「大阪では何体か倒したらしいぞ」

らしいです。
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♍最寄ゑ≠♍ @XavierCohen
嵐の夜、熊野の森に落雷が在つて草木が焼かれた。更に同夜、外国の軍勢が風雨に紛れ土地の部族を襲撃する事が在つた。先行する三足烏は口から火焔を吐き、軍勢が持つ剣からは雷霆が迸つた。そう、部族の者達の目には映つた。
♍最寄ゑ≠♍ @XavierCohen
暫くの間侵略者達は部族を恐怖支配したが、軈て疫病の蔓延があつて衰退するに至つた。部族の者達は、土地を追われ不敬を以て殺害された先長の祟りであらうと噂し合つた。列強の侵略に怯える十九世紀末の倫敦、此の支配と解放の伝説に希望と着想を得た一人の著作家が一篇の物語を著した。―『宇宙戦争』
♍最寄ゑ≠♍ @XavierCohen
“The War Of The Worlds(ふたつの世界の戦争)”と題された作品の成立の経緯は中村融氏による『宇宙戦争』訳者あとがき( http://t.co/g7MqQbuU @web_mysteriesさんから)に詳しいが、此処では更に葦原中国平定譚との関連を考察したい。
♍最寄ゑ≠♍ @XavierCohen
『宇宙戦争』以前に発表された短編『水晶の卵』の中で、H・G・ウェルズは火星人が地球侵攻に先立って何らかの偵察機器を派遣していた様子(卵形の水晶を通じて火星―地球の風景が相互に観察できる)を描いている。これは、天忍穂耳が天の浮橋に立って下界を観察し天照に報告する場面に相似している。
♍最寄ゑ≠♍ @XavierCohen
火星人が用いる戦闘機械トライポッドは、勿論三足烏(葦原中国平定譚では八咫烏と呼ばれる)から着想したものであるが、その姿は長脛彦を(ウェルズは侵略する者とされる者を取り違えている)、その不安定な形状にも関わらず身軽に起動する超人性は十掬剣に胡坐する建御雷の姿を準えたものであろう。
♍最寄ゑ≠♍ @XavierCohen
そして最も重要な点は、火星人が結局は太古から地球に存在していた微生物によって滅ぼされる結末で、この場面は崇神天皇の世に疫病が蔓延し人民多数が死に絶えた場面に酷似する。太古の造物主が地に遺した創造物によって異星の侵略者が打倒される、それは国津神である大物主の祟り=逆襲であったのだ。
♍最寄ゑ≠♍ @XavierCohen
先の書評の中で、中村融はこう記している。「批評家のスティーヴン・D・アレータは、この背景にある心理を「反転した植民地化の不安」と呼んだが、ウェルズの批判はたんなる帝国主義批判にとどまらない。(中略)ウェルズは人間という種(しゅ)そのものの驕りを批判していたのである。」
♍最寄ゑ≠♍ @XavierCohen
日本国憲法、特に憲法9条の平和主義と戦力の不保持には、ウェルズの人権思想が色濃く反映されていると言われる。ウェルズには、かつて先住民(国津神)が侵略者(天津神)を武力を用いる事無く撃退した日本と云う土地とそこに生きる人民に特別な思い入れがあった事が、そのエピソードから窺われる。
♍最寄ゑ≠♍ @XavierCohen
2005年に公開された映画『宇宙戦争』に、こんなセリフがある―「大阪では何体か倒したらしい」。監督のスピルバーグは「だって、日本人は怪獣との戦い方を知っているだろ?」とコメントしている(氏は熱烈なゴジラ・ファンである)が、しかし何故大阪なのだ?
♍最寄ゑ≠♍ @XavierCohen
道頓堀の繁華街、行き交う人々の喧騒に負けまいと眉毛を吊り上げながら、一心不乱に太鼓を打つ眼鏡面の道化師の姿。そうか、火星人は食中毒で死んだのだったなと私は思い起こす。スピルバーグは、真実ウェルズの良き理解者であったのだ。「食い倒れか」―雑踏の中、私の呟きは誰の耳にも届きはしない。

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