茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第681回「広い世界につながって、他人のためにの気持ちを育む」
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連続ツイート第681回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、今朝の朝日新聞の特集《いじめられている君へ》の私の文章「外の世界とつながろう」について、補足させていただきます。
2012-08-10 07:47:25ひた(1)「いじめ」は、残念ながら、人間が社会的な動物である以上、どこでも起こりうる。集団の中での自分の位置に不安があったり、他人との関係を探っていたりする人が、いじめることで自分の存在を確認する。いじめをゼロにするのは難しい。起こったらどうしよう、と考えておいた方がいい。
2012-08-10 07:49:26ひた(2)いじめは、「利他性」の欠如した環境で起こりやすい。たとえばいじめを目撃したときに、それを注意することは利他的な行動である。注意することによって、自分もまたいじめられたり反発されたりするという「コスト」がかかる。一方、その「効果」は、クラスのみんなのものになる。
2012-08-10 07:50:44ひた(3)自分にある程度リスクがあっても、他人を注意する利他的な勇気を持つ人が多いコミュニティでは、いじめは先鋭化しにくい。偏差値受験に追われて、「他人のため」を実践する余裕がない中学校におけるいじめがしばしば問題になるのも、そのような理由があるのかもしれない。
2012-08-10 08:19:35ひた(4)ところで、社会の中で「利他的」な行動は、他人との関係性のバランスによって育まれる。他人のために何かをする、という行動があると、それに「ただ乗り」したり、好意に乗じて利己的に振る舞う人も出て来る。利他的と利己的な行動のバランスの中で、人の振る舞いは「進化」していく。
2012-08-10 07:54:52ひた(5)Santos et al. (2008) Nature 454, 213-216は、他人のために何かをするという利他性が、社会的な多様性によって育まれることを示唆した。一人の人がかかわる相手が、特定の集団に限られるのではなく、多様な集団に及ぶとき、利他性が生まれる。
2012-08-10 07:59:01ひた(6)学校は、ともすれば閉鎖的な空間になりやすい。いじめる子も、大人を含めたより広い社会の中に置けば、かよわき存在なのに、学校という部分コミュニティの中では、「モンスター」になってしまう。いじめの抑止力としての「利他性」を育むためにも、広い社会につながろう。
2012-08-10 08:00:59ひた(7)ぼく自身、小学校の時蝶の研究をしていて、ヘンなやつだと思われていた。その点において、クラスで浮いていた。ところが、日本鱗翅学会に顔を出すようになって、自分よりももっとオタクの大人たちがいることを知り、視野が広がり安定した。外の空気が入ってきたような気がした。
2012-08-10 08:02:42ひた(8)多様な集団とつながることが大切なのは、大人も同じこと。一つの「会社」に滅私奉公していると、人間関係が息苦しくなるし、「大人のいじめ」の温床にもなる。趣味のサークルや、ボランティア組織、私塾など、いろいろなかたちで社会とかかわることで、他人との関係を耕せる。
2012-08-10 08:04:13ひた(9)いじめの問題が先鋭化するのは、それだけ、学校が人間関係の「クラスター」として閉鎖的なことの反映。さらには、利他性の精神を奪う偏差値受験という「個人競技」の弊害がある。学校を開かれた場所にするためには、もっと、広くて多様な世界との結びつきを図ったら良いと思う。
2012-08-10 08:06:23