アーサーとクララ

みかん星人 @mikan_mekeko

数年後、スイートダイヤ王国女王と、腕のある傭兵として謁見を許されたカナイ地方出身の青年が出会ったのは、また別のお話―――　#アーサーとクララ　おしまい。

おやまゆりこ @oyama_yuriko

また会えますように。…そんなゆだねる願いじゃない。　また会う、んだ、俺達は。　　 #アーサーとクララ 　おしまい。

みかん星人 @mikan_mekeko

真面目に勉強して、立派な女王になって…そうしたら、自由に人に会える時間を作って。あなたを見つけて、会いたいな…その時は……。そんな夢を見ながら。私は、歩み続けるのだった。　#アーサーとクララ

みかん星人 @mikan_mekeko

心を入れ替えたように勉強し、我侭も控えめになった私に、周囲は驚いているけれど…約束は、約束だもの。勉強の手を止めて、ふっと、あの日の事を思い出せば、注意力が足りないなんて叱られたりして。…とても自由で、何だか夢だったんじゃないかって気すらしてくる。　#アーサーとクララ

おやまゆりこ @oyama_yuriko

それから俺は王都を拠点に、腕を上げる為に冒険を続けた。その中の荷物に、ペンダントがあった。お前には似合わないとか大きなお世話なこともいわれたが…。いつ、彼女にあってもそれが返せるように。そして、そのときは彼女の知らないお土産話がたくさんできたらいい。　 #アーサーとクララ　

おやまゆりこ @oyama_yuriko

自分の保釈の代わりに、クララがどれだけ心を砕いてくれたのか・・・。噂話によると、城のおてんば姫は真面目に勉強に打ち込んでいるらしい。きっと今だけさ、といってる酔っ払いをとりあえず殴っておいた。乱闘になって、マスターにあきれられた。　 #アーサーとクララ

みかん星人 @mikan_mekeko

たった一日だったけれど、どんな宝石よりも尊い、一日。私は、兵士に連れられて、部屋を後にした……これで、きっとおしまいなのね……でもいいの。これ以上、迷惑はかけられないもの。私は、アーサーの無罪を訴えつづけた。その結果、彼は釈放される事となった…　 #アーサーとクララ

おやまゆりこ @oyama_yuriko

結局無罪放免、というわけだが王城には近づくなと釘を刺された。まぁ当然だろう。宿はどうなっているのだろうと戻ってみると、あの時初めてクララを連れてきた時のままだった。取調べ頑張れよ兵士。だから、俺の手元には、あの時前金代わりに受け取ったペンダントが残された　 #アーサーとクララ

おやまゆりこ @oyama_yuriko

「俺も」　想像の中のお姫様よりも、必死にこっちに向かってくる彼女が、きっと　「忘れないよ」　　顔を上げて。それだけきっちり告げるけれど、言葉は届いたかどうか。厳しい兵士らの視線を受け止めながら、再び俺は縄についた。散々取り調べが終わったのはそれから３日後　 #アーサーとクララ

みかん星人 @mikan_mekeko

「アーサー…アーサぁ……」兵士に腕をとられ、部屋から連れていかれそうになる。けれど、それを振りきって、窓へと駆け寄った。「私、忘れない、ずっと、忘れないわ…！今日のこと…！」ああ、ガラスが、邪魔だ。こんなに近くにいるのに、遠い。　#アーサーとクララ

おやまゆりこ @oyama_yuriko

終わりを告げる仕事に忠実な兵士に、思わず舌打ちした。そして、それに気づいて。「やっば……」　笑ってしまった。おい、最後くらい潔く男らしく分かれたかったのに、な。「くっそー、いまいちシマらないな」　　 #アーサーとクララ

おやまゆりこ @oyama_yuriko

途切れ途切れになる彼女の言葉。それでも…ああ、彼女も、同じ光景を確かに見ていたのだな、と、胸がいっぱいになる。酸っぱくて苦い、我慢した涙と血が混じるような味が口の中を満たした。　「その言葉だけで、十分です。ありがとうございます、クララ……姫」　 #アーサーとクララ

みかん星人 @mikan_mekeko

「とっても、とっても…楽しかったの、よ…ありがとう、アーサー…」涙を零しながら、私は、感謝の気持ちを言葉に変えた。「きっと、助けるから…」せめてそれが、あなたに出来る償いとお礼。「王女、そろそろお時間です」…残酷な宣告がなされる。　#アーサーとクララ

みかん星人 @mikan_mekeko

何て言ったらいいのだろう…謝りたくて、でも、謝るのはアーサーの望みではなくて…「わた…私、も、あんな高い所は、初めて…だったわ…何もかもが小さく見えて、オレンジ色で、綺麗で…」涙を飲み込む。二人で、もっとたくさんの景色を見たかった。何度だって、登りたかった…　#アーサーとクララ

おやまゆりこ @oyama_yuriko

「いや、一生、大事にします。ありがとう、ございました」　手は離れてしまったけれども。今でも、そこに、護りたい彼女の手があるかのように。あの時差し出した手は、今は空気を握り締めていた。　 #アーサーとクララ

おやまゆりこ @oyama_yuriko

「実は、俺はあんまり高いところは得意じゃなかったんです。でも、…とてもとても高いところに一緒に行ってくれる人がいたから。今度からは、一人でも同じところへまた行けそうです。貴重な…」　声が大きく震える。顔を上げられない。男の子だろう、しっかりしろよ、俺　　 #アーサーとクララ

おやまゆりこ @oyama_yuriko

「王女様。…俺……じゃなかった、私、は、貴方に謝ってもらうこと、何ひとつないのです」　小さく、でもはっきりと俺は首を横に振る。　　 #アーサーとクララ

おやまゆりこ @oyama_yuriko

自分を責め立てる彼女に、俺は首を横に振る。違う、最後に見たかったのは、こんな罪悪感で自分を責めるクララじゃない。生き生きとしていた彼女、笑顔の彼女。どうしたら、彼女を笑顔にすることができるだろうか。俺は生まれてはじめてめいっぱい頭をつかった。　　 #アーサーとクララ

みかん星人 @mikan_mekeko

「う、うう…」跪く彼の姿に、私は悲しくなった。そうね、私は王女で、貴方は市民で…　本当は、名前を呼んで欲しかったけど、ここで迂闊な態度をとったら、また彼に迷惑がかかってしまう…「貴方は悪くないって、今、訴えてるから…本当に、ごめんなさい…」　#アーサーとクララ

みかん星人 @mikan_mekeko

「アーサー！」彼に買ってもらった服は全て回収され、ドレス姿になった私は、ガラス越しに彼に駆け寄った。酷い…乱暴しないで、って言ったのに…痛ましい彼の姿に、私は泣きそうになる。「ごめんね、ごめんね…私のせいで。私の…」どれ程迷惑をかけたのか、思い知らされた。 #アーサーとクララ

おやまゆりこ @oyama_yuriko

最敬礼で迎えられ、窓ごしで話し合うことを許された俺たち。…彼女は何といっただろうか。俺は、挨拶よりもまず先に、彼女に頭を下げて、跪いた。「今までのご無礼をお許しください、王女様」　クララ、だなんて、もう名前を、呼んじゃ、いけないんだ。　 #アーサーとクララ

おやまゆりこ @oyama_yuriko

願望は、こうして叶った。せめて最後もう１度あいたいと思っていた。今の彼女は、まさにお姫様というのに相応しい格好をしていた。仕立て屋の服と違って、このドレス１着でどれだけの人の手がかかっているのだろう。まさに手の届かないお宝がそこにあった。　　 #アーサーとクララ

おやまゆりこ @oyama_yuriko

やがてあっけなく拘束を解かれた。面会らしい。一体誰だろう…、祖父ちゃんにこんなところでしかられてしまうのだろうか。眉尻が自然となさけないとハの字になっていた。だが、通された部屋は地下牢ではなく別のところだった。少し小奇麗な面会室。ひょっとして…　　 #アーサーとクララ

みかん星人 @mikan_mekeko

父様に、必死で彼の無実を訴えた。それから、今まで守れなかった約束事を全て守ると。逃げたりしないと。勉強もサボらないと。謝って、約束して、お願いして。必死の願いが通じて、監視つきだけど、10分だけ、彼に会える事になった……　#アーサーとクララ

みかん星人 @mikan_mekeko

連れ戻された後は、当然のことながら、とても怒られた。私の言うことはなかなか通じなくて…しばらくは私も、お部屋に閉じ込められる事になりそうだった。でも、そんな事よりも、気になっていたのはアーサーのこと。私のせいで、酷い目にあっていたらどうしよう…　#アーサーとクララ