60年安保のなかの暴力(2)――大山幸雄(1960)「一機動隊員の六月十五日」より

1960年、日米安全保障条約の改定をめぐって、日本中で反対運動が大きな盛り上がりを見せました。ひとびとはどのような思いから運動に参加したのでしょうか。  以下では、反対運動の急先鋒であった全学連の学生が死亡した日(6月15日)の様子を三つの視点から見ていきましょう。今日は、一機動隊員警部補が見たその日の様子を紹介します。 出典: 大山幸雄「一機動隊員の六月一五日」 in: 続きを読む
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[book][photo] 1960年の国会周辺図. / 井出武三郎編(1960.9)『安保闘争』, 三一書房, 扉の裏面 http://t.co/uEEMR96C

2012-08-09 00:00:20
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[paper] 今日はこのへんをひとつ. 著者は機動隊員警部補. / 大山幸雄「一機動隊員の六月一五日」 in: 臼井吉見編(1960)『現代教養全集〈別巻〉1960年・日本政治の焦点』, pp.204-209 http://t.co/nuJ2YaCn

2012-08-09 01:12:15
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「〔1960年〕十五日朝七時〃振鈴で起床〃*/訓示。拳銃、服装検査。休憩。指示。教課はない。きょうもデモだ。デモの警戒は退屈する」(大山幸雄(1960:204))

2012-08-09 01:13:13
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「午前十一時出発、指令は前日模写電送(テレタイプ)で本庁から送られている。*警備体勢の規模を指示してくるだけだ。場所などはもう毎日のことで、いわれなくてもわかっている。国会である。雨模様のいやな日だ」(大山幸雄(1960:204))

2012-08-09 01:14:03
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「正午ちょっとすぎ国会到着。参院第二通用門付近に待機する。第二、第四機動のほか城東、深川、向島、本所、丸の内、麹町、立川、神田各署からも派遣されている。*中には五十歳を越えているような巡査もいる」(大山幸雄(1960:204))

2012-08-09 01:14:38
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「デモ隊が増えてきた。*大変な人の波だ。旗をふり、どなり、体をゆすっている。*まさか押しかけてはこないだろうが、もしやってきたらとても防ぎきれないだろう。*『きょうは学生が暴れるらしいな』という声が、次々に伝わってきた。『右翼もくるらしい』ともいう」(大山幸雄(1960:204)

2012-08-09 01:15:53
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「それにしても、どうしてデモ隊は警官隊には威勢が良いのに、右翼には弱いのだろう。*米大使館前のデモの時、大日本愛国党員約十人が*デモ隊になぐりかかった。デモ隊は逃げ『警官は何をしているんだ』と叫んだ。*デモ隊は約三千人。*仲間がなぐられているのだ。なぜ袋叩きにしない」ibid.

2012-08-09 01:17:40
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「三時半頃、雨が降り出した。国会正門から南通用門にかけて、学生*が、ジグザグをはじめた。学生の数はどう少く見積もっても一万人以上だ。幅十メートル程度の道路は白ワイシャツで埋まった。労組はどんどん流れ解散をしているのに、学生は集結する一方だ」(大山幸雄(1960:205))

2012-08-09 01:19:00
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「国会の各門は内側から閉められ、バリケード代りに輸送車が並べられた。『ポリ公帰れ』。石が飛んできた。われわれは黙っていた。*良い気なものだと思った。親のおかげで大学に行かせてもらっているくせに、普段は何かというとわれわれを頼るくせに、こんな時だけ景気が良い」(ibid.)

2012-08-09 01:19:58
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「五時すぎ、参院側で右翼が学生隊になぐりこんだ。学生たちは『右翼の挑発にのるな』といって逃げたが、中には相手を捕えて警官に渡してくれた者もいる。若いんだから、それ位の元気は当然だ。相手が悪いのにきまっているのだから、われわれも学生の味方だ」(大山幸雄(1960:205))

2012-08-09 01:20:39
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「五時半頃になると、学生は南通用門に圧力をかけてきた。警官隊は通用門の方向に左右に分れて整列した。入ってくれば、両側からはさみ打ちにする形だ。くどいくらい、『別命あるまで待機、みだりに行動を起すな』という指令がくり返された」(大山幸雄(1960:205))

2012-08-09 01:21:47
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「学生は門の針金をきり、障害物の輸送車をひきずり出して中に入ってきた。入口がせまいから一度には入れない。バラバラと飛び込んで来るが、警官隊との間の空間にとまどった様子で、後をふり返っている。門の外ではスクラムを組んだ学生が、かけ声と体重を門にかけて押していた」(ibid.)

2012-08-09 01:22:33
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「普通なら針金をきろうとした時に飛び出して阻止すべきだろう。輸送車にロープをかけようとするところを制止しても良い。*なだれ込むのを待っているのは異例だ。しかし相手を刺激するな、よくよくの事にならなければ手を出すなと命じられている以上、どうしようもない」(大山幸雄(1960:205

2012-08-09 01:22:59
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「六時すぎ、麹町署長の三回の警告の後、水をかけた。まともに水圧をうけると倒れる者がいる。離れたところで見ていると、ちょっとユーモラスに見えないこともないが、その頃になると石が猛烈な勢いで飛んできた。学生の方より空を眺めて石をさける方が忙しい」(大山幸雄(1960:205))

2012-08-09 01:24:15
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「鉄帽にガンガン当る音、にぶく体にあたる音も聞える。放水は効果がなく、学生たちはどんどん中に入ってきた。腹が空いてきたが、とても食事などできるものではない。近づいた学生たちは石を投げ、棒でなぐりかかってきた。*負傷者は増える一方だ」(大山幸雄(1960:206))

2012-08-09 01:25:03
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「一たん放水をやめ、もう一度集中的に水をかけたが利き目がない。何だか妙に調子が違うぞという感じがした。“警棒抜け“の号令はとっくにかかっていたが、*棒で雨のように降ってくる石を防げるものではない」(大山幸雄(1960:206))

2012-08-09 01:26:05
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「『殺せ』『ポリを殺せ』と叫びながら*飛んでくる学生たちを見ると、このままじゃ殺られると思った。。どうするのだ。われわれはこのままじっとしているのか。もう学生という何となくひ弱な感じの言葉で表現できる相手じゃない」(大山幸雄(1960:206))

2012-08-09 01:27:08
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「拳銃を使わなければ危ないと思った時、『退れ』の号令がかかった。ほっとして後にさがった。学生との間が六、七十メートルあいた。*“進め“の号令がかかった。”かかれ“という号令が出されたように新聞にはかかれているが、号令はすべて警備規定に従う。”かかれ“という号令はない」ibid.

2012-08-09 01:29:21
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「それはとも角、号令がかかると、自然にかん声がロから出る。恐いからかも知れないが、後から突きとばされるような気がして”まっしぐらに突っこむ“」(大山幸雄(1960:206))

2012-08-09 01:30:17
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「警棒をふりかざしてなぐりかかったといわれるが、警棒をどう持ったら良いのか。*下手に胸の辺にかかえていたら、自分の警棒で自分がけがする。頭上にかざす以外に方法はないではないか。先頭にいた者たちは前後から押される力で体は浮き上り、息がつまる。*ころんだらふみ殺される」(ibid.)

2012-08-09 01:31:04
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「夢中で学生をかきわけながら、なぜこんなことをするのだと相手が憎らしくなった。われわれは*別に学生と闘いにきたわけじゃない。しかし、治安を乱すうえに、わが身の危険を感ずるとあれば、相手を制圧しないわけにはいかない。相手が棒でなぐりかかれば*警棒で防戦するのは当り前だ」ibid.

2012-08-09 01:32:42
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「学生は旧議員面会所の窓ガラスを破って投げつけている。*立派な凶器だ。彼らは無届集会の公安条例違反をはじめ、器物損かい、公務執行妨害、傷害……一体どの位の法律違反を犯していることだろう。*これ以上野放図を許せば何を仕出かすかわからない。われわれは*学生を門外に押し出した」ibid

2012-08-09 01:33:58
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「それが大体七時半頃だったろう。警官隊は再び構内に整列した。伝令が飛び、『各中、小隊長集合、隊員は別命あるまで待機』と伝える。*女学生が死んだらしい。という声が聞えた。ひどい。あれだけの集団が衝突したのだ。女がいたら一たまりもあるまい。なぜ学生は女などを連れてきたのだ」ibid.

2012-08-09 01:34:44
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「『人殺し』『警官を殺せ』という合唱が大きくなる。南通用門前は学生で埋まっていた。われわれは体がこわばった感じで立ちつくしていた、死人が出たのはショックだ。しかし、警官が殺したという証拠がどこにあるのだ。なぜわれわれの責任になるのか」(大山幸雄(1960:206f))

2012-08-09 01:35:19
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「九時〃黙祷“という声が響いて、急にあたりが静かになった。雨が激しくなったようだ。どこかで花火が鳴っていた。十時になると、学生は正門の方に回った。そちらに向うと、学生は油のカンに火をつけて投げてきた。輸送車に次々に火がつけられた」(大山幸雄(1960:207))

2012-08-09 01:36:21