ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/08/18

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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リオ @urufffayn

センチメンタルラ族は雑誌を読む。「オシャレ人の着こなし一ヶ月」タイトルが気になった。…ラの着こなし?いやいや、ラはそもそもなにも着ない。使いまわしもしない。常に新鮮なラをいかに楽しむかが問われる。ふむ…デート用の勝負服か。勝負ラを準備しなければ、とひとり呟く。 #twnovel

2012-08-18 00:40:20
とおる7th @windcreator

恋花火師を生業にしている。今日も一日、街中で恋花を集めてきた。夏の終わりには大きな恋花火大会がある。この一年間の恋花を使って丹精込めて作り上げた恋花火も、いよいよ総仕上げ。そして、ようやくお披露目だ。きっと、見上げる人の心を揺さぶり、新たな恋の種火になるだろう。 #twnovel

2012-08-18 01:42:29
layback @laybacks

「そろそろ帰らなきゃ」その一言でピンとくる。「猫の餌やり?」彼女の顔色が変わる。「餌なんて言わないで。家族の一員なんだから」「ごめんなさい。ご飯ね」彼女の携帯電話が鳴った。通話を終えた彼女はため息をつく。「どうしたの?」「旦那が早く帰るって。餌の用意をしなきゃ」 #twnovel

2012-08-18 03:33:10
Hiroyuki inoue @hiro_kinako

#twnovel おにぎり星人襲来。彼らはおにぎりに擬態し店頭の商品に紛れ込ませ、自らを捕食させることで相手の身体を乗っ取ってしまう恐ろしい生き物だ。ただし、地球のコンビニおにぎりのパッケージの進化にイマイチ追いつけていないため、包装が開けにくくあまり手に取られることはない。

2012-08-18 10:43:53
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

真夜中のプールに浸り、意識を泳がせる。これはゲームだ。ほの暗い水底に沈んでいる月の石を、少女よりも多く取らなければならなかった。しかし、少女はしなやかな動きで次々と石を拾って行く。勝負はもう見えていた。敗者たる私は月の石となる。願わくば少女の手によって拾われたい。#twnovel

2012-08-18 12:48:59
かなりひこくま @kanarihikokuma

川に向かって石を投げていたときKが言った。「実は俺、魔王なのだ」投げた石は水面で3度跳ねて沈んだ。「へえ結構じゃないか」とぼくは答えた。「そうでもない。世界征服は容易いが、五月蝿いのは嫌いなのだ」平たい石を探しつつ「なるほど」と答えた中2の夏。 #twnovel

2012-08-18 13:30:53
七歩 @naholograph

神々は地上を眺める。本を選ぶように人を選び、人生を愛読する。最近の話題作は「つまらない女」。決め台詞「つまらない」を言い放ち立ち去ると、彼女の背後で奇想天外な出来事が起こる。そのお約束を楽しみにしすぎて、どの神も幸を授けようとはしない為、まだまだお話は続きそうだ。#twnovel

2012-08-18 15:47:01
@kissmint_xxx

秋は夏から仕事を引き継いだ。始めの仕事は洗濯。雨雲を呼び、全てを徹底的に洗い流す。うだる暑さ、悔し涙、それに恋の燃えかすも。秋は夏が大好きだから、洗濯が終わると寂しくなる。秋の寂しさは人間に伝染して、それの後始末は優しい冬がする羽目になるのだ。 #twnovel

2012-08-18 18:44:50
茶屋 @chayakyu

ここは1/3階。0.3333……無限に続く、3の数字の上に立っている。割り切れない、無理数の大海に浮かぶ有理数の小島である。整数階ではない。生身の人間がここに立つことはできない。だが想像の試みを拒むこともできない。そして、その階にたどり着いたものはもう戻れない。 #twnovel

2012-08-18 19:02:59
ておまさお @teomasao

二年ぶりに行われた海上花火大会は佳境に入っていた。「本当は、アノ人と見たかったんでしょう?」「アイツのことなんて、忘れたさ」男は去年恋人を亡くしていた。どん! 地鳴りと共にフィナーレを飾る二尺玉が打ち上がると、こつんと誰かに後頭部を叩かれたような気がした。 #twnovel

2012-08-18 19:59:07
falsewhere @nowherenotime

#twnovel 踏み潰して、まったいらにする。転がして糸よりも細く伸ばす。一次元の私が完成する。私には、端部とその中間しかなく、しかもその中間がどれほど捩れようが関知しない。私のもう属さない次元の様態など、知るものか。私は線として、無である点の無限の連なりとして、ただあるのみ。

2012-08-18 21:05:34
萌葱[moegi] @hmoegi

#twnovel 君のピアノを聴くのが好きだ。ピアノを弾く君の横顔と指先が好きだ。ピアノと君を独り占めしたくて、音楽室に鍵をかけた。けれど、部屋中に広がる音は頂けない。だからヘッドホンを被せてしまった。両耳を閉ざされた甘美な密室。静寂の中、君は指を躍らせる。他の誰にも聴かせない。

2012-08-18 21:47:42
falsewhere @nowherenotime

#twnovel 海月を見ればわかる通り、生命と海水の差異はかなり小さい。海水とはつまり、それだけでほぽ生命なのだ。だから、あと僅かなエレメントを水に加えるだけで、きみが生まれる。私はスポイトに少量の*を吸い上げ、試験管に数滴たらした。管の中に雲が湧きあがり、雲のまま泳いでいた。

2012-08-18 22:00:33
かなりひこくま @kanarihikokuma

感謝祭のステージにバンドが並んだ。最初に演奏されたのはアメージンググレース。心に染みる楽曲で拙さも気にはならない。次のバンドがステージへ。演奏されたのはアメージンググレース。次のバンドも、次のバンドもアメージンググレースを演奏した。心温まる巨大南瓜と田園の風景。 #twnovel

2012-08-18 22:07:06
藍 真史 @shin1960

#twnovel 夜勤明けで帰ると妻が食事の用意をしていた。娘は夏休みなのにもうどこかに出かけている。居間のテレビをつけた。黒いバックスクリーン。アルプス席。すぐに消した。食事を運んできた妻がテレビをつける。消した。妻がまたつける。諦めろ、20年前の敗戦投手。うるさい、ビール!

2012-08-18 22:27:29
いこ(伊古野わらび) @ico_0712

「この年齢で夏休みを貰えるとは思わなかった」余程興奮しているらしく、頬を赤く上気させながら、祖父は手にしていたカードを高々と掲げた。「狙うは皆勤賞だ!」余ったラジオ体操の出席カードでまさかここまで喜んで貰えるとは。でもおじいちゃん。カード=夏休みじゃないよ多分。 #twnovel

2012-08-18 22:48:45
ミヤザトサエ @saemiyazato

ジワジワと、疼く様な締め付けるような蝉の声に囲まれて足がもつれる。熱い。このままシュワリと溶けてしまいそうだ。あまりに足が重くて膝に手を置くと、アスファルトに向日葵の影。ちょうど私の影の顔の部分と向日葵の花の部分が重なる。融けるのも良いかなと炭酸水を飲み干した。 #twnovel

2012-08-18 23:07:08
すわぞ @suwazo

#twnovel 宝石店に入る。彼女が「何もないわ」と驚く。僕の目には、蝶の羽だの古い本だの龍の骨だのが並ぶのが見える。店主が言う。「当店の宝石は価値のわかる方にしか見えないのです」成程。婚約指輪は別の店で買うべきなのだろう。僕は彼女をこの店の棚に並べても良い程に愛しているので。

2012-08-18 23:18:40
@westwaist

マンションの屋上から真っ赤な鳥居がこちらを見下ろしている。脇のフェンスが丁寧に拭かれ、布団が2つ3つ掛けられてゆく。干し終えた住人がスッキリした顔で階段を降りてゆく。陽の当たる布団を、ストローをくわえつつ少し薄暗い店内から眺める。この距離は多分しあわせとの距離。 #twnovel

2012-08-18 23:55:02