ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/08/21

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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unkofree @unkofree

生まれてからずっと病気だった少年は5歳で死んだ。「何か望みは?」幼き天使が訊ねる。「イグアスの滝が見たい」南米に飛んだ二人はその巨大さに息をのむ。「ラスカンパナス天文台に行きたい」何万光年彼方の光が指先を掠めていく。「次は?」幼き天使と少年の旅は始まったばかり。 #twnovel

2012-08-21 00:00:16
山本アヒコ @lostoman

文庫本を読み終わり、本を閉じる。「どうでした?」黒髪眼鏡の少女がそう聞いてくる。この本は彼女がすすめたのだ。正直な感想を言うと残念そうな顔になる。「あ、でもこの本ならきっと気に入ると思います」笑顔で彼女が本を差し出す。そんな妄想を一人、文芸部の部室でしていた。 #twnovel

2012-08-21 00:24:50
falsewhere @nowherenotime

#twnovel 肉食樹達が疾走する。通り抜けた後には食われた生物達の肉片と骨と無数の種子が、大地にばら蒔かれ散乱する。肉片は種子の養分。育成を邪魔する獣は食い尽くされた。姿が見えたら逃げるほかない。最近は生い茂った葉を羽ばたかせて、空を飛ぶものまで現れたらしい。鳥達も危ない。

2012-08-21 04:51:06
銭喰 @zeniqui

#twnovel 「アタシ、キレイ?」真夏の夜、ロングコートにマスクの女が話し掛けてきた。(お、痴女か?)色々と妄想して何も答えないまま前屈みになっていると、「これでも?」と女はマスク取りコートを脱いだ。その口は、縦に首、胸腹まで裂けている。私は生肌を見てますます前屈みになった。

2012-08-21 08:25:26
すなお @Svnao

#twnovel お盆を過ぎた頃、久し振りに夫がやって来た。お線香を取り出したと思えば「悪い、ライター忘れた」と苦笑。禁煙成功したってことね、良かった。それよりお花ありがとう。あなたから手向けられる花はプロポーズの日に贈られた花束を思い出すので、いつも照れながら受け取っています。

2012-08-21 09:32:04
紺屋淳之介 @Jun_nosukeKoya

傾き始めた陽に輝く雲が、少年の瞳には鮮烈に映った。半時の後に降り出した大粒の雨、立ち上る土の香り。それらは皆、この山あいの村では珍しくない光景だと従兄は笑う。それでも身長16,000メートルの入道がくれた夏は、都会育ちの彼にとって確かに忘れられない思い出だった。 #twnovel

2012-08-21 15:39:48
かなりひこくま @kanarihikokuma

亀はアキレスと争った亀でした。亀の能力、ゼノンパラドックスに囚われたアキレスはついに亀に追いつけませんでした。兎はこの事を良く承知しておりましたから、スタートダッシュに賭けたのです。亀の後ろにつかなければパラドックスも関係ないや、と考えたからです。  #twnovel

2012-08-21 15:55:01
くさがみ•R•シン @kusagamirin

#twnovel 倒産寸前のヤギ牧場。牧場主は妙案を思い付いた。ヤギ達の体に募金箱を付けて「この子達に餌代を!」そんな張り紙と共に町に放った。痩せたヤギに同情して札や小銭を募金する町民達。作戦は大成功。小銭が詰まった募金箱を見て顔をしかめる牧場主。お札は? ヤギがうめぇと鳴いた。

2012-08-21 16:53:42
萌葱[moegi] @hmoegi

#twnovel 午前3時の鐘の音で、どこへともなく攫われる。そんな噂を真に受けて、時計台へと近づいた。「馬鹿だね、のこのこ来たのかい」鐘楼に影。「もう消えたくて」「だから馬鹿だと言ってるのさ」微かに嗤って鐘を撞く。星のない午前3時。時計台だけを残して、世界は鐘の向こうへ消えた。

2012-08-21 19:53:35
雪月 @setugetufuka

扇風機が首を振らなくなった。原因は風鈴らしい。どう向きを変えても、そこにばかり風を送る。扇風機を風鈴に背を向けるように置くと、まるで探すかのようにぶんぶんと首を振った。風鈴は窓の外にある。わかっているのかいないのか、扇風機は風を送り続ける。チリンと風鈴が鳴った。 #twnovel

2012-08-21 21:19:16
@kissmint_xxx

辛くても、無理して笑わないといけない時がある。そんな時は、どこからかピエロがやって来て、私の頬に涙を描いてくれる。辛い気持ちをそこに集めて、まとめてお風呂で落とせば、少し心が軽くなる。髪を乾かしミルクを飲んで、後は、ピエロへのお礼の言葉を考えながら眠る。 #twnovel

2012-08-21 21:35:08
カンナ堂 @kan_nami

烏瓜の花が仄白く浮かび上がる夜の庭。ざり。と歩を踏み出すと塀に反響して(ざり。)と聞こえる。ざり。(ざり。)ざり。(ざりざり)ざり。(ざりざりざり)ざり。(ざりざりざりざり)足音に追い付かれ暗闇が反転した。(ざり。)(ざり。)(ざり。)足音が家へ戻っていった。 #twnovel

2012-08-21 22:10:31
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 「最後のひとつが散ったとき、私は…」窓をみて妹が呟く。通うはずの高校の通学路。登下校する同級生のカップルに、妹は自分を重ねていた。それがひと組別れ、ふた組消え…ついに残るひと組が。「全部散ったわ」不登校だった妹の声が弾む。「学校行かなきゃ。今ならみんなフリーよ」

2012-08-21 22:36:32
かずらちゃん @udonisoishii

#twnovel 社会科教師はえらくほくろの多い顔をしていて、俺は、授業中によくそれを数えていた。「結局いくつだったの?」十年後、そう居酒屋で問われて、首を振る。「最後まで数えられなかった」「えー」何でかって言うと、君に一人遊びを知られてからは、なんだか意識してしまったんだ。

2012-08-21 23:19:42
miyagaaaaもしくはnakoso @inabetz

道端で涙を拾った。捨て置かれているのも不憫に思って交番に届けたのである。後日、持ち主から送られた一割の涙は歓びだった。大切な涙のようではあったが、ならば尚更落とすような事はせぬようにと笑顔を送り返したのだった。それが私と彼の始まりであった。 #twnovel

2012-08-21 23:59:03