないで、自分に似合う役を無理なく演じましょう。

2012-06-10 22:27:19
世阿弥なう @zeaminow

出番は控えめに、若手に花を持たせましょう。激しい能はやらない方が無難です。この年になってなお魅力のある役者は、「本物の花」を備えた一流役者といえます。一流の役者は自分のことがよくわかっているので、若手を上手く育て、自分の欠点を見せたりはしないはず。『風姿花伝』第一年来稽古条々

2012-06-10 23:45:43
世阿弥なう @zeaminow

五十を過ぎたら引退しかない。長嶋さんも王さんも年には勝てなかったんだし。でも一流の役者なら芸の魅力は残るはず。僕の父は五十二歳で亡くなったが、その直前に舞った能は、本当に華やかで皆感動したものです。老いてもなお残る花というものを目の当たりにしました。『風姿花伝』年来稽古条々(終)

2012-06-11 12:14:36
世阿弥なう @zeaminow

能の役柄を文章で全部説明するのは無理。だけど一番重要なことなので、しっかり練習しましょう。まずはその役になりきる事だけど、役によって程度の差がある。例えば身分の高い人々のことは我々には分からないので、完璧になりきるのは難しい。言葉遣いや振る舞いを研究し、観客の反応を待ちましょう。

2012-06-11 23:11:50
世阿弥なう @zeaminow

ハイソな人たちの生活は、なるべく具体的に演じましょう。逆に庶民の生活はあんまり詳しく演じなくていい。木こり、草刈、炭焼、汐汲など和歌の題材にもなった職業は、風流に演じることもできますが、具体的に描写してもハイソな人は下品に感じるだけなので、やめておきましょう。『風姿花伝』物学条々

2012-06-11 23:49:49
世阿弥なう @zeaminow

女性の役は若い役者に向いてる。だけどとても難しい。まず衣装がまずいとだめ。ハイソな女性の振る舞いは見る機会も少ないので、よく調べておきましょう。着物や袴の着方にはきちんと作法があります。庶民の女性は比較的簡単で、それっぽい雰囲気が出ればいい。小道具は柔らかく持つようにしましょう。

2012-06-12 22:59:50
世阿弥なう @zeaminow

着物や袴は手先や足が隠れるくらいたっぷりと着て、腰や膝を伸ばし、おしとやかに振舞いましょう。顔も上向きでも、うつむいてもいけないし、顎を引きすぎると女っぽくなりません。衣装は姿を美しく見せることが肝要ですが、特に女性の役は姿が最重要です。風姿花伝第二物学条々

2012-06-12 23:05:11
世阿弥なう @zeaminow

老人の演技は、芸の品格が表に出てしまうので難しい。かなりの名手でも上手くない。きこりや汐汲みなど仕事する老人はまだしも、神の化身などは品格が高くないと似合わない。腰や膝を曲げたり身をかがめたりせず、上品に演じ、魅力を失わないよう工夫しましょう。『風姿花伝第二物学条々』

2012-06-13 21:32:50
世阿弥なう @zeaminow

素顔の役もまた難しい。男の役者が生身の男の役を演じるので簡単そうだが、品格が伴わないと見れたもんじゃない。顔つきは似せなくていいのに、無理に表情を作ったりすると更に見られないものになる。演技や動作を似せるのであって、顔は自分の表情そのままがいい。『風姿花伝第二物学条々』

2012-06-13 23:42:47
世阿弥なう @zeaminow

物狂は能では最も人気がある。種類が多いのであらゆる役柄を演じなきゃいけない。神霊が取り憑いて起きる物狂の場合、憑依した神霊を演じればいいのでたやすい。一方、親子や夫婦と別れて狂乱する場合は難しい。人物の心理描写を基本にして、狂乱を山場にすれば、きっと観客も感動するはず。

2012-06-14 23:59:23
世阿弥なう @zeaminow

この作品で観客を泣かせれば大変な名人です。物狂の衣装は役柄に合うのが一番だが、華やかな方がいいので、季節の花を髪に挿してもいい。また神霊が取り憑く物狂で、女性に武士や鬼が憑くのはまずい。女性が激しく演技するのは変だし、女らしくすれば憑いたことにならない。男に女が憑くのも同じこと。

2012-06-15 00:17:52
世阿弥なう @zeaminow

こういう能はやらない方がいい。分かっている作者ならそんな能は作らないけど。また素顔の物狂も難しい。表情を物狂に相応しく、かといって顔つきを変えたらだめ。演技の奥義だから初心者には無理でしょう。素顔と物狂、両方をうまくこなし、観客を引き付けるのは大変難しい。『風姿花伝第二物学条々』

2012-06-15 00:31:40
世阿弥なう @zeaminow

法師はあまり主役にならないのでそれほど稽古しなくてもいい。偉いお坊さんの役は作法を正しく気品あるよう演じ、身分の低い修行僧は心から仏に向き合う姿を見せましょう。役によっては複雑な演技が必要になることもあります。『風姿花伝第二物学条々』

2012-06-15 23:11:49
世阿弥なう @zeaminow

修羅の能は面白くないのでやらないほうがいい。ただ、源氏や平家などの武将を美しい自然に関連させて作れば面白くなる。武将が狂乱する場面は鬼の演技にも、舞踊にもなるが、その境目に注意すべき。また武器を持って出る場合、正しい使い方をよく研究しましょう。『風姿花伝第二物学条々』

2012-06-16 00:03:17
世阿弥なう @zeaminow

神様の役は鬼の演技に近い。お怒りになって降臨するるのでこうなる。一方で鬼とは正反対の舞を舞う演技にもふさわしい。逆に鬼には舞の演技は似合わない。神様は舞台でしか見ることができないものだから、それっぽい姿で衣装を飾り気品が感じられるようにしましょう。『風姿花伝第二物学条々』

2012-06-16 20:48:44
世阿弥なう @zeaminow

鬼の演技は、うちの得意芸。怨霊としての鬼は演じやすく、相手役に向かって足踏みをしたり手を細かく動かしたりすればいい。地獄にいるいわゆる鬼の役は、恐ろしい感じがして面白くならない。難しいので上手くできないだけかもしれないが。鬼は強く、恐ろしいものだが、これは面白さとは別物です。

2012-06-17 11:33:43
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