ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/08/17

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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layback @laybacks

人ごみの中で二人。同級生の目を盗んで歩いた。浴衣姿の彼女は俯きながら足を引きずり、時折顔をしかめる。なのに、大丈夫? と訊くと、大丈夫。と答える。本当は足が痛いのだと思う。だが座り込める場所は見当たらない。大丈夫? 大丈夫。僕らはただ不器用なやりとりをくり返す。 #twnovel

2012-08-17 02:33:39
ゼニクエ @zeniqui

#twnovel エアコンのフィルタ掃除をすると埃の中から座敷童が出てきた。涼を求めた結果、出られなくなっていたらしい。何で最近設定温度が高いのか、と不平を言うので扇風機の前に置くとすぐに穏やかな顔になったが、まもなくタイマーでエアコンが停止して「えっ、私のせい?」と焦りだした

2012-08-17 07:39:17
Takao Rival @takao_rival

#twnovel 夏の終わりはキライじゃない。むしろ好きな方だと思う。夕暮れ、ヒグラシの声を聞きながら少し涼しい風を感じていると、脆くて多感だった頃を思いだす。好きという気持ちに振り回されていた頃、あまりにも不器用だけど、熱に溢れていたあの頃。夏の終わりの夕暮れはキライじゃない。

2012-08-17 09:12:23
ドーナツハンターの正井 @kelmscott_masai

古代種の紙魚は紙ではなく文字を食う。食われた文字は紙魚どものひる糞となり失われた。昔この国で紙魚が猖獗を極めた折、古代人は自分たちの文字ごと紙魚を葬り去る決断をした。そうして新たに用いられたのが大陸の文字であり、その文字で記された物語が古事記である。 #twnovel

2012-08-17 20:39:25
萌葱[moegi] @hmoegi

#twnovel なにか他愛無いはずのことを言ってしまったら、貴方は怖い眼をした。ごめんなさい、と言ったら、なぜ謝るの、と声を荒らげた。口を閉ざしたら、なぜなにも言わないの、と責めた。だから私は貝になった。貴方は私を見て泣いた。海の底で泡を呟く。ぷくぷくと微かに音がした。

2012-08-17 21:12:12
オガタx世界卵 @eggofuniverse

#twnovel それでも、ぼくらはまだ信じあえているようだ。ぼくが黄色を風景の中に置いたとき、きみは赤い音を僅かにそよがせてそれに答えてくれた。きれいな数式を練り込んだ明るい泥土と、眠たげな午後の光線を基調とするぼくらの様式にとって、ただ信じあえることだけをぼくらは信じていた。

2012-08-17 21:14:31
すわぞ @suwazo

#twnovel 宇宙飛行士が荒野の星に降り立つ。宇宙飛行士は過去映写機でこの星の過去を見る。一万年前、一億年前……かつてこの星にも生命があった、知性をもった種族がすべてを壊した……そして映写機は一番最初の生命の誕生の前を映しだす。宇宙飛行士が、彼自身が、荒野の星に降り立つ姿を。

2012-08-17 21:46:33
birdboiled @birdboiled

#twnovel そんなに理屈が好きなら本とでも結婚したら。そういって彼女は僕の前から姿を消した。五年が経ったある日、市役所通りの本屋で、製本された彼女と再会した。中にひらめく詩の火花は、彼女以外の何者でもない。僕は涙を流しながら読み終わり、そっと棚に戻した。背表紙を奥に向けて。

2012-08-17 22:03:41
七歩 @naholograph

この夏最後の花火が空を焼く。お客が家路についた頃、毎年その子は現れる。「下さいな」金魚の巾着から取り出した百円玉を僕は林檎飴と取り替えた。「ありがとう」踵を返し駆け出すその子は闇へすっと消え入った。有難うって僕らの台詞。甘い香りを残し去りゆく夏に、僕は手を振る。#twnovel

2012-08-17 22:06:16
雪月 @setugetufuka

小さな黒猫の暮らす水槽にお手製のキャットタワーを入れた。鰹節を浮かべると、黒猫はタワーによじ登り、天辺からパッと飛びかかる。…のだが水中だから動きはとろい。鰹節を抱えたままゆっくり回転して水底に落り、それを平らげるとまたいそいそとタワーへ向かう。ちょっと得意気。 #twnovel

2012-08-17 22:09:17
@mimimdr

学校にも家にも居場所がなかった。いつも居心地が悪くて孤独で、生きるのが辛かった。去年死んだ近所のおじいちゃんはいつも美しい青い星の話をしてくれた。僕らは本当はあそこで生まれて死ぬべきなんだって。だからロケットを盗んで空を飛んだけど、チキュウがどこかわからなかった。#twnovel

2012-08-17 22:37:14
篤。 @ishia2011

何もしない君が、何も出来ない俺の肩にもたれて、何も話さない私の無言の言葉を捕まえようと手を伸ばす。何も見えないあなたは何も聞こえない僕の耳元でそっと優しいため息をつきながら、それを愛の言葉に昇華させるにはどうしたらいいのか思案する。なす術もない自分は目を閉じる。 #twnovel

2012-08-17 23:00:52
苔。FF14メインクエ6.0終了 @waka_enkai

#twnovel 貴女のおとないを良く覚えている。太鼓のような雷音とばらばらと屋根を叩く雨。湿気を含んだ埃の匂い。ちりんちりんと微かに響いた鈴の音。びしょ濡れの貴女の髪は黒々と美しく、子どもの私ですら心が震えた。だから私は雷が鳴る度に、貴女の再訪を期待して耳をすましていた。

2012-08-17 23:11:59
T長@しをぼく①&②巻電子書籍 @jemibiozoms

地球人は体重がぼくらよりずっと軽い。ぼくは彼を地面に叩き付けた。彼は赤い綺麗な体液を吐きながら「くそ野郎」と鳴いた。向こうに逃げて行く小さい地球人を追いかけたりはしない。ぼくと生存競争をしたのは小さい地球人ではなく、この人だ。「いただきます」ぼくは彼を食べた。 #twnovel

2012-08-17 23:53:15
橘 颯 @so__w

整然と壁に留めているのは付箋だった。星の標本よと少女は笑う。されど、記されているのは如何見ても人名である。居なくなってしまった人の名だものと彼女は再び笑む。彼等は何処かで生きているかも知れないけど、私は知らない。だから此れは星なのと、又無邪気に新たな針を刺した。 #twnovel

2012-08-17 23:56:35