柳生宗矩の剣術指南と出世

【剣豪と石高について】http://togetter.com/li/359587 で書いた通り、剣豪というのは、武士として見た場合、それほど高く評価される存在ではなかったわけですが、では、そんな中、どうして柳生宗矩は大名にまで立身できたのか、という点について、つらつら書いてみました。若干まとまりが悪いので、そのうち補足でも書きましょうか喃。
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神無月久音 @k_hisane

というわけで本日は、「柳生宗矩は「剣術で出世した」というけど、実際のトコ、何をしてそこまで出世できたの?」という話でもしましょうかね。

2012-08-23 01:36:25
神無月久音 @k_hisane

この辺の話題でよく出てくるのは「宗矩は将軍に手加減して指南し、機嫌を取ったので気に入られ、出世できた」という話で砂。まあ、お世辞にも好意的とは言いがたい説です喃。

2012-08-23 01:38:16
神無月久音 @k_hisane

まあ、これは宗矩と相役だった小野忠明(あるいは忠常)の逸話にある「柳生と比して、小野は剣に真摯だったので、将軍家と言えど手加減なく打ち込んだため、機嫌を損ね、出世できなかった」というのが元ネタなので、好意的でないのも当然なのですけどね。自流派持ち上げのための話な訳ですから。

2012-08-23 01:43:05
神無月久音 @k_hisane

個人的には、この辺の話を無頓着に紹介してるのを見るたびに、なんだかなあとは思うのですが、この辺を抜くと話が地味になるので、しょうがないのかもなーとも思ったり。「本当はウチは柳生より凄いんだよ!」ってのはわかりやすいステータスですし喃。

2012-08-23 01:47:10
神無月久音 @k_hisane

まず、手加減云々について言いますと、寛永九年六月、家光から宗矩への手紙があるのですが、その内容は「本気で俺に稽古つけてくれないとクビ飛ばすよ?(大意)」というものなので砂。(原文はこちらに載せてます)【やる夫で学ぶ柳生一族 その27 解説】http://t.co/APm5oQdp

2012-08-23 02:05:31
神無月久音 @k_hisane

この手紙の中で、家光は「自分がどれ程熱心に兵法に取り組んでいるかお前は分かってない」と宗矩を叱り付け、「自分の腕が上がるように、もっと本気で稽古をつけてくれ」と頼み込んでおり、少なくとも、手加減されて喜ぶような風情は感じられないわけですよ。

2012-08-23 02:14:56
神無月久音 @k_hisane

まあ、「所詮は痛い目に遭ってない故の気まぐれで、本気でぶちのめされれば、こんなことは言えない」という見方も出来るかもしれませんが、それを言うと、「でも将軍家がそこまでして剣術やる必要ってあるの?他のことやった方がいいんじゃないの。暇じゃないんだし」という話にもなるわけで砂。

2012-08-23 02:18:37
神無月久音 @k_hisane

その意味では、武芸者が稽古する剣術と、家光が稽古する剣術は、その目的の時点で違っている(武芸者にとって剣術は生きる糧だが、家光にとっては趣味であり余技)わけで、その二つを混同して話をすること自体、間違ってるわけですよ。一見同じだけど、実は全然別モンであると。

2012-08-23 02:21:45
神無月久音 @k_hisane

そして厄介な点として、家光本人だけではなく、幕閣にも、家光へ剣術を指南することを認めさせる必要があるわけで砂。なんせ幕府の頂点に立つ将軍家ですから、本来、暇なんぞない身なわけで、如何に家光本人が望んでいたとしても、それが無駄であるなら、周囲としても諫言が出るのは必須ですし。

2012-08-23 02:26:22
神無月久音 @k_hisane

ですから、手加減しようがしまいが、本来「将軍家にとって不急不要なもの」である剣術の指南役の身では、出世なんぞ望めないわけですよ。必要ないものを指南しようがしまいが、大した功績ではないわけですから。

2012-08-23 02:30:30
神無月久音 @k_hisane

ただ、逸話通りに「将軍家をぶちのめす」ようなことがあるなら話は別で砂。逸話では「出世できなかった」程度で済ませてますが、常識的に考えて、剣で以って将軍家を痛めつけるようなことをしておいて、お咎めなしってのはあり得なかろうと。切腹で済んだら御の字じゃないですかね。

2012-08-23 02:34:51
神無月久音 @k_hisane

というか、本当にそんな事件が起きてたら、実紀にも載るでしょうし、当時の史料に一切現れないとか考えづらいですし喃。まあ、件の逸話について言えば、「創作乙」というところでしょうか。大久保彦左衛門がたらいで登城したのと同程度の話と見てよかろうかと。

2012-08-23 02:41:15
神無月久音 @k_hisane

若干話がずれましたが、じゃあ本来なら出世できないはずの剣術指南で、どうして宗矩は出世できたのか、というと、「家光だけではなく、周囲にとっても、剣術を学ぶことで良い影響が出るように指南したから」というわけで砂。

2012-08-23 02:45:51
神無月久音 @k_hisane

家光に関して言えば、デスクワーク詰めの中での適度な運動はリフレッシュになり、また同年代の者達と共に稽古することは、人間関係を良くする一環にもなったわけで砂。その辺の詳細はこちらで 【やる夫で学ぶ柳生一族 その21 後編 】http://t.co/sfiutr8C

2012-08-23 02:51:21
神無月久音 @k_hisane

で、幕閣からすれば、「ヒステリー持ちで扱いにくい将軍家のストレスが少しでも晴れて、且つ、将軍に取り成しできる人間が増える」のは、政務上から見ても悪くないと言えるわけですよ。【やる夫で学ぶ柳生一族 外伝その3・後編1 】 http://t.co/1S4LDM0W

2012-08-23 02:57:28
神無月久音 @k_hisane

しかも、その指南役が、そのことを十分自覚しており、且つ、官僚として統治との間のバランスを保つよう調整もしてるわけですから、周囲の評価が上がるのは当然といえば当然なんで砂。剣術指南程度の役職の人間で、ここまで出来る人間を探す方が難しいですし。

2012-08-23 03:03:47
神無月久音 @k_hisane

当然、評価されるというのは、それが困難であることとイコールであるわけですよ。実際、「政治的影響を考慮しつつ将軍の心身を好転させ、且つ、泰平期における剣術の有効利用も提案し、更に自流派を国内最大の流派に育て上げ、官僚として働きつつ、剣士としても一流の腕前」とか難易度高過ぎだろうと

2012-08-23 03:12:21
神無月久音 @k_hisane

なんだかもひとつまとまりが悪い感じになってしまいましたが、要するに「単に剣術を指南したのではなく、色々考えて指南して、それがいい結果に結びついたから。あと幕臣としてもキチキチ仕事してるし」ということで砂>宗矩の出世

2012-08-23 03:15:20
神無月久音 @k_hisane

この辺、そのうち整理し直した方がいいかもで砂。説明としては、やる夫柳生でも延々書いてる話なのですが、いざまとめてみると、結構説明しづらいなー、という感じ。ふむむ。

2012-08-23 03:17:14