ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/08/27

wacpre @wacpre

朝起きれないと連絡があったので、夏休みの間だけ泊りに行った。もちろん朝に起こしてあげるために。いろいろな方法で試してみたけど、なかなか起こすのは大変だった。少なくともキスで目覚めない事がわかったので、お互いにお姫様でも王子様でもない事に気づいてしまった。 #twnovel

おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 眠って行けると思った。そのための装置だった。ところが、夢は見るのだ。覚めない夢。その中で、何回も人生を繰り返した。目的地まで何年かかる計算か忘れて久しい。肉体は冷凍されているから朽ちない。しかし、このころ現実方面から聞こえる遠雷は、船の砕ける音ではないだろうか。

ちゃーち @churchdevil

携帯もない時代なので、夜はホタルとお話をして過ごす。明るい光を放つホタルとお話をしていると、ベッドに寝転がって携帯の明かりにしがみついていたあの頃を少し思い出せるから。「でも、こっちの光の方が、少し優しいや」「どうかしたの？」「なんでも」不慮の時間旅行から二年。 #twnovel

銭喰 @zeniqui

#twnovel 羊の皮を被った狼が羊の群れに忍び込んだ。さて、どいつから食ってやろうか。ひとまず狼は羊のふりをして草を食べると、これが意外に美味しい。夢中になって食べていたら、羊たちは居なくなって仲間が自分を囲んでいた。ち、逃がしたか。ん、どうしたお前ら？そんなに牙を剥き出して

猫春雨＠ものがたる屋 @nekoharusame

山の背後に入道雲がそびえ立っていた。緑と白の対比が夏らしい光景ではないか。しばらく眺めていると不意に強風が吹き荒ぶ。思わず腕で顔を覆い、砂埃から目を庇った。やがて風は止み、再び景色を取り戻す。いや、一部違っている箇所を見つけた。入道雲と共に山が掻き消えていたのだ。#twnovel

miecha @miechorz

#twnovel 中華料理店の店員が表に紙を貼った。『冷やし中華終わりました』始めました、はよく見るが終わりの報告は珍しい。どういうことかと尋ねたら「このお店、今年いっぱいで終わるんです。先ほど最後の冷やし中華が売れまして」店内では男が、最後の有難味を知らぬまま麺を啜っていた。

かの子❄ @K_Tohmi

彼女は貝のように真珠を作れるという。冗談だよねと笑った僕の目の前で、彼女は小粒の真珠を吐き出してみせた。「三日前の分かな。友だちに嫌なこと言われたの」どうやったらそんなことができるのか。彼女は言う。「みんなやってるよ。私の場合は真珠なだけ」彼女は僕の口を指差した。#twnovel

Ikuo/Yoshitake @ikuoyosh

〇選択肢：「本当によろしいですか？」「はい、お願いします」最終確認が済むと、処置は数分で終わる。これで不老物質の分泌が止まり、六、七十年もすれば肉体は老いて活動を停止するだろう。人類の悲願である、不老不死を達成した社会のトレンドは、老衰による自殺権の行使だった。 #twnovel

七歩 @naholograph

夏も終わりに近づくと、洗濯屋が御用聞きにくる。彼女が洗うのは心。夏の恋に傷ついた心を洗って貰おう。#twnovel　ルーペで状態を確かめる。「これは洗えないわ」もしかして落ちない？「ううん、いい想い出だもの。素敵な模様になるのに勿体ないわ」真っ白だけが、綺麗な心じゃないのね。

falsewhere @nowherenotime

#twnovel 完成された分子モデル群は完璧で完全で完了していた。……筈だった。これらの分子を組み上げて構築した世界は、いびつで騒々しく変化と破壊を好み利己的で醜悪。何ひとつ完成されたものなどなかった。なぜだ。答は泡沫の夢の中。複雑な化合物の合成体は、今日もまた複雑な夢を見る。

あいまい文庫 @aimaiZ

ここは昔、父さんが当時の恋人と一緒に来たらしい。facebookにそう書いてあった。母さんもまた、別のタイミングで別の人と来たみたいだ。僕はそこのロケーションをログに書き込んで、帰りの電車に乗った。「12ポイント取得です。離婚無効化まであと1232ポイント。」 #twnovel

あっぷるピエロ @apple_dop

「もう嫌だ」「海に沈みたい」失敗続きで落ち込んでいるおれに、彼女が花のつぼみをさしだした。花が開くと『おまえが好きだ』かつておれが彼女に言った言葉。音を捕まえることのできる録音花だ。彼女が笑う。「これを聞くと元気が出るの」私もあなたが好きですと重ねて声が届いた。 #twnovel

すわぞ @suwazo

#twnovel その図書館には秘密の抜け穴があるという。多くの人間がこっそり抜け穴を探したが誰も見つけられない。「全く、皆ここをどこだと思っているんだ？」司書は呆れ顔で言う。「図書館だぞ？　大切な物は全て本の中にあるに決まってる」抜け穴を隠した本がどれかは、彼だけが知っている。

竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 職を求めて上京した魔女。見つけたのは夜空の星を黒く塗り潰す仕事。「人間が空を見上げないためにしてるの。遠くを見ないであくせく働いてもらわないと」と先輩に教えられた。でも、彼女には満天の星が見える。ホームシックで零した涙が星を洗う。都会で星が見えるのは、そんな時。

カンナ堂 @kan_nami

釉薬を掛けた皿にガラス片を一掴み置いて窯に入れる。昨夜別れた男のグラスが混乱の中で割れ、床に散らばった破片を眺めているうちにその色に魅入られた。もはや男はどうでもよく、この美しい青を再生したいと思った。渦状の白い皿に溜まった零れない水のような青を見てみたいのだ。 #twnovel

ぼたゆき @botayuqui

#twnovel 人として扱いづらいこの俺に、このたび説明書がついた - 夜は暗くしてあげると、自然に寝ます。暑い日は水浴びさせてください。止まり木を用意してあげてください。時々、野菜(小松菜)を与えてください。- よほど、俺を人として扱いづらいのか、『鳥扱説明書』がついていた。

橘　颯 @so__w

月の美しい夜でした。青く澄んだ光の降り注ぐ砂浜は何処か物憂げな勿忘草色を帯びております。其の縹渺たる砂海に一つの釦が落ちておりました。何方が落とされたのでしょうか。硝子で出来た小さな釦です。砂に飲まれず。鳥に掠われず。潮に沈まず。唯々、月灯に瞬いているのでした。 #twnovel